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坂を上る、星と出会う
坂はいつも緩やかなわけではない。
それでもその先の景色の美しさを知っているから、見たいと思うから、今ここにいるのだと実感した日々だった。
追い風が背中を押してくれるような坂も、前が滲んで見えなくなるほどの険しい坂も、紛れもなく、私の坂。
2023.9.30/佐野
この週をまたいで千葉で長期出張があり、北海道から栃木は行くのが大変でも千葉スタートなら余裕では?と思って行くことにした。
公演の2日ほど前、その日の行程が終わってスマホを見た時だったか、佐野公演の中止が発表されていた。
前泊のうちに東京は遊び尽くしていたし、かといってそのまま佐野に行くと悲しくてたまらなくなりそうで、予定を変えて元々の佐野の帰りだと時間がなさそうだった宇都宮、せっかくならという気持ちで日光にも行くことにした。
節約のために新幹線を使わず、ローカル線を乗り継いで約3時間半、餃子の国初上陸🥟
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夕方、街を歩いている途中でたまたま見つけたいい感じの居酒屋。飲みながら店員さんに佐野と今日のことを話したら「見つけてくださってありがとうございます」と言われたのがなんだか嬉しかった。
ご飯もお酒も本当に美味しくて居心地も良くて、ライブに行っていたらここには来れていなかったことを思うと悲しい気持ちが少し和らいだ。
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翌日は日光へ。思いがけず栃木を満喫できた。でも佐野もいつか必ず。
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日光から千葉に戻る道中、ふと思い立ってこのあたりに彼岸花の群生地がないか探してみたら、埼玉の幸手というところにあった。
北海道では彼岸花が咲かず、一面真っ赤に染まる景色をいつか見てみたいとずっと思っていた。幸手は運良く途中下車で行ける場所で、大雨だったが行かない選択肢はなかった。
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思いがけず大冒険になってしまったけど、訪れた場所も、そこに向かうまでの道中も、忘れられない思い出になった。
2023.10.7/奈良
出張が6日に終わるから奈良は新幹線で行ける!と思って行くことにした。
道外(場所によっては道内も)のライブに行くときは飛行機だから陸移動が不思議な感じで、移動距離の割に遠征という感覚がなかった。完全にバグっている。
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ようやく迎えた私的初日はTwitter(X)のフォロワーさんと偶然席が隣で、1曲目のMi Amorcitoから撃沈、その後も度々崩れ落ちる私を助けてくれた。
最初から最後まで聴きたかった曲しかなくて(聴きたくない曲なんてないんだけど)休憩中も終演後も呆然としていた。
特に挙げるとすればポーカーフェイス、Sky High、Full of Love、東京スヰート、Love Vertigo、コーリングetc…
ゴスを好きになりたての頃によく聴いてたな、東京スヰートは「ライブハウスからハーモニーを」でも歌っていたな、あの時はリーダーが「画面越しでも…」と歌っていて涙が止まらなかったな、とか、今ここに来るまでのことをたくさん思い出した。
Sky Highが始まるタイミングで降りてくる照明が16分音符(♬←こういうの)に見えるのがすごく好きで、5人が五線譜をバックに歌っているように見えたのはそう見せているのかな。そうだったらいいなー!
