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【silent】第1話 こまかすぎるあらすじ&感想

昨年2022年10月期に放送され、社会現象にもなったドラマ「silent」。
ドラマ大好きな私はもちろん当時も見ていましたし、何度も録画も見ましたし、シナリオブックも購入し、ついには円盤も購入してしまいました。
1年が経ち、Blu-rayでディレクターズカット版を観直しているのですが、本当に大好きな作品です。
あらためてまとめを書いていこうと思います。



●「silent」概要

公式サイト

放送時期、キャスト、スタッフ

【放送時期】2022年10月期 フジテレビ 木曜22時
【キャスト】青羽紬役…川口春奈さん、佐倉想役…目黒蓮さん(SnowMan)、戸川湊斗役…鈴鹿央士さん、桃野奈々役…夏帆さん、佐倉律子役…篠原涼子さん 他
【脚本】生方美久さん
【プロデュース】村瀬健さん
【演出】風間太樹さん、高野舞さん

●「silent」第1話

1-1. 雪の降る朝

紬、高校時代の回想シーン。雪が降る朝、駅で想と待ち合わせ。
-紬「おはよう。」
-想「おはよう。」
-紬「雪だね。」
-想「雪だね。」

雪が降り、積もることを期待して嬉しそうに話す紬。笑顔で話を聞く想。
-紬「静かだねぇ。雪降ると静かだよね。ね、静かだよね。」
-想「うるさい。」
-紬「ん?」
-想「青羽の声、うるさい。」
-紬「佐倉くん、静かだねー!」
-想「うるさい。」
笑い合う二人。静かに降る雪。

はぁ。もう。オープニングのこのシーンから紬と想の二人が愛おしすぎて泣けるんですけど(涙)
このシーンはなんといっても紬のことを愛おしそうに見つめる想くんの表情が良すぎて良すぎて良すぎました。
紬の顔を見つめ過ぎて足元を見ずにスムーズに階段を下りる想くんが何気にすごいです。このシーンで私は既に想くんに、なんなら目黒くんにとっくに恋をしていたと思います。
紬も想も、お互いのことが本当に好きなんだなぁ。
初々しい若さ特有のときめきが感じられる可愛いシーンで大好きです。

ドラマのタイトルである「サイレント」を表現する時に想くんがする手話って、「雪が静か」という手話をしますよね。
物語自体や予告映像でも「雪」が印象的に使われていますが、雪が降った時の静けさ。しーんとして、音が無くて、でもどこかあたたかくて、そんなイメージが作品ともマッチしていて、とても素敵だなと思いました。


1-2. 雨の降る朝

現在のシーン。雨の降る朝、目覚める紬。隣には湊斗。
雨の音に「うるさい」と顔をしかめながら呟き、窓のカーテンを引く紬。
雨が上がった朝、慣れた様子で紬の家から出勤する湊斗。
帰宅した紬の弟・光。

ひとつ前のシーンの雪の静けさと、このシーンの雨のうるささ。
ひとつ前のシーンの愛に溢れた「うるさい」と、このシーンの鬱陶しそうな「うるさい」。
この対比がなんとなく不穏な気配を感じさせ、現在隣にいるのが想ではなく湊斗であることからも、何が起きたのかと視聴者がつい気になってしまうシーンでした。


1-3. 佐倉くん

紬のアルバイト先のタワーレコード。フリーターの紬に、正社員募集への応募を打診する社員のゆか子。
バイトが終わり、湊斗と約束した新居の内見に向かう紬。世田谷代田駅のホームで湊斗との電話中、電車から降りる人の中に見つけた想の姿。「佐倉くん」と呼びかけるも反応はない。想を呼ぶ声を電話越しに聞いた湊斗は不穏な表情。慌てて駅の改札を出て追いかける紬。見渡すが、想の姿は無い。

