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旅の終わりが新たな旅の始まりの旅 2

国境にかかる滝 (2016年12月4日)

私たちが泊った徳天山荘というのは、徳天瀑布のエリア内にある宿で、入場券を買ってからでないと入れません。その代わり、朝ゲートが開いて一般の観光客が入ってくるより前に自由に滝の周りを散策できるわけで、生徒たちは早朝から外に出て行きました。ゆうべは真っ暗でゴーゴーと響き渡る音だけだったので、さぞかしびっくりしたことでしょう。幸いなことにいいお天気でした。

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中国語では、「徳天跨国大瀑布」といいます(ベトナム側では「バンゾックの滝」)。高さ80m、幅100mほどありますが、水量の少ない12月でこの景色ですから、夏季はどれほど迫力があるか想像に難くありません。滝の右側(手前側)は中国領、左側はベトナム領です。

後方の山がとがっていることにお気づきかと思いますが、ここはあのカルスト地形で有名な桂林と割合に近く、同じ広西チワン族自治区に属します。ちなみにチワン族は、中国最大の少数原住民族です。南寧から下ってくるバスの車窓の両側には、‶いつか写真で見たことがある″ような美しい田園風景がひろがります。

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最近の中国は、どこも観光産業が隆盛ですが、ここも一大観光地と化していました。次から次へと団体客がやって来ます。滝の下まで筏に乗って行くことができるので、私たちもさっそく乗りました。高校生だからと頑張って値切りましたが学割ナシでひとり500円は高い!中国の観光地は、だいたい学割があって半額くらい、公共の施設などは60歳以上はタダというところが多いのに、ここはもう他に選択肢はないので強気でした。

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*ネット上で凄い写真を見つけました。連日の大雨で川が泥水になり、‶黄金の滝″となっている珍しい写真です。しかし、こんな時でも船を出す人がいるんですねぇ。中国人民網より。

*YouTube に画像があったので貼り付けておきます。

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これは対岸のベトナム領。観光バスでやってくる中国側とは比べものになりませんが、やはり観光客がちらほら。この経済格差は一目瞭然です。中国側から筏が出ると、ベトナム側から小さな手こぎの筏(左側にかたまっている屋根のない筏)で、土産物を売りに来る人たちが近づいてきます。川の中央が国境線のはずですが、観光船も土産物売りも、もちろんそんなことはおかまいなしに行ったり来たりしています。

滝のまわりは遊歩道が整備されていて、いろいろな角度から見物することができますが、滝の裏側から15分ほど上流に向かって歩くと、ちょっと平坦な場所が広がっています。

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その広場の一方の側に、トタンやテント張りの土産物屋が軒を並べますが、売っているものは、中国人観光客目当てのベトナム土産で、商っているのはみなベトナム人です。

実は、ここはベトナムの領土で、つまり、観光客は、国境を跨いで行ったり来たりしながら買い物をし、ベトナム人も同じく国境を自由に跨いで荷下ろしなどをしているのです。

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この2枚の写真は、同じ碑の裏と表です。835というのが何を意味するのかわかりませんが、2001年に建てられた国境碑です。つまり、それまでは何もなかったということでしょうね。生徒たちはこの碑を挟んで両足を広げて写真を撮っていました。2つの国に同時に足跡をつけたことになります。

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店を出しているベトナム人は、この中国領土内の道を通って自分の家に帰ります。道路の左端のコンクリートの部分までが中国領、左側の草むらはベトナム領のようです。ちょうど通りがかったPolice が教えてくれました。

先回、私がひとりで来た時には、この道の奥から、バイクや自転車に米を積んだベトナム人がひんぱんにやって来ていました。そして広場の方では中国の小型トラックが待ち受け、中国人の男が目方を量って次々と買い取っていました。‶密貿易″ということでしょうね。中国はあれだけ広大な土地がありながら、米が足りないのです。米の密貿易は他の地区でも何度か見ました。

そして、ここからもっと奥に遡ってゆくと、川幅がどんどん狭くなり水量もなくなってガレ場のようになり、石の上をトントンと伝って容易に相互の領内に入ることができるようになります。

私が行った時、多分貝か何か、釣り竿はなかったので魚ではないと思うのですが、川の中を探して回っているベトナム人の2人組に出あいました。私はお得意の‶タバコ交流″を狙って、中国製の高級タバコを差し出したのですが、言葉がまったく通じなかったので(少しは中国語ができるかなと期待した)、これは‶あげ損″になってしまいましたが、彼らが自国領内にある石の上に並んで腰を下ろして、うまそうに吸っていた姿はちょっとほほえましかったです。

そこからもっと先へ行くと、銃を持った若いベトナムの国境警備兵がふたり小高い丘の上に座っていて、別に険悪な雰囲気はありませんでしたが、さすがに‶タバコ交流″は控えて引き返しました。写真は撮りました。以上は、先回来た時の話です。

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滝から車で10分ほど下流で、対岸のベトナムから、筏に乗って中国にやってくる人たちがいました。パスポートは?ビザは?

生徒たちにとって、これまで漠然と抱いていた“国境″のイメージは、おそらくは音立てて崩壊したのではないでしょうか?

この道をそのまま小型の乗り合いバスで下流に向かい、途中で乗り換えて7時間ほどで崇左市に到着。

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晩御飯は名物のせいろで蒸した麺。南の方に来ると、麺は小麦粉ではなく米になります。中華料理はこれが最後、みんなお腹いっぱい食べました。

今日は1日ハードなスケジュールでしたが、みなさんお疲れさまでした。そして明日は、いよいよ自分の足で、歩いて国境を越える日です。






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