新参者が得たヒアリング設計スキル
こんにちは。今年の8月に入社した
クラウドサイン事業部 ディレクターの古山です。
Web制作会社でフロントエンドエンジニアを担当した後、デジタルクリエイティブの会社でPMを担当していました。
「むむ、クラウドサインって何なん?」
はい。クラウドサインはクラウド上で完結する電子契約サービスでございます。その他に契約管理・契約書データ入力の自動化などのプロダクトもございます。詳細はこちらをご覧くださいませ!
クラウドサインは脱ハンコの流れを受け、機能開発をガシガシ進めて成長しています。それに伴い、サービス自体のお問い合わせも増え、CSを中心に取り組んでいますが、プロダクト側からアプローチできることもあると考えています。
その一つの取り組みとして、チャット対応を行うリレーションチームと連携し、サービスの体験向上に寄与していこうと考えています。
私は入社したばかりだったので、まずはリレーションチームにヒアリングを行い、業務内容の理解から始めました。
社内にヒアリング設計を得意とするデザイナーさんがいるので、一緒にヒアリング設計をして得たスキルをお届けしたいと思います!
※プロダクトのユーザーインタビューではありません
目的の整理
ヒアリングに限らず、「そもそも何でやるんやっけ?」って議論時々ありませんか? 恥ずかしながら私はあります。。
そうならないために、ヒアリングする目的・条件・不明点を洗い出しておきました。設計中迷走したときに、立ち返るポイントになりました。
1)ヒアリングの目的
クラウドサインのユーザー体験向上に寄与するために
チャットで顧客の声を聞くリレーションチームとより連携を強めていく。
チームの現状把握のために、ヒアリングを行う。
2)ヒアリング対象者
リレーションチームメンバー
3)ヒアリングのゴール
リレーションチームの業務内容を理解
リレーションチームが抱える課題を抽出
4)そのほか条件
- ヒアリングの時間:各30分
- ヒアリング後のネクストステップ:
チームリーダーに結果報告&今後の取り組み提案
ヒアリング対象の調査
相手のことを知らないと、何を質問すべきかわからない…
しょっぱなこの壁にぶち当たりました。
なので浅い質問で終わらないために、出来る限り事前調査をしました。
1)リレーションチームの役割
SaaSのビジネス理解のため、関連書籍、Web記事読みあさる。
(SaaSの事業会社初というのもあり、新しいことばかりで頭爆発)
- THE MODEL
- おもてなし幻想
- カスタマーサクセスがサクッとわかった気になるおすすめ情報まとめ(無料&書籍)
2)チーム遍歴
移動・合併・分離など、身近にいる人に聞いてみたり、組織図の履歴を漁る。
3)個人の取り組み
esa(社内で使っている情報共有サービス)、note、関わったプロジェクト議事録など、ざっと見る。
4)その他
入社自己紹介、Slackの文面 など
ちなみにクラウドサインはドキュメントを残す文化なので、中々はかどりました。
質問の発散&グルーピング
事前知識でパーソナルな情報が集まったところで、質問を考えました。
「何から聞こう?」は煮詰まりやすいので、質問の順番は後回し。
とにかく知りたいことを出すことから始めました。いわゆるKJ法ですね。
1)とにかく知りたいことを出す
2) 似た質問をグルーピング&タイトル付け
3) 俯瞰して足りない部分は 1、2 を繰り返して補う
抜け漏れ・偏りをなくすには、複数人で行うと良いです。
実際デザイナーさんに教えてもらいながら取り組んだので、幅広い質問が出せました。
質問の流れを作る
「なぁ、好きな人誰なん?」
知らない人に突然聞かれたらドン引きですよね。
ヒアリングも同じく、突然知りたいことだけ聞いても拒否反応が出るはずです。そんな失敗をしないために、グルーピングのタイトルを使って流れを作りました。意識したことはこんな感じです。
1)ラポール形成する
さっきの「なぁ、好きな人誰なん?」の例えのように、本質を引き出すためには関係性の構築(ラポール形成)が必要。