そして何より、Vol.の冒頭を観客が歌ったり、愛の歌でなりきりをしたり、3年間ずっと夢見ていた「ゴスペラーズのツアーで一緒に歌う」ことが叶った嬉しさがたまらなかった。
時間の関係で奈良観光はできなかったけど、美味しいものはしっかりいただきました。
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2023.10.21/広島
HERE&NOWツアーの日程が発表されて、地元の北海道公演と同じくらい真っ先に行くことを決めたのが広島。
広島はまだ訪れたことがなく、いつか行ってみたいと思っていたけどこれまでなかなかタイミングが合わず、今回は必ず!という気持ちでチケットを申し込んだ。
そして、せっかく広島に行くなら広島市以外も行きたくて、前泊で尾道に泊まることにした。
この遠征、広島公演の2日前に大阪で観たいライブがあり、飛行機を調整した結果、大阪→尾道→広島→山口→福岡経由で新千歳、という4泊5日の西日本横断クレイジージャーニーになってしまった。後悔はしていない。
まずは前泊の尾道に向かう途中、新幹線で途中下車した福山駅でむさしのお弁当を買った。いつもみんな食べてるやつ!ボリュームたっぷりのおにぎりが美味しい。
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そして尾道に到着。どこを歩いても画になるような美しい街で、疲れを忘れてどこまでも歩いていけそうだった。
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そして北海道では咲かない金木犀に初めて出会えた。ハンドクリームや香水で香りはなんとなく知っていたけど、街中からあの香りがするのには驚いた。
北海道では考えられない街の造りや環境の違いを見つけていくのが本当に面白い。地味かもしれないけど、私にとってはそういう発見も旅の楽しみだと思っている。
着いた頃に降っていた雨もすっかり止んで、夕日と海をただ眺めていた。シマダチがよく似合う風景。
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夜は中心部から少し離れて、地元のお客さんで賑わう居酒屋へ。牡蠣と日本酒大好きマンとしては広島で牡蠣と日本酒をたらふくいただくのがもう一つのミッション(?)だった。
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美味すぎる!!!!!
たらふく飲んだけどこのまま帰るのは惜しいな、と思って歩いていたら偶然見つけた燻製の専門店。
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ここも本当に美味しくて、小さなカウンターを囲むお客さんも店員さんも温かい人ばかりだった。
東京に住んでいるけど地元が尾道で、帰省して友人と飲みに来たというお姉さん、ずっと尾道で暮らしているというママ、尾道に住んでいて、地元が北海道の私と近い地域という同年代の方。
お客さん同士の繋がりができるきっかけの場所になるのが嬉しいです、と笑う店長さん。
東京から来たお姉さんは折り紙が趣味だそうで、その場でバラを作ってプレゼントしてくれた。今も部屋に飾っている。
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自分にとって忘れられない旅を挙げるとするならきっと今日を選ぶだろうな、と思うくらい、あまりに美しい1日だった。
「海が見えたら 起こしてあげる」
朝、旅の途中で を聴きながら、部屋から見える景色をそのまま持って帰りたいと思った。
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ホテルから少し歩いたところにあるご飯屋さんで朝ご飯を食べた。昨日燻製のお店で会ったママも言ってたけど、尾道は時間の流れがゆっくりに感じる。時間に追われ、無意識に生き急いでいるような最近の生活を少しリセットできる気がした。
尾道から広島市内へ向かう途中で、別の用事があり三原に立ち寄った。
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名前に吸い寄せられて入ったお好み焼き屋さん。このお店(地域?)ではお好み焼きにモツを入れるそうですごく美味しかった。
そして目的地の広島に到着。
平和記念公園は絶対に行きたかったので、見て回れるところは一通り巡った。
賑やかな街並みと過去の悲しい現実が同居している姿が至るところで見受けられて何ともいえない気持ちになった。実際にその土地を歩いてこの目で見るのとでは違う、本当に。
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会場へ向かうとツアートラックがお出迎え。久しぶりの方や初めましての方にもたくさん会えて嬉しかった。
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行きの飛行機で聴いていたというのもあり、アカペラカバーの浪漫飛行は今回特に響いた曲だった。
MCの地元トークを聴きながら、どの土地でも彼らは心から旅を楽しんでいて、そんな5人だからこそ私もここまで来たいと思えたのだろう、と考えていた。
