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白内障手術てんまつ記 3

*以降は、白内障手術とは直接関係ないです。

運転免許証更新

7月5日の術後検診までに免許証の更新だけはしておこうと、住民票が置いてある名古屋に向かいました。カンボジアの年1回(外国人のみ、カンボジア人は10年くらい有効)の運転免許証の更新には、自国の有効な免許証が必要なのです。私はまだ期限が来ているわけではないのですが、その頃には日本にいないという簡単な証明(パスポートのビザなど)があれば、期限前更新というのができます。

現在、高齢者(特に75歳以上の後期高齢者)の免許更新というのは、ものすごく煩雑になっており、講習以外に、認知機能検査とか夜間視力、動体視力検査、実技もあって、一般的には2日間かかりますが、私のような海外居住者は特例で、1日ですべてが終了しました。

夜間視力検査は驚異の結果で、なんと、30代の視力だそうで、検査官も首をひねっていました。Y眼科の技術が素晴らしかったということでしょうか?(後日医師に聞いたところによると、術後1週間くらいにピークをむかえ、その後少し落ちるそうです)。動体視力も50代、これで安心して夜間運転ができます。

おかしかったのは実技で、担当官が隣に乗って10分ほど走るのですが、最初は「あっ、もっとスピード落として…」「あっ、そこの障害物はもっと大きくよけて…」「あっ……」「あっ……」とうるさかったのですが、途中から静かになり、最後に「この先日本で運転する予定はありますか?」と聞いてきました。「ありません」と答えると、「こんな運転は日本では通用しないから、運転しないで下さい」といわれてしまいました。

私としては、右ハンドルで左側走行、慣れないセダン車で、慎重にゆっくりと運転したつもりだったのですが、″生き馬の目を抜く″彼の地で4年も運転してりゃ、もうカンボジアンスタイルがどうしようもなく染みついてしまってるんでしょうね。「とんでもないばあさんだ」とあきれられたようです。

帯状疱疹?

日本に到着以来、時々両腕に湿疹が出てものすごく痒かったのです。もともとアトピーは出るのですが、アトピーはだいたい身体の左右対称に出るものです。今回のは違う出方だし、小さな水疱がポツポツ。ネットの写真で見ると、帯状疱疹?て感じなのですが、痛みはそれほどありません。とにかく感染性があってはいけないので医者に行くことにしました。

予約したのは内科だったのですが、カンボジアから来たということが事前に告げてあるせいか、受付ですでにひいていて、あまり近づかないでください、というのがアリアリ。結局近所の皮膚科にまわされました。

ここでも別室診療ということになり、細胞を採って検査してもらったのですが、なんのことはない、単なる湿疹です、感染性はありませんということでステロイド剤が3本出ました。今回はこれで6つの医療機関をはしごしたことになります。ヤレヤレ………です。

なつめ

名古屋から松本に移動したのは、なつめに会うためです。預けてある(といっても、もちろんもうカンボジアに連れてゆくことはできません)Sさんの家がある穂高に向かいました。Sさんから、すでに老化が進行していることは聞いているので、これがなつめに会える最後だと思っています。

なつめは現在17歳。でも、この写真を見る限り、決して老犬には見えませんよね。しかし実際には確実に老いが進行しており、認知能力というものがほんとうに希薄になっているようです。まず、ほとんど眼が見えないようで、道を歩いていてもモノがよけられません。名前を呼んでもこちらを振り向くことはありません。Sさんがいうには、もうしっぽを振らなくなったそうです。しっぽを振らないということは、嬉しいとか楽しいとかいう感情を表現することがなく、近づいてくる人を認知することができないということでしょう。私のことも恐らくはわかっていなかったと思います。

Sさんの家の敷地は広いのですが、田舎なので塀や柵がなく、なつめはずっと部屋飼いです。なので、最近はおしっことうんこの我慢などできず、しょっちゅう部屋の中でするので、Sさんのご苦労も大変です。その上に1日中部屋の中を徘徊状態で、その足音が気になって眠れないのがSさんの悩みだとか。

ただ幸いなことに、辛そうな、どこかが痛そうな感じはまったくなく、食べることは大好きで、おやつはいつでもペロリとたいらげるそうです。まだフツーに歩けるようで、散歩にも出かけられます。なにより、私以上になつめに愛情をそそいで見守ってくれるSさんと一緒に、残された時間を穏やかに過ごすことができるなつめは、ほんとうに幸せ者です。

私が中学生くらいの時に、我が家で飼っていたペスという名の柴犬が、老齢のために、時々垂れ流し状態になったことがありました。ある時、母親が怒って庭にあった小さな箒でペスをたたいたことがあったのです。ちょうど私もその場に居合わせたのですが、もちろんそんなに力を入れて叩いたわけでもなく、母もちょっと虫の居所が悪かったのでしょう。

当時は、庭で鎖で繋いで飼っていたのですが、ペスはその夜自ら鎖をといて家を出て、2度と帰りませんでした。母は後年になるまで、ずっとそのことを後悔していましたが、死を予期して自ら身を処する野生動物がいるというのは決して珍しい話ではありません。ましてなつめは、中国黄土高原で産まれ育った″野生の子″です。

この話もSさんにして、見守りをお願いして、なつめに別れを告げました。「いよいよ最期になったらまた連絡するから飛んできてね」と言われたけれど、さすがにそれはないよ、と応えたのは7月2日。しかし、これを書いている今、自分はやっぱり飛んでくるんじゃないだろうか、と思い始めているのです。




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