a taster

 若くして病で立ちゆかなくなったり、若くして亡くなった、と呼ばれる範疇にいる人。理由はそれぞれだけれど、実はまわりに何人もいる。
 人は誰も必死に生きていると思う。上手くいかなくて立ち止まったりしていても動けなくても、その姿も認めて尊重していたい。もしみんなの前で笑っていても、それはなけなしの力を振り絞って這々の体でひねり出した表情だったりするから。
 頑張っていないとまわりから思われたりすることもあるから盾になっていたいけれど、正直生身なので毎日つらい。当然本人のほうがずっとつらいはず、でも支える側もまわりから優しい無理解を受け取り続けてつらい。
 笑いながら見えない血を流している。もう笑うしかないから、笑っている。
 「悩みなんてなさそうだよね。」
 そう言われたりも、する。悩みって何だろう。絵の具のように混じり合った日常のことを指すのだろうか。
 
 本人と医師と文字どおり一生懸命ひとつずつできることできないこと、していいことといけない範囲を確認しながら揺り戻しもある日々を越えている。そんな中、どこかで聞きかじった思いつきのアドバイスを渡される。そのたびに心がキュッと音を立ててつめたくなっていく。
 だいたいその中には無自覚の見下しや偏見が含まれていて、本人に届く前にわたしがくらう。まるで運のない毒味役のようだ。麻痺したのだろうか、どんどん味がしなくなっていく。何もかも。

 上手くいかなくて苦しんでいる人たちに、本当にやさしい世の中であってほしい。やさしいふり、わかったふりではなく。
 それだけのことなんだ、それを何年もずっとずっと毎日毎日考え続けて生きている。これは本当に大丈夫だろうか、と味見をしながら、食べることから遠ざかっていく気持ちを抱えて。

なつめ がんサバイバー。2018年に手術。 複数の病を持つ患者の家族でもあり いわば「兼業患者」