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桜の咲くスピードで好きになって、

桜は散り際こそ美しい。風に吹かれて散る桜も綺麗だが、雨で散る桜もいとをかし。さらに水面に浮かび、漂い流れていく姿も心が惹かれる。この花びらが水面に連なり流れていく様子は、花筏と呼ぶそうだ。

桜に限らず、花の一生は恋心と似ている。気づいたら芽が出て、心に根を張って、ふとかけられた嬉しい言葉やふたりだけの秘密を栄養に、想いが育っていく。蕾になる頃には、好きかもしれないとむず痒くなり、眠れない夜を過ごす。気持ちを吐き出し楽になってしまいたいとも思う。不安を固く溜めた蕾が開きかけると、途端に良い香りを放ち鮮やかな色をみせる。想い人に好きだと告げる前の女性は、驚くほど可愛い。実を結べばハッピーで終わるのだけれども、そう上手くはいかないこともある。その場合、恋は散ってしまう。散ってしまった花びらは、涙と共に流れていく。

花の散り際に流れる涙は、とても美しい。桜に散る雨や、稀に見る雪は時の流れと積み重ねを感じさせる。咲くまでにたくさんの栄養と光を浴びるように、時間と想い、言葉の積み重なりで蕾は固まる。そして、溜めに溜めた言葉と想いは花開く。

恋も、愛も、散り際こそ美しい。いや、美しくなれる。美しくなければ、その恋愛は何のためにあったのだろうか。咲く姿はもちろん可愛らしいが、散るまでに得た総てとの向き合い方が、散る姿に表れる。

散り際こそ美しいとは言っても、やはり咲き誇る花は綺麗だ。お花見をするにしても、散る頃ではなく満開の時期に多く行うことから、やはり花は満開の方が嬉しい。恋とか愛とかは、叶った方が幸せで、幸せだから美しくなれるのだとも思う。

どうか、すべての恋心が咲きますように。
花泳ぐ夜に願った。

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