高校時代の回想シーン。前を歩く想の後ろ姿に「佐倉くん」と呼びかける紬。イヤフォンを外して振り向き、紬に微笑む想。

現在。遅れてきた紬をカフェで待つ湊斗。申し訳なさそうに到着する紬。
何があったのか聞く湊斗。佐倉くんを見かけたと話す紬。
-湊斗「話した?」
-紬「ううん。話せない話せない。声かけたけど気付いてもらえなかった。人違いかも。」
-湊斗「うん、人違いかもね。想だったら、紬の声、気付くよ。」

ホームで届かなかった声と、高校時代、振り向いてやさしく微笑んだ想。
この作品は、回想シーンの描き方と挿入の仕方が本当に見事で、何度も泣かされました。
想の話をする紬を、微笑みながらもどこか何かが気がかりそうに聞く湊斗。
もうこの時点で湊斗がなんだか報われない予感がして、切なかったですよね。


1-4. 再会は困る

居酒屋に仲間といる湊斗。青羽と結婚でもするのかと聞く友人たち。
-湊斗「想。想のことなんだけど。」
-友人「え、青羽さんからの想の話、大丈夫?」
-湊斗「そもそも紬の話してないし。想、今どこで何してるか、知らない?」
-友人「は?湊斗が知らないなら誰も知らないっしょ。」
-湊斗「だよね。」

「湊斗ラッキーじゃん。想がいたら青羽さん、お前と付き合ってなくない?再会とかされたら、ね、やばいでしょ普通」と友人の拓実。
「確かに。再会されるのは困る。」と湊斗。

この居酒屋のシーン、いろいろな関係性が一気に分かるすごいシーンでした。
想・紬・湊斗がおそらく同じ高校出身であること、今現在も湊斗と友人たちの交流は続いているものの誰も想の近況は知らないこと、現在湊斗と紬が付き合っていることは友人達にも周知の事実であるが、過去に想と紬に何かがあった様子であること、おそらく湊斗と想がとても仲が良かったこと。
ナチュラルな友人同士の会話を通じてこれだけのことが表現された、とても印象的なシーンでした。


1-5. あの佐倉想くん

親友の真子と食事をする紬。想を見かけたことを伝える紬。驚く真子。
「あの佐倉想くん?上京して、すぐ女つくって、紬を振ったあの佐倉想くん?」と真子。「元気にしてんのかなぁ」と紬。「会って話せば?もう時効でしょ。」と真子。

この作品の中でも、真子と紬の女同士の友情シーンが大好きです。
ここでもこの少ない会話から、どうやら紬は想と付き合っていたが想に振られたらしいことが分かります。
また、このシーン含め、現時点での紬の想に対する態度は、未練があるというよりは単純に、長い間会えなかった想を見かけてシンプルに驚いているという雰囲気でした。ここから気持ちが揺れ動いていく紬を丁寧に演じていく川口春奈さんのお芝居が、とても胸を打ちます。


1-6. 想を探して

高校時代の恩師・古賀が経営するフットサル施設を訪ねる湊斗。
想が今何をしているか知らないかと尋ねる湊斗。知らないと答え、青羽は元気にしているかと湊斗に尋ねる古賀。
去る湊斗。想に「最近どう?」とLINEを送る古賀。

古賀先生も大好きです。あったかい先生ですよね。
湊斗と古賀先生とは今もなお関係性が続いていて、湊斗と紬が付き合っていることを知っていることからも、親しいことが分かります。
湊斗に対しては何も語らなかった古賀先生ですが、想とのLINEのトーク画面には、「あけましておめでとう。元気か?」「はい、元気です。」など、古賀が想と最近もやりとりをしていたことが伺えました。

帰宅した紬。湊斗との新居探しの進捗を気にし、「湊斗くんと結婚してほしい。姉ちゃんには幸せになってもらいたいもん。」と湊斗。嬉しそうな紬。
湊斗に電話をかける紬。新居探しの話をして、電話を切る。
インターネットで「佐倉想」と検索していた湊斗。
検索履歴の「佐倉想」を削除する紬。

