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【香川#2】 軽トラが壊れれば、花農家に出会える

「風が吹けば、桶屋が儲かる」ということわざがあります。

意味を検索してみると、

「何か事が起きると巡り巡って思いがけない意外なところにも影響が出ること。」

と、結果が出ました。

なるほど。まるで我が人生を体現したような言葉です。

海上保安官を目指して、瀬戸内海に浮かぶ保安船を眺めた高校2年生の夏。
それから約10年後、男は家無し花屋となり、同じ瀬戸内海を見つめている。
きっと、当時の私にも風が吹き、巡り巡って現在の私を形成したのであろう。やれやれ、人生とは解らぬものだなあ。

と、浅はかな人生無常話は早急に隅に置いて、
今回は読者の方々に、香川で起きた奇妙な話をお伝えしたいと思います。

題して、「風が吹けば、桶屋が儲かる」ならぬ、

「軽トラが壊れれば、花農家と出会える」


ヒッチハイクで香川県に到着した翌日、私は滞在先の「さぬきベース」にある軽トラックに乗って高松市内にやってきました。さぬきベースとは、讃岐津田を拠点に香川で活躍している何でも屋集団です。彼らの拠点に長期滞在することになり、車を使っていない日は貸していただくことになりました。

余談ですが、私はマニュアル車が運転できます。
就職先は東京だろうから運転免許は必要ないな、と鷹をくぐっていた大学時代。蓋を開けてみれば、最初の仕事は宮城県で魚屋さん。社会に出たらマニュアル運転免許が必要なことが発覚し、卒業ギリギリのタイミングで駆け込むように教習所に通いました。見通しの甘さは、相変わらずです。

さて、軽トラックを運転した理由は、さぬきベースのメンバーの一人(運転免許無しの方)が警察署に落とし物を取りに行くので連れて行って欲しいと依頼されたからです。快く承諾し、クラッチを効かせてギアチェンジを繰り返す。1時間ほどで目的地の警察署に到着しました。

無事に落とし物を回収し、車に乗り込み、いざ発進。
おや?エンジンがかかりません。

鍵を回しても「ギャギャギャ」と明らかに異常をきたした乾いた音が車内に響く。これは間違いない、バッテリー切れです。

バッテリー切れを起こした車を復活させるためには、異常がない車をもう一台用意し、電線で繋ぎ、バッテリーの充電を分けてもらう「バッテリージャンプ」という手段を用います。ここは警察署の駐車場。とすれば、頼める方々は警察官。

「ごめんなさい、駐車場でバッテリー切れを起こしたので助けてください」

かくして、香川県警の方々が駐車場に集結し、軽トラックの救出が始まりました。

そして、無事にエンジンがかかるようになりました。お礼を言って駐車場を後にする。人に助けてもらってばかりの人生です。

何はともあれ車が復活したので家に戻れることになりました。時刻は気づけば21時を回っており、少し眠気が誘ってきます、すると、悲劇が起こりました。

赤信号で停車すると、道路上で突然エンジンが切れました。急いでエンジンを付け直しても、再び乾いた音がするだけです。後続車からはクラクションが。急いで車を降り、「ごめんなさい!!車が動かないので先に行ってください!!!!」と路上で大声を出して謝罪しました。

すると、「それは大変や!!」と後続車の運転手が車を停めて駆け寄ってくださり、現場を見ていた歩行者も駆けつけて、軽トラックを総出で押して端に寄せるという事態が発生しました。

恥ずかしさなんてありません。あるのは、早く移動させなきゃという焦燥感と、ご迷惑をかけてしまった申し訳なさです。

なんとか道路の邪魔にならない場所まで移動することができました。香川県民の方々の優しさを目一杯に感じ、ひとときの安堵をした後、助けてくれた方々にお礼を言って解散しました。そして、ロードサービスに連絡をしました。

担当者が現場に到着したのは23時ごろ。すると、眠さと疲労でフラフラな私を追撃するような説明が始まりました。

「完全にバッテリーがぶっ壊れてますね」

車は動かないし、レッカーで家まで車を運ぶと総額5万円ほど費用がかかるらしいです。その事実を知った瞬間に、一旦現実逃避をしたい念に駆られ、「すみません、今は冷静に物事を判断できないので、近くのコインパーキングまで運んでください。それからどうするかは明日考えます」と担当者に伝えました。

