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人生ソングなんて大したものではないけど


人生ソング、という単語を聞くたびに、なんだよそれってなる。

「自分の人生の成分がつまった曲」「人生に必要不可欠な音楽」とか、たしかにあるんだけど、でもこの1曲がわたしの人生です!なんて大それたこと、言えない。

というわけでプレイリストにまとめてみた。そのときそのときの人生で、私に様々な道を見せてくれたいとおしい音楽たち、です。




1.「普通の顔」/ 村松崇継

映画『思い出のマーニー』のサウンドトラックより。一番最初に流れる音楽。
普通の顔、という言葉にいつもどきっとする。『想い出のマーニー』のサントラはどれも静謐で、美しく、心のやわらかいところにいとも簡単に侵入してくる。
そんな音楽を最初に持っていきたかった。だからプレイリストの1曲目はこの曲です。


2. mercy / Daoko

色々としんどくて何もかもを放り出して休んでいたときに聴いていた曲。どうにか出口が見えてきた頃、サンライズ出雲に乗って一人で出雲大社に行った。5月の出雲大社に差し込む昼過ぎの光がまぶしかったことを時々思い出す。
「泣いて寝てまた残るのはあの楽しい感覚と光だけ」


3. パレードが続くなら / YUKI

人生って感じする。YUKIの音楽はどれも人生って曲ばかりだけど、このプレイリストをつくった時点での私のYUKI的人生ソングはこれなのかも。パレードというのがまさに人生で、人生はパレードのように続いていく。「あなた」という思い出を途中に挟みながら。
「愛しい思い出を繋ぎ合わせたい あなたにあげたい(少しの補正それも自由)」
「大丈夫さ 大丈夫さ」
「今日も沢山良いことがあなたに有りますように 聞こえる誰かの祈り」


4. reflexion, allegretto, you / 牛尾 憲輔

映画『リズと青い鳥』のサウンドトラックより。ティザーの冒頭でも使われていた曲。
触れたら壊れてしまう砂糖菓子のような音楽って存在したんだ、とびっくりする。目を離したらそこから消えてしまうような、風に乗ってどこかに飛んで行ってしまうような儚さ。夢のような、もう戻れない一瞬の光。


5. I See You / Prisiclla Ahn

どうにもゆかなくなったときはこの曲の「it's alright」に助けてもらう。
「It's alright if you need some time
 It's alright if you wanna cry
 It's alright if you want to be loved」
ここの畳みかけのあたたかさに毎度泣いてしまう だいすき


6. 瞳を閉じて / 荒井由実

祖父母の家に行くのに車で2~3時間ほどかかるのだが、幼い頃その車移動で耳にするのは大抵ユーミンの音楽だった気がする。だからユーミンの曲はなんとなくどれもなつかしい。
小学校高学年の頃、その「なつかしさ」に触れたくて、当時買ってもらったipodにユーミンのアルバムを入れた。そのなかでもとりわけなつかしかったのがこの曲だった。
いつか、手紙を入れたガラスびんをもって、海に流してみたいものですね。


7. Ballet Mecanique / 坂本龍一

坂本龍一、という名前を知る前から戦場のメリークリスマスをなぜか知っていて、だから車のなかで戦場のメリークリスマスを聴いたときは「ああ、知ってる」と思ったものだった。これも小学校高学年の頃かな。
衝撃的だったのは戦メリの次に聴いた曲で、それこそ稲妻に打たれたように(笑)衝撃を受けた。いや、Ballet Mecaniqueではなく「DEAR LIZ」という曲なんですけど。
とにかくこの曲に出会えたことは本当に私の人生を変えて、ピアノのレッスンは大嫌いなのに夢中で楽譜を読み漁った。親から借りたCDを聴いて、気になる曲があれば楽譜をかじって。自分から進んで弾いた曲って坂本龍一の曲しかないんじゃないかな、ってくらい。
クラシック音楽のおもしろさが全然わからない私にとって、坂本龍一の音楽から聴こえる和声やリズムはどれも新鮮で、CDでは綺麗な響きなのに譜読みをすると「本当にこの和音で合ってる?!」ってくらい音がぶつかりあって、なのに曲の流れで弾くと美しく聴こえる。五線譜からは時に小節の区切り線が消えて、どこまでも自由に、音楽を味わうことのできた作家だった。やべーわたし坂本龍一大好きじゃん。
そんなに好きならはじまりの「DEAR LIZ」を選べばいいのに……。「人生」って考えたらBallet Mecaniqueの方がしっくりときた。淡々と進む感じ、やさしさ、やわらかさ。(ドラマ「ケイゾク」を見たので中谷美紀バージョンも好きです)