終演後は名前に吸い寄せられて入った居酒屋で、この日も牡蠣と日本酒をたらふくいただいた。
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2023.10.22/山口
広島から新山口に向かう途中、徳山で高校時代からの友人に会いに行った。
山口を訪れるのはこれで3回目になる。1回目は大学卒業前にこの友人に会いに山口市方面へ、2回目はG25ツアーの下関で。
同じ県でも来る度に別の街に行けるのが嬉しいし、コロナ禍前最後のゴスペラーズのライブが下関だったこともあり、山口は思い入れのある土地だ。
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公演途中で中止になる、というのは今までにない経験だったけど、この日をきっかけにライブの1公演1公演をより大切にするようになった。ゴスペラーズに限らず。
30年近くステージに立ち続けているとはいえ、ステージには魔物がいたり不測の事態が起きたりすることもある。そんな時の演者の心の内は私たちには計り知れないけれど、それでも今できる最高のパフォーマンスを届けてくれた。
前半ラストの東京スヰート〜ひとり、この公演限りで披露されたPromise、今だけは代わりに、という客席の気概を感じた(きっと私もその一人だった)愛の歌のなりきり、あの空気はずっと忘れられない。
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フォロワーさんと飲んで日帰り組を見送った後、まだ帰りたくなかった泊まり組は2軒目を探すことにした。日曜日で空いているお店も少なく、最終的にたどり着いたのがオーセンティックなバー。
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マスターも音楽好きだそうで、私たちがするゴスペラーズの話や遠征の話に「本人たちに聞かせてあげたいね」と言ってくれたのが嬉しかった。
中止になっていなければここにも来れなかっただろうな、と佐野の時を少し思い出していた。
振替公演は行けなかったからいつかリベンジしたいし、このバーにもまた行きたい。どの土地にも「また来る理由」はあるけど山口は特にそう。また必ず。
2023.12.14/札幌
前回から少し間隔が空いての讃歌。無事に始まって、前半が終わって、後半が始まって終演する、今まで当たり前だと思っていたことを噛み締めながらこの時間を過ごした。
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札幌で嬉しかったことがもう二つ。
一つはコロナの制限が撤廃されてから初めて「札幌で」ゴスペラーズのライブを観られたこと。
コロナ禍前の2019年、北海道に住むゴスマニ数人と知り合って遊ぶようになった。コロナ禍以降も、工夫しながら一緒に旅行したり約束の季節のロケ地の美瑛に行ったりした。そのメンバーで初めて、声出しのできるゴスペラーズのライブに讃歌できた。
ロケ地の景色を思い出す約束の季節、その日みんなで泊まった富良野の星空を思い出す星屑の街。
大丈夫ずっとこの歌とここまで来たよ、という言葉は自分たちそのものだった。
もう一つは、山口でお会いしたフォロワーさんがその後札幌公演のチケットを取って来てくれたこと。
山口で会ったのも下関以来3年振りで、この先の讃歌予定で札幌の話をした。いつか北海道にも、と言っていたらまさかこんなに早く叶うなんて。
終演後「来てよかった」と言ってくれたのがすごく嬉しかった。そういう意味でも、今回のツアーで山口に行くことができてよかったと思う。
2023.12.16/釧路
道民だけど釧路は初。いつか行きたいと思っていてもなかなか機会がなくて、こうしてライブがあると行く理由ができるから嬉しい。
道外から来るフォロワーさんと北のマニでレンタカーで観光した。
おもむろに銅像と写真を撮り出す集団...🤔
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昼は和商市場で勝手丼。際限なく盛ってたらなかなかのお値段になったけど後悔はしていない。見たことないサイズのホタテがすごく美味しかった。
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地元だけど旅先、という不思議な感覚。
釧路公演は初めての方や前回のツアー以来という方が多かった印象で、東京スヰートの後半のブレイクで拍手が起きたり ひとり の歌い出しで歓声が上がったり、新鮮な反応が多かったのが嬉しかった。
あとはコール&レスポンスの
😎「くし!」\ろ!/
と
😎「どう!」\とう!/
がツボでした😎
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美味しいものしかなくて困る。
ライブ前後の観光は基本一人行動が多いけど、みんなで2日間ワイワイ過ごせたのがすごく楽しかった。次は夏に来たいな。
2023.12.23/仙台
本当は釧路が私的千穐楽になるはずだったけど、会いたい人がいて気づいたらチケット・飛行機・宿の3点セットを揃えていた。
仙台は何度か来たことがあるけどしっかり観光するのは今回が初めて。フォロワーさんに誘ってもらっていろいろ回れて楽しかった!