なので、前半は特に丁寧なコミュニケーションをとることが大切。
2)ラポール形成のためにペーシング→リーディングを行う
相手の話を聞く&同意して関係性を構築(ペーシング)し、ラポール形成されれば、こちらが手動するコミュニケーション(リーディング)を行う。
経験談としてペーシングは、相手がポジティブになる会話を心がけるといい。
3)細かい質問内容は思考の流れを意識する
例えば突然50年後のことを考えるよりも、今、1年後、5年後、10年後…のように、時系列に考えると発想しやすいように、質問の順番を考える。
ヒアリングシート作成
流れができたら、順番どおりに質問をリスト化しました。
全部聞けたら最高よな。でも残念時間という縛りがあるんや。。
ということで、質問の取捨選択を行っていきました。
自己流もありますが、やったことはこんな感じです。
1)グルーピングごとに時間配分
タイトル付けしたグルーピングごとに、時間配分を行う。聞きたいグルーピングを優先して、ラポール形成までの時間を疎かにしないよう注意。
2)優先度付けの “聞きやすさ” “質問の重要度”スコア設定
(時間がかかる&自己流です・・・)
優先度をつける際に、質問内容を俯瞰できるよう2軸でスコアを設定。
聞きやすくて重要度も高い質問を組み込むようにした。
※絶対聞くべき質問はこの通りではない
質問の再整理
よっしゃー!シートできた!設計終わった!
って案外ならないんですよね。質問こっちのが良さげ〜みたいな。
なので最後に抜け漏れ確認がてら、色々やりました。
1)(脳内)ロールプレイングを行う
当日の会話を妄想しながら、シートを眺めてみる。
- 「こうだろう」と決めつけた質問がないか
- 追加で知りたいことがないか
と感じたら、再考する。
脳内で一人完結しても十分洗い出せました。
2)実際に声に出す
馴染みのないことががあると、結構話しにくいと感じる。
自分の言葉にするためにも、役者気分で話してみる。
ちょっぴり恥ずかしいのでこっそりやりました。
3)言い回しを考える
質問を淡々と話すと、尋問のように感じるかもしれないので、気持ちよく話してもらえる言い方を考えた。
4)相手が煮詰まった時に補助する質問を準備する
聞きやすさのスコアが低い質問は、抽象度が高い or 細かすぎて答え方に困る可能性があるので、導ける質問を準備しておく(誘導しすぎないよう注意)
例:(粒度粗)好きな食べ物はなんですか
(粒度中)甘い食べ物で何が好きですか
(粒度細)コンビニで手に入るスイーツで何が好きですか
ヒアリング当日
いよいよヒアリング設計のパフォーマンスを発揮する時です。
ヒアリングに集中するために、同席してもらった方に協力してもらいました。(ぶっちゃけ自分だけで完結できる自信がない)
1)タイムマネジメント
ストップウォッチアプリなど利用して、時間配分から大きく外れないように意識。
2)議事録
ヒアリング本人が気づかないポイントも見てもらえるので、同席者にお願いできると◎ 対面でヒアリングを行う場合、“調査されている感”がでないようタイピングしすぎ(タイプ音)に注意。
3)録画・録音
相手の了承を得れるなら、やっておくとベター
ヒアリング中には気づかない内容や、声色・表情から読み取れる。
ヒアリング設計をして良かったこと
いつもなんとなくでこなしていたヒアリング。
今回教えてもらいながらやったことで、かなり得たものが多かったです。
- 得られる情報量が増える
相手の状況を知った上でヒアリングを行うので、話の理解力UP&会話の深度が深くなると実感しました。質問も抜け漏れなく出しておくので、重要なことをしっかり聞くことができました。
- ヒアリング中にお互いの距離が近くなる
ラポール形成を目指してコミュニケーションをとるので、後半は比較的オープンに話してもらえてたと実感。これからお付き合いする相手であれば、今後の関係性もよくなると思いました。
- 当日の自信に繋がる
準備をしっかり行っているので、漠然とした不安というのはなくなりました。
成長できたこと