紬と光の仲睦まじさと、湊斗と光の距離感の近さも分かるシーンでした。
検索履歴を通して紬と湊斗それぞれの「佐倉想」に対する引っ掛かりを表現しつつ、新居の話を通して現在進行形で進んでいく紬と湊斗の二人が描かれ、対比がどこか切なさを感じさせるシーンでした。

1-7. 好きな声

押し入れから昔の荷物を引っ張り出す紬。菓子の空き缶から、イヤフォンを取り出し微妙な表情の紬。作文の書かれた原稿用紙、タイトルは「言葉」、書いたのは「佐倉想」。用紙を見つめ、切なげで深刻な表情をし、部屋を出る紬。紬は世田谷代田駅の改札前に到着。辺りを見回し、想の姿を探す。

高校時代の回想シーン。体育館の壇上で、「言葉」と題した作文を読み上げる想。その声を聞き、まっすぐに想を見つめる紬。

紬モノローグ
好きな声だった。好きな声で、好きな言葉を紡ぐ人だった。あの時から、あの声がずっと耳の奥にいて、あの名前が忘れられなくて。」

想をまっすぐに見つめる紬の表情が印象的でした。
想くんを演じる目黒さん、お芝居ももちろんですが、声が良いですよね。
人を好きになる時、好きになる要素やパーツは色々と人それぞれですが、「声」が好きって、いいなぁ。

ところで、作文を取り出した缶の中には、パンダのメモ帳もしまわれていました。
パンダのメモ帳といえば、後に想との思い出のシーンで登場します。
ここにもヒントが忍ばされていたんだなぁとほっこりした気持ちになりました。
セットや小道具の中に込められたこういう仕掛けを見つけると、本当に愛おしくなります。テレビドラマを観る時の楽しみのひとつです。


1-8. 学校はすごい場所

高校時代の回想シーン。
春、新学期。教室に入ってきた想をドキドキして見つめる紬。
湊斗と親しげに話す想。「青羽」と紬を想に紹介する湊斗。

高校時代の夏、教室で、ある日の紬と湊斗の会話。
-紬「ねぇ、戸川くん」
-湊斗「想?彼女いないよ、今は。青羽って彼氏いるの?って聞かれた。想に。つい最近。」
-紬「え、なんて言ったの?」
-湊斗「ん?知らないって。自分で確認すればって。」
-紬「いないよ。彼氏いない。一人もいない。全然いない。」
-湊斗「それ想に言ってやって。」
イヤフォンをして教室に入ってくる想。話しかける紬。
-紬「佐倉くん」
-想「ん?何?」
-紬「何聴いてるの?」
「お前が何聞いてんだよ」と笑う湊斗。
イヤフォンを差し出す想。流れる音楽を聴き、「いいよね」と知ったかぶりをする紬。笑いながら「今度CD貸すね」と想。教室を出る湊斗。

-紬モノローグ「今思えば、学校っていうのはすごい場所だった。いやでも週5で行く場所で、いやでも週5で好きな人に会える場所だった。

高校時代、階段。「青羽」と呼び、紬に新譜の入ったipodを「貸す」と渡す想。「借りる」と嬉しそうな紬。

紬は想のことが好きで、想も紬のことが好きで、お互い両想いなのに片想いで、それを知っている湊斗。
二人がうまくいくようにさりげなく協力をしながらも、寂しげな表情で教室を去る湊斗の様子が印象的でした。

イヤフォンを貸し借りしながら初々しい会話をする想と紬のシーンは、紬が想くんを好きで好きでドギマギしている様子がリアルに伝わってきて、とても可愛らしいです。

また、物語全体を通じて、"呼び方"が、その時々の登場人物同士の距離感や関係性を感じさせる要素としてうまく使われていて素敵です。
「佐倉くん」「想くん」「戸川くん」「湊斗」「青羽」「紬」。
時々によって変わる呼び方にも注目です。
確かに名前の呼び方って、付き合ったり別れたりすると意識して変わったりしますもんね。リアルな脚本です。

