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ひさびさのあれこれ その5-北杜市

高校時代の同級生、Yさんのお宅におじゃましました。北杜市(ほくとし)というのは、2004年に近隣の町村を統合してできた新しい市で、私などは、北巨摩郡(きたこまぐん)という呼び名がなつかしいです。南アルプス登山の基地となるところで、昔は赤石、甲斐駒、仙丈と何度か登ったものでした。振り返れば八ヶ岳連峰、場所を選べば雄大な富士山がど~~ん!と望める、山好きにはたまらないところです。

日本一高い所を走る小海線の小渕沢、清里は北杜市に位置します
松本からは、のんびり各駅で1時間半ほど。最寄り駅は長坂

考えてみれば、Yさんとは親族を除けば一番長い付き合いということになり、同年同姓ということもあって、じゃんじゃん話がはずみました。

昼ご飯はそうめん。何年ぶりだろう?5、6年ぶり?毎日食べると飽きる食べ物のトップ3に入るだろうけれど、ひさしぶりに食べたそうめんは、実に美味でした。で、そうめんもおいしかったけど、この自家製キュウリの糠漬けが絶品。

Yさんのお宅は専業農家で、最近こそ半分リタイア気味ですが、かつては何十種類かの野菜を毎日近隣のペンションに配達していて、もちろん同時に栽培にも追われてほんとうに忙しかったとか。

しかし最近は(コロナ以前から)、ペンションの数も減り、B&B形式を取るところが多くなったそうです。B&Bとは、Bed と Breakfast という意味で、つまり手のかかる夕食はもう用意しないという意味です。昔は、清里、野辺山のペンションというと、おしゃれなフランス料理かなんかでお客さんを呼んだものでしたが、時代も変わりましたね。

Yさんの家は山(というか、小高い丘程度)裾にあって、眼の前に田んぼがひろがり、その向こうに甲斐駒が見えます。残念ながら今回はその雄姿も雲の中にぼんやり輪郭がたどれる程度でしたが、あぁ、昔はあんなところまで登ったんだと、しばし感慨にふけりました。

田んぼ以外にも野菜栽培をしている圃場がけっこう多いのですが、ぶらぶら散歩していると、時々こんな標識に出くわします。やっぱりこの辺りは、シカやイノシシに農作物をやられてしまうんだそうです。トウモロコシ畑に賢いサルなど出ようものなら、もうその畑はあきらめるとか。

さて、晩御飯はナントカいう店で、この店の名物の海鮮丼。まさかこんな山の中でこんな豪華な海鮮丼が食せるとは意外や意外。ほんと、おいしかったです。それにしても、今回の帰国は、連日の“ご接待”で、1年分のごちそうをまとめて食べているようで、つまり、カンボジアに帰ってからの反動が恐いです。

で、この海鮮丼はもちろんですが、実はびっくりすることが他にもあったのです。

お酒のメニューを開いたら、その1番最初に、「七賢」という名前があったのですが、もちろん当地の酒です。私はこれを見て一瞬で思い出したことがありました。

今を去る30数年前、酒にうるさい女友だちが「七賢という酒がうまい」と盛んに言っていたのですが、当時は今ほど地方の酒が都会で手に入る時代ではなかったので、特にそれ以上の話題にもならずに終わりました。それが今、30年の時を経て突然目の前に出現しました。七賢は北杜市の酒だったのです。

私より少し若い、もの静かな女性でしたが、今頃はどこで何をしているのだろう?歳に似合わず、思いつめたような表情で、コップ酒をなめるような飲み方をしていたけれど、彼女にとってあの頃はきっと辛い時代だったのだろう、と、勝手な想像をしながら、私もようやく出会えた七賢を、なめるように味わってみました。

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