8. ずっとそばに / Cö shu Nie

プレイリスト第2章みたいな分け方。これはけっこう概念推しソング。痛みとか、よろこびとか、切なさとか、その配分がぴったりと当てはまる。
「あなたに会えた今へと繋がるならすべて赦せたの」
「あなたが残した光でここまで歩んでこれたんだよ」
あと、「あなたの好きなものでテーブルをいっぱいにするの」ってセンイルみたいでいいよねって聴くたびに思う


9. はるのはるか / sasakure.UK

人生……。


浸ってしまった。sasakure.UKもそれこそ私にとっての人生作家なのだが、何か選ぶとしたらこの曲だった。好きな曲だったらたくさんあるのに……!
1番サビが終わったあとの間奏で、公園や校庭で聞こえるような子供の笑い声、雑踏が聞こえるところが好き。私のからだはすっかり大人になってしまったけれど、このときは子どもの気持ちに戻れる、不思議と。
「はるのはるか彼方の夢に願いを馳せて今日も風に乗せる調べ」←これ、メロディーにのって聴くと全然印象が違うのでぜひ音源を聴いてーー泣


10. ピアノ協奏曲第2番第1楽章 / ラフマニノフ

生まれてはじめて最初から最後まで飽きずに聴けたクラシック曲かもしれない。
父がクラシック好きなので、テレビで「題名のない音楽会」やらN響コンサートやらを横目に流し聞きすることは多かった。比較的クラシックというものに触れている子どもだった、と思う……。が、クラシック音楽を心の底から「綺麗だ」と思ったことがあまりなかった。
曲が長くてつまらない。こういうものを綺麗だと思え、と強制されている感じがする。いまでこそショパンの音楽の美しさはわかるけど、小さい頃はあの「いかにも」な感じが、嫌で……
この曲を知ったのはたしかドラマ「のだめカンタービレ」で、終盤の行進曲っぽくなる盛り上がりのところがかっこいいな~と思っていた。次に出会ったのはソチオリンピックの浅田真央さんの演技で、このとき初めて「この曲をフルで聴いてみたい!」と思い、父からCDを借りた。
最初から最後まで飽きずに聴けたときは本当にびっくりした。いまでも、「美しい」とはここに詰まっていると思う。もの悲しげな音楽にほんの少しだけ垣間見える希望のような。泥のなかでもがいているときに射しこまれる光、みたいな。
そいえば初めて自分から進んで行きたいと思ったクラシックコンサートもこれだったな。高校生のときN響の演奏会に行きました。あと音盤聴き比べもこの曲で面白さを知った。いやあ、人生だ。


11. いのちの名前 / 木村弓

お友達がジブリ好きなので、CDの貸し借りをしていたときにこれが入っていた。
なんかもう語ることない。歌詞のひとつひとつ、単語の並びと、それに呼応するメロディーがすべて美しい。人生を過ごすなかで「帰る場所」としてのなつかしさを、いつまでもこの曲に託したい。そんなかんじです。


12. 桜流し / 宇多田ヒカル

何を隠そう2022年にApple Musicで1番多く再生したのはこの曲だった。
SEVENTEENと出会った2022年、たった数ヶ月の期間なのに再生ランキングにはSEVENTEENの楽曲ばかりが並んでいたのだが、それらを抑えて1位になったのがこの曲だった。

もともと、何年も前にある人からおすすめされて、好きだなあと思っていた。この曲が特別になったのは、他でもないとある「推し」が、この曲で演技するのを見せてくれたからだ。
その「推し」はYouTubeで検索をかけてもほとんど動画がヒットしないような、そんな方だった。動画にも残らないその演技を、たった1回しか見ていないその演技を、それを見れた嬉しさがずっと頭から離れなくて、何度も何度も再生した。桜流しの亡霊だった。
セブチにハマっても、結局2022年に1番再生したのはこの桜流しだった。もうファンとは言えないけれど、その方のスケート人生がよい道に進むよう、ささやかながら祈っております。


13. 星をのんだ少年 / 久石譲

「ハウルの動く城」のサウンドトラックです。冒頭のフリューゲルホルンの無伴奏ソロ、美しいね。だいすきだ。

フリューゲルホルンはホルンと言ってもトランペットの仲間に近くて、これを高校の吹奏楽部で演奏したとき、フリューゲルホルン代わりにトランペットでソロを吹いたのは、わたしでなくとびきり上手い2個上のOGの先輩だった。
あの頃のわたしはとにかくスランプだった。トランペットを吹くのが苦しかった。ひたすらに。
先輩のソロを聞きながら、どうして自分はこの音を出せないんだろうと考えては、苦しくなって考えるのをやめた。
3:38からの金管楽器のコラールのパートが好きだ。上手い人たちに囲まれて、自分でもなんとかこの響きをつくれている実感を持てた。

