挫折じゃなくて、ご縁
「人生の選択ってね、案外、ご縁が導いてるものなのよ」
第1志望の美術大学に落ちた私に、予備校の先生はそう言いました。
当時はあまりピンとこなく、ただの「なぐさめの言葉」だと感じていました。
その後、私は第2志望の美術大学へ行き、無事に卒業。今、社会人6年目のデザイナーとして楽しく仕事をしています。
当時は「自分の選択したことに、ご縁も何もないだろう」と考えていましたが、大学生・社会人を経験した今、この言葉の意味が分かり、そしてこの言葉があったからこそ、どんな道でも楽しい日々を送れたと考えています。
「最初の選択を貫き通す」ということも素敵なことです。ですが、その選択が叶わなかったからといって「挫折」と表現してしまうのは、もったいないなと考えています。
挫折じゃなくて、ご縁。
最初に選択した道を進めなくなった時、この考え方で別の道に進んでみるのも案外楽しいものだと、今回ご紹介できればと思っています。
なんとなく生きてきた小中高校時代
小2の春、私は父の仕事の都合でドイツへ行き、そのまま現地にある日本人学校で小中学校を過ごしました。
高校は父がまだドイツに残るということ、そして私が英語を学びたいという理由から、現地のインターナショナルスクールへ進学。入学前のテストはあったものの、現状の英語力を把握するためだけだったので、テストの結果は関係なく入学できました。
そして高校生活も終わりに近づいた頃「ドイツと日本、どちらの大学に行くか」という選択肢が出てきます。
小学生の頃から美術が好きで、高校でも美術を専攻していたため、自然と「美術大学に行きたい」と考えていました。
ドイツは美術の聖地だし、このまま1人でドイツに残るのもありだな…と考えていた矢先、たまたまyoutubeで小林賢太郎さんの1人舞台「DROP」のワンシーンを発見。
その映像を見た瞬間、演技や舞台の素敵な表現力に感動し、その勢いのまま「日本の美術大学に入って、絵を学びながら演劇サークルもできたら最高じゃん!」と考え、日本帰国を決意しました。
受験?なにそれ、おいしいの?
今まで受験や予備校に関わらない生活でしたが、大学はそうはいかず。ましてや美術大学は学力だけではなく、画力や発想力が求められるので、とりあえず帰国してすぐに予備校へ通いました。
私の絵を見た予備校の校長が「油絵に向いているね」と言ったので、じゃあ油絵学科に行こうとあっさり決意(笑)
画力も悪くないし、海外生活で培った視点や発想力、そして帰国子女枠はライバルが少ないことから「なんだかんだで、藝大(一般大学でいう東大ポジション)でもいけるっしょ!」と、心のどこかで「今まで通りうまく行く」と考えていました。
ですが、冒頭でみなさんご存知の通り、第1志望の藝大は1次試験であっさり不合格。
「なんとかなる」とは考えてはいたものの、それなりに藝大対策として予備校でも頑張っていたため、初めて経験する「努力したのに報われない」という状況に絶望感を感じました。
もう絶望したくない
第2志望には合格できたものの、最初に行こうと決めていた藝大への道をどうすべきか、しばらく悩みました。
藝大は学べる内容が魅力的なのはもちろん、金銭的に親の負担が少ないし、浪人してでも目指すべきなのではないか。でも、もしまた落ちてしまったら?この絶望感を、もう一度味わうの…?
悩んだ結果「もう受験はしたくない、第2志望に行こう…」と決めました。最初に目指した道を諦めたことに対し「私って才能がないんだな…そんでもって努力も継続できない弱いやつだな…」と考え、どんよりした気分で残りの予備校生活を過ごしていました。
そんな時に、予備校の先生があの言葉をかけてくれたのです。
「人生の選択ってね、案外、ご縁が導いてるものなのよ」
言葉の意味が分かったら、前向きになれた
大学生活は、とても有意義なものでした。油絵はもちろん、様々な美術表現を知り、夢だった役者も演劇サークルで思う存分に学びました。
そして小中高の時と同様「なんとなく、うまく行く」という生活がまた続き、大学4年目に入った時、今度は「就職か役者の道か」という選択肢が現れます。
サークルとはいえ役者としてそこそこ実力もついたし、私なら舞台でも映像でも活躍できる役者になれるんじゃないか?という、いつも通りの謎の自信。
一方で、役者の道は厳しいことも理解していたので、受験ですぐに挫折した私がそんな道を進み続けられるとは思えない…。そんな気持ちでした。
そこで思い出したのが、予備校の先生の言葉。
「とりあえず、行きたい芸能事務所に履歴書を送って、ご縁があったら合格するんじゃないか。不合格になったら、私のご縁は就職にあるんじゃないか」と、気楽に考えてみたのです。
そうと決まればすぐ行動しなきゃ!と、まずは芸能事務所に応募。そして、結果はあっさり不合格(笑)
ショックが無かったと言ったら嘘になりますが、ただ、大学受験の時とは違い「こっちにご縁はないのか、じゃあ次は就活をやってみよう」と割り切って、デザイナーとして就活をスタート。すると、今度は行きたい会社にあっという間に内定が決まったのです。
内定があっさり決まったことに喜びと動揺を感じながら、同時に「役者の道をこのまま諦められるのかな…?」という、少しの不安も。
しかし、大学受験の時とは違い「こっちにご縁があったんだから、この道はきっと素敵な旅になる」と考えられました。
挫折してこっちの道を選んだのではなく、ご縁がある方を信じてこの道を選んだ。そう考えることができたのです。
結果、デザイナーとしての仕事はとても楽しく、そのうち役者のことはすっかり忘れていました。
それから2年経ち、次は「デザイナーとしてどうキャリアを進むべきか」「そのためには今の会社でいいのか」と考え、転職。ご縁ある選択を経て、今の会社でも楽しくデザイナーとして働いています。
最後に
子供の頃の夢を叶えたスポーツ選手や、何年もの下積み時代を経て成功した芸能人は輝いて見えます。とんでもない努力を重ねたんだろうと、本当に尊敬します。
それに比べると、私の選択は「簡単に諦めた」ように見えるかもしれません。ただ、この選択の方がうまく行くことも時にはあると思うのです。私がその1人でした。
「ご縁があったなら、この道を進んでみるのも悪くない。もし違うと感じたら途中で引き返せばいい」と気軽に考えることで、悩む時間を減らし、すぐ行動することができるようになりました。
そして結果的に「自分の力を発揮し、活躍できる道」を選択することができ、その選んだ道を好きになることができると感じています。
「挫折じゃなくて、ご縁」
この考え方のおかげで、私は社会人になってから様々な仕事に携わることができ、デザイナーとしても幅広い技術や知見を現在進行形で得ることができています。
何か選択を迷っている方や、過去の選択が正しかったのか不安な方へ。これからは自分の選択に対し「ご縁に導かれたのかも」と、ぜひワクワクしながらその道を進んでみてください。
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