- 設計〜ヒアリングの実践経験
新しい環境でヒアリングを行ったので、社内だからと妥協せず全体のフローを経験できました。また作業を切り分ければ、別業務・日常でも生かせると感じています。
- ヒアリングで得る情報の重要さ
いわゆるアンケートシートでは得られない、会話から発展した内容。そしてパーソナルな情報(性格等)と照らし合わせてこそ知れる情報があると感じました。
失敗したこと
初心者らしく、反省点は山ほどあります。。
パーソナルすぎる反省はさておき、特に大きかったことは2つあります。
- ラポール形成までのコミュニケーションを丁寧に行う
ヒアリング前半で会話がそこまで弾まなかった時に、質問を駆け足で進めてしまって反省。。時間に余裕があるなら、話が少し脱線してもラポール形成を丁寧に行ったほうが、深いコミュニケーションが取れると思いました。
- ヒアリング中は会話に集中する
「自然な質問の流れ」を考えすぎたゆえに、動画を見返すと不自然な会話に感じたところがありました。。作ったシナリオ通りにはもちろんならないので、質問の引き出しとマストで確認することを頭にいれて、成り行きに任せたほうがいいと反省しました。
- 会話内容をそのまま受け止めない
違和感なく聞き入れていたことも、議事録などで客観的に見返すと、解釈がずれていたことがありました。
ヒアリング中は自分の気分も高揚していたので、客観視する時間は必ずとろうと思いました。。本当は冷静にヒアリングできたらいいんだろうけど…
おわり
今回のヒアリングで、目線を合わせてリレーションチームとコミュニケーションが取れるようになりました。これからクラウドサインのユーザー体験向上に寄与できるよう頑張っていきます。
今後とも、クラウドサインをよろしくお願いいたします!
お ま け ♡
最後に勉強する中で知ったテクニック・用語をご紹介します。
- ラポール形成
“相手を信頼して打ち解けた状態”
引用:ラポール形成とは?営業・看護・保育・福祉・恋愛でも使えるラポール形成の意味やメリット・テクニック | あしたの人事オンライン
- ペーシング・リーディング
ペーシング:ラポール形成のために話し方やリズムを合わせて、信頼関係の形成をすること
リーディング:ラポール形成後、自分の会話にリードしていくこと
参考:ペーシングとリーディング
- ミラーリング
“相手のしぐさや言動・行動などを鏡のようにして真似をすることにより、相手に好意や親近感を抱かせる心理テクニック”
引用:ミラーリングとは
- キャリブレーション
“人が無意識の内に行っているわずかな動作や変化を観察し、相手の心理状態を言葉以外から見抜く”
引用:キャリブレーションとは | ビジネス・心理学用語集:意味・解説など | ビジネス心理学
- バックトラッキング
日本語で「オウム返し」と呼ばれる、相手の言ったことを返すこと
バックトラッキングの目的は、相手の話をちゃんと聞いていることを示すことと、相手に自分が発した言葉を再認識してもらうこと”
引用:バックトラッキング:NLP用語集/NLP 日本NLP協会 公式サイト・神経言語プログラミング
- クローズドクエスチョン・オープンクエスチョン
クローズドクエスチョン:“「はい、いいえ」の二者択一や「AorBorC」の三者択一などで答えられるような、回答範囲を狭く限定した質問”
オープンクエスチョン:“手が答える範囲に制約を設けず、自由に答えてもらうような質問の仕方”
引用:オープン・クエスチョンとクローズド・クエスチョンを理解して、商談をスムーズに進めよう! | Urumo!
- インタビューとヒアリングの違い
インタビュー:“二人かそれ以上の間での会話で、一方が他方に質問をして情報を得るために行われるもの”
ヒアリング:“目的に対する内容を相手から聞き出し、明らかにするための手法”
引用:インタビュー - Wikipedia
インタビューとヒアリングの違いとは?業務による使用事例
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