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超緊急帝王切開で息子を出産した日を当時のLINEを読んで振り返る

この前、息子の生まれる直前を当時のLINEのメッセージと共に振り返って、次は産後だなと思っていたのだけど、まとめようとしたらかなり膨大な量で、私産後ずっとLINEしてるな? と思うなどした。
が、当時コロナ禍の影響で立ち合いや面会は禁止されていて、生んだ直後は身動きできず、電話のできる談話室に移動することもできない状態だったので、LINEを打つしかなかったのだと思い出す。
寝られるうちに寝ておくべきだと思っても、妙に精神が昂ってしまって眠れず、そして別に眠らなくても動けていたのが今でも不思議だ。

息子誕生前日のやりとりを振り返った記事はこちら。

産後のやりとりを一気に書くことは挫けてしまいそうなので、今回は出産の直前直後のことをまとめておきたいと思う。

息子の生まれた日、13:28~のLINE

私 さっき起きて今病室です
  まだ何がなんだかだけど心配かけました
  無事生還!
夫 電話できる?
私 (息子の写真3枚)
  電話はできないみたい
  新生児室にいる赤ちゃん、写真撮ってきてくれた
夫 今病院の人から電話きたよ
  よくがんばったね
  生きててくれて良かった
私 私は特に頑張ってないの
  まだよくわかんない
夫 麻酔のせいで意識がしっかりはしてないって聞いたよ
私 起きたてだけど自分的にはふつう
夫 そうか 赤ちゃんも小児科の先生が言うには元気そうだと聞いた
私 すごい泣いてたって言ってた
夫 赤ちゃんが?
私 そう
夫 それも聞いたわ
  3176gみたいだね
私 そうなんだ!
夫 11:49に生まれたって

麻酔から目覚めて病室に移動して割とすぐにLINEしたから、病院から夫への報告電話より早かったようだ。息子の出生体重も時間も、私は夫から聞いた。

夫 11:46に電話きて、赤ちゃんが体調悪いみたいだから帝王切開します。
  今から来られますか? あ、やっぱり来なくて大丈夫です。
  みたいなやりとりをされてめちゃくちゃ不安だった
  今病院の目の前にいるよ

これもコロナ禍ならではというか、待たされる身になったらと思うと恐ろしい。11:46に電話が来て11:49に生まれてるということは、ドラマ『コウノドリ』で見ていたように、カイザー(帝王切開)になったらものすごくスピーディーに手術が進むんだなぁと他人事のように思った。切った後、縫合とかそういうのに結構時間がかかるんだろう。
夫は病院からの二回の電話(手術します、と、目覚めました、の電話)の間、1時間半を生きた心地のしないまま過ごしていたそうで、入れるわけでもないけれど病院の前で待機していたらしい。

夫 (私)は意識はっきりしてるの?
私 はっきりしてるよ
夫 そうなんだ 
  なんでだろう 電話できるのも夕方以降じゃないかって言ってたのに
私 全身麻酔はじめてだったけど、ほんとすっと寝てすっと起きた
  意識はあるけど身動きとれない感じだから
  電話できるスペースまで動けないってことかな?
夫 そうか

全身麻酔のときって、思いもしないこと口走ってたりするらしいですよね…恐ろしい。私の体感では本当に一瞬という感じで、起きても自分では意識はっきりして思考できていると思っていた。

さてさて、続いて、緊迫の帝王切開前後のこと。やはり直後のLINEが一番実感こもっているなと感じる。

私 だんだん陣痛強くなってきて、
  でも呼吸とか上手だよって言われてたんだけど
  急に、心拍戻らない!的なことになってめっちゃバタバタし始めて
夫 なんでだろうね
私 私はずっと深呼吸して!って言われてたから
  とにかく呼吸することだけに集中してて
  そうこうしてるうちに
  Aで! とか 
  緊急カイザー とか聴こえてきて
  めっちゃ人が増えて運ばれて、
夫 こわっ
私 これから麻酔して赤ちゃん出すけど、
  なるべく赤ちゃんに薬行かないようにするから
  最後お腹切る感じあるかもしれないけど大丈夫だからとか
  ばばばっと説明されて、あとは麻酔されて今に至る
  お腹切る感じはわかんなかったからよかった
夫 痛くなかったのは良かったね
私 緊急カイザーって
  コウノドリでめちゃくちゃ聞いたやつだったから、おおーって思ってた
夫 呑気だね笑
私 後は
  赤ちゃん頑張って って思って、
  (夫)心配するなぁ って思ってたよ
夫 優しいね もっと自分の心配したらいいのに
私 バタバタ運ばれる前の方がずっと痛くて辛かったから、
  オペ室運ばれるときとか麻酔前とかはむしろ余裕あったよ
  私は生きて帰ろうと心に決めてたから大丈夫!
夫 意外にメンタル強いね笑
私 なんか大丈夫やろって思ってた
  でも、こういうのってどれくらいの発生頻度なのかな?
  なんでこうなっちゃったんだろう
夫 どうなんだろうね
  帝王切開自体は5人に1人らしい
私 私のパターンもまあまああることなのかな
夫 その40%くらいが緊急って書いてある
私 そうか
  赤ちゃん後遺症的なの大丈夫なのかな
夫 それは確かに気になるね 
  あとで聞いてみて