ハウルのサントラはとにかくオーケストラ!!という感じでどれも美しい。本当は「サリマンの魔法陣~城への帰還~」がいちばん好き。久石譲のおどろおどろしい音楽だいすき(泣)


14. Fine On The Outside / Priscilla Ahn

「私が死んだら泣いてくれる?私の顔を思い出してくれる?」って感傷的に考えてしまう夜、たしかにあったんだよなあ。これはそんな夜を過ごしたことのある人たちのための歌です。


15. あたしの向こう / aiko

それこそaikoの人生ソングなんていくらでもあるはずなのに・・・ッ

aikoの描く「あたしとあなた」は別に常に対人間、でなくてもいいなあ、何にでも置き換えられる関係性だな、と思っていて、あるときこの曲は「私とトランペット」のことを写し出してくれました。もうだめだ、ってわかってて、わかってるんだけど諦めきれなかったんだよなあ。きっと今はまた別の「あたしとあなた」の関係性を、投影してくれるはず。さよならだけが人生だ、って井伏鱒二も言ってたし。
「さよならなのはわかっていたけれど知らないままであがいてみたんだ」
「さよならなのはわかっていたけれどわからない振りをしていたんだ」
↑この2つの微妙な違い、大好き


16. Beautiful / SEVENTEEN

My life is so beautiful……って「実感」を持てたのはSEVENTEENのおかげなので。多くの言葉はいらない。


17.God of Music / SEVENTEEN

この曲が「人生ソング」として最後に来たことにびっくりしている。でも、辿ってみるとこれしかない、の気持ちもあり。

音楽、って、希望だけじゃなかった。呪いだった。

ピアノも、吹奏楽も、トランペットも。愛憎。愛おしいのに恨めしい。
習わされたピアノ。「あなたが習いたいと言った」って、わたしはただお兄ちゃんと同じ習い事がしたかっただけだった。気づいたら私だけがレッスンに通っていた。辞めたかった、辞めたいって言ったら怒られた、それでもピアノを弾いたときにすごいって言われる感覚は、まんざらでもなくて、ただ速く指を動かせる機械みたいになっていって、表現したいこともないからコンクールは入賞を逃し続けた。坂本龍一の曲を譜読みしているときは楽しくて、なんか気づいたら吹奏楽始めてて、トランペットに夢中になって、努力して、誰よりも上手くなりたくて、高校に入ったら広い世界に打ちのめされて、基礎もままならなくなって、それでもしがみついて、しがみつけなくなっていって、朝が怖くなって、練習をさぼって、それですべてを諦めて。結局トラウマがのこっていよいよだめになりそうな瞬間もあった。さかのぼればさかのぼるほど、音楽をやってたときの苦しさが根っこにあった。

こんなにも呪いとしてわたしのなかに記憶が刻まれているのに、音楽を肌で感じたときの楽しさや、体でビートを刻むときの高揚感を、わたしはちゃんと知っている。

楽典とか、和声とか、よくわからないけど、ただ音を奏でただけで音楽は発生するものであり、「音」が「音楽」になった瞬間に人は踊りたくなったりする。机をポン、と1回たたくだけだとそれはただの「音」だけど、タッタタタン、と何回かたたいてみれば何かのリズムになる、みたいな。ドラムのリズムを聴けば心が躍る。ギターの音を聴けばかっこいい!と思う。ベースラインの動きで音楽の揺れ動きを感じる。全部が全部、楽しいこと。

そういう意味で、SEVENTEENのGod of Musicは最高の音楽賛歌だ。


「言葉が通じなくても、音楽があれば僕たちは今から大の親友さ」
「君と僕は面識がなくても踊れるんだ」
「音程をひとつひとつ重ねてみよう」「歌って踊ろう、気分は最高」


難しいことは何もわからなくても、これを聴くだけで楽しくなる。歌って踊ろう、音楽とは楽しいものなのだから、ということを身を持って実感できる。

音楽が呪いだけのものだったら、人生を彩ってくれる曲としてこんなたくさんのものを挙げない。楽しかったことばかりとは言わない、私にとって音楽は呪いの一面も持っているけど、でもGod of Musicを聴くときは、溢れるばかりの幸せを感じられる。

どこまでもシンプル。どこまでもまっすぐ。でも、この単純なことに気づくのって思っているよりも難しい。My life is so beautifulなことも、「음악은 우리의 숨이니까 위험하지 않아 계속 들이키자」も、SEVENTEENのおかげで到達できた気持ちだ。この世界に音楽の神(SEVENTEEN)がいるなら、ありがとうと抱きしめたい――