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99歳10ヶ月で伝説のおばあちゃんが死んだ

あと2ヶ月で100歳だったね、なんて話があがるけど、これで良かったと思う。

そう、伝説のおばあちゃんは誕生日の1月を迎えることなく99歳10ヶ月で死んだ。

家族・親戚の中で私は1番おばあちゃんと「馬が合う」存在だったと思う。だからおばあちゃんの伝説を書き残しておくことにしよう。面白いから。

1.ゴキブリを素手で仕留める

おばあちゃんが住む一階は汚かった。掃除機をかけてるところ見たことないし、台所には卵の殻が大事そうにとってあった。

なので暖かくなるとゴキブリがよく出た。おばあちゃんは見つけると他の誰かが殺虫剤を持ってくる隙も与えず、バチン!と平手打ちで仕留めた。

それはゴキブリに限らず、蛾だってスズメバチだって例外ではなかった。

2.95歳にしてトレーニングマシーンを購入

通販で突然おばあちゃんはトレーニングマシーンを買った。95歳だった。

毎日50回と決め、足を乗せて左右に開脚・閉じるを繰り返す。

「だって、そろそろ鍛えないといけないでしょ?」って、理由を聞いたときは呆れてしまったよ。

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3.お好み焼きに煮干し

おばあちゃんの料理は昔から美味しくなかった。お好み焼きには10本近い煮干しが刺さっていたし、中華鍋で作るチキチキボーンは焦げていた。

おにぎりですら化粧品の味がしたし、卵焼きがガリっとならないことはなかった。

私はおばあちゃんの出す料理は苦手だった。

4.友達に茶道を強制

小学生の時に友達を家に連れて行きたくなかった。何故なら、おばあちゃんが割って入ってきて私の友達に強制的にお茶をやらせるからだ。

はじめはお茶菓子を食べれる、と喜んだ友達も行く度に茶道をやらされ(そしてまぢの注意を受け)嫌になる。それを見ている私も嫌だった。

おばあちゃんはお茶の先生をしていたんだ。そのおかげで私は最低限のお作法を今でも覚えているけど、当時シルバニアファミリーとかリカちゃん人形で遊びたかった。

5.深夜玄関に現れる妖怪

私やお兄ちゃんが大学生になると、バイトや遊びで深夜に帰宅することもあった。

真っ暗な玄関の電気をつけると、そこに正座してこっちをジッと見ている妖怪オババがいるんだから怖いなんてもんじゃない。ホラーだった。

どうやらおばあちゃんは玄関の靴をチェックして、帰宅状況を確認していたらしい。

6.トントン棒のコレクター

健康の秘訣を聞くと、棒の先にゴルフボールみたいなのが付いたトントン棒を何十本と見せてくれた。その中の1つはリラックマのものだった。

これで、寝る前に毎日何百回と全身をトントンするそうな。自慢げに話され、そして今私の自宅にはおばあちゃんから「持ってけ!」と待たされたトントン棒が2本転がっている。

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7.近所にホウキ配る

安くていいホウキをスーパーで見つけたおばあちゃん。もちろん大量買い。そしてご近所さんに配り歩く。

遠回しに「あんたんち汚いからこれで掃除しなさいよ」と言ってるようで家族としてはハラハラした。

8.改造カートで週一1人で買い物へ

97歳ぐらいまでは週に一度必ず徒歩30分程度(おばあちゃん速度で)の街のスーパーに買い出しへ。

その時持ってくカート、実は生協宅配サービスから譲ってもらった銀色のカバーを上手いこと内袋としてDIY。

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9.牛乳7本、卵5パック

週一の買い物で何を買うかって言うと、牛乳7本と卵5パックは必ず買い込む。プラス、なんやかんや買い込み総重量10kgは超えるカートを押して帰ってくるんだから大したもんだ。

でもガサツな性格がここでも裏目に。カートの1番下になぜか食パンやイチゴ、、、。見るも無残な食材たちに心が痛む孫であった。

その大量購入した食材、もちろんおばあちゃんも食べるし、二階に住む私の両親たちへ差し入れされるのであった。(要らないと言っても買ってくるのだからたまったもんじゃない)