運んでもらった後は、さぬきベースの車の持ち主(以下、Kさん)に車のこと説明をし、走って終電に駆け込んだ後、電車の中で泥のように眠りました。

「初めからうまくいき過ぎてるから、後々怖いっすね」

昨日かけられた言葉が、脳内に響き渡りました。

翌日、車屋さんに相談すると、充電満タンのバッテリーを付け替えれば1時間くらいは走れると解決策を教えてもらいました。この話を受けて私はKさんと一緒にバッテリーを持って軽トラックの元へ。付け替えると、エンジンが無事にかかりました。

「軽トラックが走った・・・!」

ハイジが立ち上がった時のクララはこんな気持ちだったのでしょうか。私たちは歓喜に包まれながら、車を走らせました。存分に浮かれていたので、途中に定食屋を見つけると、「軽トラ復活を祝して腹ごしらえだ!」と謳って車を停めてエンジンを切りました。察しの良い方はお気づきかもしれませんが、定食を食べた後に車に戻ると、軽トラックは聞き慣れたくない乾いた音を響かせながら、バッテリー切れを起こしていました。おそらく、知らず知らずのうちに放電してしまっていたのでしょう。私は、愚か者です。

そんな未来が待っているとは知らず、私たちは食堂で美味しい網焼きの魚とホカホカのご飯を注文し、席に向かいました。すると、Kさんが「あ、、!お久しぶりです!」と声を発しました。視線の先にはとあるファミリーが。Kさんが挨拶をした方は、「麦縄の里」という素麺屋を含むおしゃれな複合施設を営む代表のMさん。偶然にもKさんとMさんは再会を果たし、私を「旅する花屋」と紹介していただきました。

「生産者と会いたいんです」と伝えると、「花農家さん知っているから紹介するよ!」と提案していただきました。何たる偶然、何たる幸運。軽トラックが壊れてたまたま入った食堂で、花農家さんを紹介していただくことになりました。

歓喜もつかの間、定食屋を後にし、駐車場や道の駅でバッテリージャンプを繰り返しながら命辛々帰宅した後は気絶するように眠り、翌朝鳥の鳴き声と眩い太陽の光に起こされました。枕元には、飼っている黒猫が一緒に布団で眠っていました。幸せすぎて、軽トラが壊れたことなんてどうでも良くなりました。

さて、後日に麦縄の里を訪れた私は、Mさんと再会しました。施設を案内していただくと、複数の飲食店が営業しており、その店主たちは皆私と同世代であることがわかりました。ヴィーガンのハンバーガーやプリン、おにぎりにカヌレにコーヒー。歳の近い若者が自分の考えを形にして商売をしている。私も負けてはいられません。上質な刺激を頂苦ことができました。

その後、Mさんに連れられて花農家さんに会いに行くことになりました。Iさんという方です。現地に到着して驚いたのですが、規模が半端じゃなく大きい。東京ドームくらいの総面積の土地にビニールハウスが並んでいて、ハウス間の移動にスタッフは電動キックボードを使ったりしていました。私は馬鹿の一つ覚えのように「すげえ・でけえ・やべえ」の若者言葉を乱用し、語彙力を崩壊させました。それくらい感動的だったのです。さらに、私が目指す花束のスタイルは「自然をそのまま切り取ったような、多品目のグリーンが含まれた花束」なのですが、ここの農場は花はもちろんのこと、多種多様なグリーンを中心に生産していました。タラスピやベビーハンズ、みんな大好き利休草などなど。いやー、楽しい。普段より声のトーンが上がります。

そんな想いが伝わったのか、Iさんとも終始笑顔で話すことができました。すると、「花農家も市場の人も紹介したるわ!」「俺の名前出せば大体いける」と言ってくださりました。実際、「Iさんの紹介で来ました」といえば「あー!そうなんだね!ようこそ!」と言ってもらえます。Iさんの人格者ぶりというか顔の広さというか、とにかく影響力が強い。頼もしい方と知り合うことができました。

さて、私は「旅と花束」を通して体現したい想いがあります。

それは、「花を通して人と出会いたい」ということ。そして、出会った人から頂いた花で花束を作りたいということ。

故に、今回のイベントで出店する花屋で扱う商品はオール香川で仕入れたいと考えていました。その想いを伝えると、なんと次は花市場の方を紹介していただけることに。市場での仕入れは権利がいるので難しいかなと考えていましたが、もし話を聞いて協力してもらえるなら百人力です。瀬戸内海の風が、私を面白い未来に連れて行ってくれる予感がします。

次回
「オール香川の流通ルート確立」

お楽しみに!

【イベント情報】
4/8.9に香川県さぬき市讃岐津田にて開催される「成りの音」というイベントに出店します!詳細はインスタグラ厶にて。


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