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牛タンなら1日3食いける。
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ホールのライブでは初めての立見席。半円形の会場は武道館を思わせ、この日の少し前に発表された武道館公演への期待が高まるような空間。
みんなが座るタイミングで視界が一気に開けて、烏滸がましいけどこの空間にはゴスペラーズと私しかいないんじゃないか、というくらいの没入感だった。
星屑の街はこれまでのツアーでも最後に歌われることが多かったけど、今回のツアーの、ラストで5人がステージのギリギリまで前に出てきてほぼマイクオフで歌う姿は、ゴスペラーズがこの数年を戦い抜いた証のように思えた。
最初はグループとして集まることもできなかった。少し経って集まって一緒に歌えるようになっても、等間隔で置かれた椅子の距離が限度。メンバー同士でこれなら、客席との距離なんてもってのほか。
少し前の話なのに、そんな時期があったことを今では忘れがちになる。けど、こうして歌う5人の姿は、過去を鮮明に思い出させた。
そして「大丈夫 ずっとこの歌とここまで来たよ」と、前に歩み出て、今までのどの時よりも清々しい表情で思いっきり歌う5人の姿は、5人なりの、5人と私たちなりの、勝利宣言だった。
みんなで星を掴んで、見上げた星空より高くまで来た。この夜を越えたら、また何処へ行こう──
ライブが終わるのは寂しいけど、明日がちょっと楽しみになるようなラスト。
このツアーも、コロナ禍でも、きっと出会ってからずっと、ゴスペラーズは私を、私たちを呼んでくれていた。その声に応えられなかったこともあったけど、それでもいつかまた、と、その場にいなくても、いつも声は届いていた。
互いに呼び合い、共鳴するライブという空間で、土地によって季節によって少しずつ表情が変わるたくさんの「声」に会いに行けたこと、私もその声のひとつになれたことがなによりの幸せだった。会場のひとりひとりの声はまるで、満天の星空のようだった。
そういえば、G25ツアーで行こうとしていた土地にようやく全部行くことができた。
2022年のまだまだいくよで函館・名古屋・東京、今回のヒアナウで仙台。大阪はゴスのライブでは行っていないけど、他のアーティストのライブでコロナ禍以降何度も訪れることができた。
「ゴスペラーズ坂ツアーでたくさん遠征する」という学生時代の夢が社会人5年目にしてようやく、満足いく形で叶ったような気がした。
「皆さんがゴスペラーズのライブをきっかけに全国各地旅をして、自分なりの楽しみを見つけてくれていることが嬉しい」「僕らもその旅にお供しているような気持ちです」
最後の挨拶でリーダーが言ってくれた言葉が本当に嬉しかった。
大学生になるまで道外に出たのは修学旅行だけで、知らず知らず遠いところへの旅に対する憧れが募っていたように思う。そこでゴスペラーズと出会って、共に旅をしたいと願い、叶うようになった。出会った頃は予想もしていなかった、幸せな未来を歩んでいるのだからゴスペラーズには感謝しかない。
私はゴスペラーズのおかげで旅の楽しさにたくさん気づかせてもらえて、ずっとゴスペラーズの旅にお供しているつもりだったけど、同じ気持ちでいてくれたんだ。
五人五様で街を楽しみ、人と交わり、想う姿とステージでその思い出を話すきらきらした表情が大好きで。訪れる街それぞれに「ライブ会場」以上の気持ちを乗せて歌う5人が大好きで。
私もそうありたいと思った。
ここに行けばあの人に会えるかな、とか、あの県に行くなら前にメンバーが上げていたあれを食べてみたい、とか、この街も私の大切な場所になったな、とか、そういうのもすべて。
その土地を歩けば、その土地のものを食べれば、その土地の人と話せば、だんだんそこに住む人の暮らしが見えてくる。どんなに遠い場所でも、そこに人の暮らしがあることを実感するたび、自分の世界が少しずつ広がっていった。
歌とともに大切な人や場所を思い出す、そしてそれは旅を重ねるほど増えていく。その思い出は、寂しさも希望に変えていける。
私は貴方達から旅を学んだ。
こんなにも人生に光をくれる存在になるなんて、10年前は想像もしなかった。
気づけばゴスペラーズを好きになって10年だ。また新しい旅が始まる。
次の約束があるというのは本当に心強い。会いに行けるチャンスを大切に、ひとつひとつに後悔のないように、日々できることを積み重ねてその日を楽しみに迎えよう。
また次の場所で、声を届けられますように。