10.99円の卵

その買い物は卵の特売日を狙って行くことが多いのだが、2000円以上購入で99円の卵を1つ買えるシステム。

おばあちゃん、何個も卵が欲しいから、2000円分買って卵1つゲットすると、レジからまたくるりと入口に戻り、2000円分選んでまた卵をゲット。

この調子で何周もするので、結局99円の卵のために無駄遣いをしてしまってることに気付いていない。本人は安い卵がたくさん手に入った!と大満足。

もちろん小さなスーパーなので顔バレ、毎回同じレジでモロバレ。やれやれ。

11.おやつがモロヘイヤ

これまた私が小学生、中学生の時の話。自宅に友達を呼ぶと何やらおばあちゃんが台所でトントン包丁を叩きだして、オヤツだよと言ってモロヘイヤを出してくるのだ。

家の前の畑でわんさか育っているモロヘイヤ。オヤツに出す理由は「体にいいから」。本気でやめて欲しかった。

12.ピアスやめれ

今の夫を初めて実家に招いて、おばあちゃんに紹介した時、開口一番「わたしゃピアスをする男は嫌いだね、なんですかそれは!」と怒ったね。

それ以来夫は毎日していたトレードマークのようなピアスを外し、2度と付けることはなかった。

二回目に会わせた時、「玄さん、ピアス辞めたのかい!あんたいい人だね」とお気に入りになった。単純か。

13.初めての急病、原因ワカメ

風邪も引かない、怪我もしない、お医者さんにかからないことを自慢してた健康体のおばあちゃん。

ある日謎の腹痛、嘔吐で、ついに何かの病気になったかと思ったらワカメの食べ過ぎによる消化不良。前日TVで見たワカメは体にいい特集を鵜呑みにし、大量に食べたらしい。

限度を知らないおばあちゃんである。

14.通院にはお茶の道具持参

近くの町医者に定期的に診てもらっていたおばあちゃん。(と言っても健康診断的な)

毎回午前の最後の診察を予約して(邪魔が入らないように)、持ち込んだお茶道具で先生とお茶タイム。もはや診察じゃない。

15.GWお母さん家出の原因

私がまだ小学校低学年の時に一度だけお母さんが家出をした。

それはゴールデンウィーク初日に一階に住むおばあちゃんが二階の模様替えを勝手に推進し、自前のレイアウト図にメジャーとか道具を持ち出して、仕切り始めた。

突然口出しされ、そして相当なお節介。嫁姑のバトル。おばあちゃん強し。

お母さんはその日の夕方にドーナツを買って帰ってきてくれたけど、間に挟まれたお父さんが私たちをどこか広い公園に連れてってくれて楽しかったのを覚えている。

16.年齢詐称を疑われる

私に子供ができ、おばあちゃんにとって初のひ孫が出来た。

「あんたが母親になるなんて驚きだね。それでいくつになったんだい?」

「もう28だよ」

「嘘おっしゃい!あんた私の子供なんだから40はいってるじゃろ?」

なぜか一世代飛んでいて、私が40過ぎてると言い張るおばあちゃん。私とあんたは仲が良いけど親子じゃないのよ。

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17.ニートの事件記事をファイリング

お兄ちゃんが大学卒業後すぐには就職しなかった。とにかく親よりもおばあちゃんが心配をしていたのを覚えている。

わたしが久しぶりに実家に遊びに行くと、おばあちゃんがコッソリと、犯人・無職の引き籠りみたいな事件の新聞切り抜きをごっそり出してきた。「トシくん(お兄ちゃん)大丈夫かね、、?」

お兄ちゃんニートだったけど、社交性もありサッカーが趣味みたいな人だから、これには笑ってしまった。



私が産まれた32年前から自宅の一階にはおばあちゃんがいつもいたし、社会人になって家を出てからも、実家に帰ればやはりそこにいた。

結婚して子供ができて(おばあちゃんにとってひ孫)実家の近くに引っ越して、度々夜ご飯とお風呂を頼りに行く時も、一階のテレビの前の椅子がおばあちゃんの定位置でブレることはなかった。

でも、もういない。孫より先にオババが死ぬのは自然の道理なのだけれども。

あんた最高だったよ!って伝えたいかな。

伝説を思い出したらまた追加していくことにしよう。







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