促進剤の量が増えるにつれ、どんどん陣痛の痛みも増していって、「ああ、生むまではどうあがいてもこの痛みからは逃れられないのか」と絶望的な気持ちになりつつ耐えていた。産前に呼吸法について読みまくっていたのもあり、とにかく呼吸をゆっくり繰り返すことを意識していたけれど、痛みへの恐怖が大きかった。口では、「赤ちゃん大丈夫だよ、一緒にがんばろうね」と呟いてたけど。

胎児心拍低下状態になってからは分娩室にどんどん人が増えていって10人くらいになったような気がする。私は痛みと呼吸でいっぱいいっぱいで、周りの人の声をぼんやり聞いていた。後に、カイザー決定時の「Aで!」というのは何かと助産師さんに聞いたら、帝王切開の緊急度をアルファベットで表していて、Aは緊急帝王切開の中でも「超緊急帝王切開」と呼ばれる部類なのだということだった。

私 (息子の写真)
  かわいいのかよくわかんないねまだ笑
  実感ない
  声とか聞きたいなぁ
夫 確かにね
私 目開いてるとこもみたい
夫 明日? にはお母さんのところにいけるって言ってた気もする
私 そうなんだ
  お腹痛いわ
  仕方ないけど
夫 あら 麻酔切れてきた?
私 そういうことか
  いま診察でお腹押されたから
  陣痛に比べれば全然だけど
  いまちょっと助産師さんと話したら、こういうのもまぁあることみたい
  赤ちゃん元気だから明日には同室できるんじゃないかって
夫 逆に元気なの不思議だね
  まだ寝てたかったんじゃないお腹の中で
私 てかほんと直前まで胎動もぐいんぐいんしてたんだよ
  ○○大の実習生の人、今日も見学してて、
  陣痛のとき腰さすってくれたり息のタイミング教えてくれたりしてて
  助産師さんに、
  今日夕方までに生まれたら、
  その実習生さんと一緒に取り上げさせていただいていいですか?
  って言われたからいいですよって言って
  ○○大の先生が来て、同意書みたいな書類に
  陣痛の合間になんとかサインして、
  その直後くらいに
  あれ?ん??ってなって、バタバターって流れだった
夫 実習生も緊張しただろうね
私 そうだね あとでお話する機会あるかな
  家族たちに連絡しなきゃな
  わかんないこともあって不安にさせるかもしれないけど
  生まれたは生まれたしね
夫 うちの分は報告しとくよ
私 ありがとう よろしく
  すごく喉乾いてるんだけどあと1時間くらい飲んじゃダメなんだって
夫 そうなんだ なんでだろうね
私 お腹の血も出さなきゃいけないらしくて
  時折ぐいーって押されるのが痛い
  でもさっき痛み止め点滴してもらったらかなり楽になったから眠れそう

そうだった、生んだ直後はまだ実感がなくて、息子の写真を見てもかわいいのかどうか分からなかったんだった。今となっては本当に遠い思い出だ。毎日かわいいかわいいと実物と写真を眺めているから。
実習生さんの存在はありがたかった。おそらく普段は分娩台の上で一人で過ごす時間が長いのだと思うけれど、実習生さんがいたことで私はずっと一人ではなかったから。赤ちゃんの心拍低下に気づいたのも大学の先生で、最初はお腹に巻く機械がうまくつけられていないのかと巻き直してみたけれど異常が続いて、という流れだった。

麻酔から目覚めた直後はもちろんまだ麻酔も効いているから、「痛みも余裕、楽して生んじゃったわ、赤ちゃんだけきつい思いさせてごめんね」なんて思っていたけれど、問診のたびにお腹の傷口を思いっきり押されて子宮から血を出すのが本当にしんどいし、麻酔が切れたら何をするにも痛くて、「何が楽して生んだだよ…」とちょっと前の自分につっこんでいた。

家族に報告した後、仕事を終えた妹とのLINE。

妹 陣痛いたかった?
私 でもまあ一番きつかったのは内診と棒入れたりバルーン入れたりの痛み
妹 いたそう。。
私 陣痛も痛かったけどおまたの奥のいろいろよりは耐えれた
妹 うわああ
私 呼吸とか力の抜き方うまいって言われたんだけどなぁ
  いきなり心拍低下しちゃった
  すぐ酸素入れられて深呼吸して!って
妹 麻酔すぐ落ちた?
私 うん
妹 医龍みたいに?
私 なんか赤ちゃんに薬いかないようにギリギリ狙うから、
  ちょっとお腹切られる感覚あるかもしれませんとか言われたけど、
  大丈夫だった
  ばばーっと説明されて、
  そのままふわーっと麻酔されて、さーっと起きた
  傍目からは医龍みたいになったのでは

