見出し画像

藤井 風「LOVE ALL ARENA TOUR」

 かねてより念願だった藤井 風ライブを、さいたまスーパーアリーナにて鑑賞した。
 この日は音声/音響畑で元ディレクターの某氏と同行。音楽経験者で日比谷公会堂に立ったこともあるP氏と合流した。

物販の流れは概ねスムーズだった。
ビジョンにはツアー用の映像が。
こちらも大人気。

 これまでは感染症禍で申し込みがかなわなかったりチケットが当たらず、各種配信やフィジカル(既発Blu-ray)で見ていた藤井 風。とにかく進化が早い人なのだと思う。生ライブは配信で削られてしまう雰囲気や熱量、音圧を直接感じられるためにより良く感じがちだが、それを考慮しても今回、おそろしいほど生歌もピアノも素晴らしい。ノリに乗っている。この日のコンディション自体も良かったのだろう。
 冒頭から続く弾き語り、ピアノ1台で繰り出すグルーヴに圧倒される。天使だ美形だと持て囃されがちな彼だが、いやそこにあるのはそんなに甘ったるいものじゃない。気が遠くなるような積み重ねの上に、微笑すらしながらすっくと立つ圧倒的才能の塊だ。

 生バンドが登場して一転、攻めのステージング。Dr.上原のプレイはKan Sanoのライブで昨年3度楽しんだが、今回も本当に素晴らしい。Key. Yaffleは初めて、敏腕サウンドプロデューサーの熱いプレイと柔和な微笑みを堪能。Gt. TAIKINGはやはり華があり、2ndのサウンドによくマッチしている。Ba.小林は特にウッドベースが好きすぎて、ひそかに悶絶した。そもそもウッドベースはわたしにとってツボなのだ。
 そして藤井 風。時に何かが憑依したような気迫と艶を見せ、時には笑わせ、ふにゃりとした喋りで場を和ませる。振り幅の大きさ、その中に一本しっかりと通った芯の太さ。誰もがちょっといい気分であってほしいという願いは表現となり、広大な会場をふんわりと包みこむ。
 ダンサーや特効を加えて繰り広げられるパフォーマンス、そのどれもが楽曲の世界観を真正面から受け止めては放ち、オーディエンスに反響させてはきらりと光らせていた。決して押し付けがましくない一体感、会場が自然とやわらかくまとまっていく幸福感に満ち満ちたライブだった。
 
 「幸せでおってほしい。」「色々あるけどあんまり心配せんで。」「お互い頑張りましょう。」
 逆風もある中でこのMCをゆったりと伝えられる彼は、表舞台に立つ人としての矜持と風格をはっきりと宿していた。世界にその名が届きはじめ、立つ舞台が広がっていく道の途中。その旅路はきっと、さらに遠くまで拓けていくものと信じている。
 
 

 PAの技術にも感じ入った。
 さいたまスーパーアリーナは座席がプラスチックでなくファブリックで、壁を含め音響を考えたつくりになっているのだが、それにしても音が良い。
 キャパシティの大きな会場ということからか自転車を使った演出があったが、自転車と接話と歌がシームレスにひとつながり。どの局面でもビシッと合わせる気持ちよさ。音づくり匠の技を感じる。
 思わず「これすごいな!」と顔を見合わせた。この話は帰りしなのホットトピックのひとつ。勿論デジタル技術も優秀なことと思う。仕込んでオペレートする方々に心からの敬意を。

 照明も過不足なく、しかし盛り上がる美しい演出。曲のイメージをアーティスティックに増幅させて本当に素敵だった。
 トラスの位置や吊りから公演中の演出を僅かばかり想像できていてもなお、感嘆が口からもれる。光の演出は高揚感とともに非日常感を場に充満させる、その効果が最大級に発揮されていたように思う。

 ピアノの鳴りも美しい。まさしくチーム風が一丸となって作り上げた、珠のように輝くステージ。関係したすべての人に拍手をおくりたい。

ラスト「何なんw」での一幕。


以下、楽曲のネタバレを含みます。 
 
 

開演前SE

終演後SE

(終演後はArneから開演前SEへと繋がった)

セットリスト

【ピアノ弾き語り】
1 The sun and the moon
2 ガーデン
3 ロンリーラプソディ
(MC)
4 もうええわ
5 旅路
【バンドセット】
6 damn
7 へでもねーよ
8 やば。
9 優しさ
10  さよならべいべ(メンバー紹介)
11  死ぬのがいいわ
12  青春病
13  きらり
14  燃えよ
15  まつり
(MC)
16  grace
(MC)
17  何なんw ※撮影許可

文中敬称略
 
 
 
 「死ぬのがいいわ」ラストで倒れ込む時にぶつかったマイクがゴッと音を立てた際、瞬時につい目がまん丸になったのは仕様です。
 あれくらいではグリルだめにならないけれどね。びっくりしたなもう、それもまたライブならでは。

なつめ がんサバイバー。2018年に手術。 複数の病を持つ患者の家族でもあり いわば「兼業患者」