医龍、妹と観てたんだよなぁ。ドラマでは「はい落ちた~」ってすぐ落ちてたけど、私もそんな感じだったんだろうな。
出産に関わる痛みの種類、いろいろあるけれど、それぞれが別のジャンルで痛い。絶望度、不快度、後を引く度、とかで五角形グラフにしたら分かりやすいかもしれない。

私 あのさ、今日痛かったのもう一個あった
  点滴の針刺すとき、なんか血管細かったらしくて、
  腕に針刺されてからずーっとぐりぐりやられ続けた
  血管が逃げる!って
  内出血すら起きない…とか言われた
  結局手の甲に刺した
妹 あらぁ 痛そう
  血圧低いと刺さりづらい
私 そうなんだ! 今まで採血で問題になったことなかったから意外だった

そう、点滴も痛かった。手の甲って動くたびに刺激されるから、その後ごはん食べるときも痛くて、利き手でない方でスプーン握って食べていた。腕にも刺したけど、それはそれで動いたときにぐぐっと刺さる感じがあって地味にしんどかった。

妹 いまごはんも食べられないの?
私 ごはん食べられないみたい  
  夕飯まだかなーってしばらく思ってたけど、この点滴がごはんなんだね
   
  排泄したくなったらどうするんだろう…
  自分の身体の様子よくわかんないんだけど、
  おしっことか管刺さってんのかな?
妹 点滴がごはん… かわいそう
  管刺さってるはずだよ 違和感ないの?
私  ない
妹 おしっこしたくならないの?
私 ならない
妹 じゃあ出てんじゃない?
私 そうなのか
妹 たぶん 麻酔してる間は管入れてるはずだし
私 時々生理みたいに流れ出てるのは分かる
  お腹の中の血を出してるんだって
  おしっこの管もなんか嫌なんじゃなかったっけ
  おしっこのすがみたい

なーに言ってんだ。生む直前に新しい首相が菅さんに決まったので、頭の中で管と菅が繋がってしまったんですね。
妹は医療従事者なので、私は気になっていた排泄事情について尋ねていた。今管入ってますみたいな説明はなく、身体を動かせなくて自分で確認することもできなかったので、自分の身体なのに何もできずにされるがまま、という状態だった。

妹 なんかみんな嫌がるよ導尿は すごい違和感らしい
私 抜くとき? ささってるとき?
妹 ささってるとき
私 えっ
妹 早く外してくれぇぇって懇願してる
  男性は違和感強いらしい
私 私なんなの…

本当に違和感がなくて、私の身体はどうなってるんだと思った。妹とのLINEはついつい笑ってしまう部分が普段から多いのだけど、「笑うと深刻なダメージ」「本当に腹筋崩壊してるから」と早速帝王切開ギャグを披露している私なのだった。

次は、19:19~の夫とのLINE。私の手術の状況について、お医者さんが説明に来てくれて、その内容を報告している。

私 先生からの説明あったよ!
  もともと促進剤とか使うことで
  赤ちゃんにストレスかかるというのはあって、
  それは昨日の時点で説明されてたんだけど
  はっきり原因が断定できるわけじゃないけど、
  おそらく陣痛で子宮が収縮するときにへその緒が圧迫されて
  苦しくなっちゃったんじゃないかって
  普通なら140くらいの脈拍が70,80になって、
  促進剤やめても戻らなかったから、急遽帝王切開することにした、
  少しでも早く出してあげる必要があったので十分な説明や
  同意書の記入ができなかった、
  通常であれば腰に麻酔打つ(無痛分娩みたいな?)んだけど
  緊急だったので全身麻酔になった
  とのことでした
  心拍低下したことの赤ちゃんへの影響については、
  生まれてすぐ元気に泣いたことと、
  今新生児室で見ている分には元気で問題ない、
  経過観察は慎重にしていく、という答えでした

この説明の時に「順番が前後してしまいましたが」と言われて、手術の同意書にサインをした。本当なら夫が立ち合いしていて、夫がサインするものだったのだろう。私はお医者さんによって生かしてもらったけれど、もし万が一のことがあったら病院的にも大変だったのではないか?とちらっと思った。

案の定、長いまとめになってしまった。
上のLINEのやりとりでも感じられるのだけど、私は「なんで帝王切開になってしまったんだろう」とずっと自分をどこかで責めていて、生まれたての赤ちゃんに会えなかったことに悲しさを感じていた。
生んだ当日、私は直接赤ちゃんの姿を見ていないし、声も聴いていない。私が目覚めた直後に助産師さんが私のスマホを持って撮って来てくれた数枚の息子の写真を眺めるだけだった。会えない中でせめて写真でもと考えてくださった助産師さんには感謝しかないけれど、同じ部屋や同じフロアのあちこちから聞こえる赤ちゃんの泣き声を聞くにつけ、ああ早く私の赤ちゃんに会いたい、という思いは募っていった。長い夜だった。


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