そして、学校という場所を、約束しなくても好きな人に会える場所、と表現するって素敵だなと思いました。
卒業してからはずっと会えていない想。約束も出来ず、ただ想を世田谷代田駅の改札で探し続ける紬。
大人になると、約束なしに会える関係ってなかなかない。
学校という空間の特殊性と懐かしさを感じました。


1-9. 好きです付き合ってください

別日、教室。帰宅する想。見つめる紬。
紬モノローグ「名前を呼びたくなる後ろ姿だった。卒業まで、あと何回名前を呼べるだろう。このまま、友達のままだったら、あと何回だろう。」

帰り道、想を走って追いかけ、追いついて早々「好きです、付き合ってください」と紬。イヤフォンを外して「ん?何?」と想。何聴いてたの、とごまかす紬。

-想「あぁ、スピッツ。」
-紬「あぁスピッツ?スピッツは知ってる。本当に知ってる、本当に好き。」
-想「うん、好き。」
-紬「あれ好き、ハチクロのやつ。」
-想「うん、俺も好き。」
-想「青羽。好き。付き合って。」
-紬「ん?」
-想「好き。付き合って。」
-紬「え?」
-想「え、もう1回言う?」

もう1回言うなら録音すると慌てる紬と、そんな紬を見て笑う想。
-紬「え、なんかこれ答えるやつ?」
-想「うん、答えるやつ。」
-紬「なんて答えればいいの?」
-想「それ俺が決めていいの?」
-紬「いいよ、決めていいよ。」
-想「じゃぁ、よろしくお願いします、じゃない?」
-紬「よろしくお願いします!」
-想「うん。わかった。」

自分のイヤフォンを紬に付けてあげる想。スピッツの「魔法のコトバ」が流れる。「あぁ、これ映画のやつ。好き。」と紬。
紬の手をとる想。手を引かれついていく紬。二人歩いていく。

もうこの告白シーンは告白シーン史上一番といっていいほど胸キュンしました。何度繰り返し見たことか。そして何度見返しても毎回キュンとしすぎて口角が上がりニヤつきがおさまらないシーンでした。
絶対最初の紬の告白が聞こえていたのに、紬への”好き"と、スピッツの"好き"、絶妙に掛け合わされた探り合いのようなドキドキ感、最高。
自信満々な想くん、目黒くんだから嫌味も無く許される。
イヤフォンを紬の耳につけてあげる想くん、ドキドキしながら嬉しそうな紬。なんて可愛いの。

このシーンの想くんは、しゃべり方も表情も笑い方も本当によかった。
想くんも紬のことが好きで、目の前の紬が愛おしくてたまらない感じ。それが隠し切れずに込み上げてしまっているような表情。可愛い。
個人的には想くんの「好き、付き合って」よりも、「うん。わかった。」の言い方と表情が、ドギマギする紬をやさしく穏やかにリードしていく感じ、やっと紬と付き合えたという達成感のような男の子っぽい心情が感じられてツボでした。(マニアック)
そして、佐倉想と目黒蓮に恋に落ちたことを、ここにあらためて宣言いたします。

スピッツの曲がいくつか物語でこの後も登場しますが、曲の歌詞にも意味が込められていて、いいんですよね。
佐倉くんがスピッツ好きというのも、言葉にこだわって、言葉を大切にする価値観や性格が表れていて好きです。


1-10. 壊れたイヤフォン

-紬モノローグ「よく長電話をした。時々、電話の奥から家族の声が聞こえるのが好きだった。クリスマスにプレゼント交換しようって言って、予算だけ決めて、いざ交換したら同じイヤフォンの色違いで、本当に交換しただけだねって言って笑った。高校を卒業して、進学して、そのころまだイヤフォンの調子は良かったのに。好きな人がいる。別れたい。その文字を見せられて終わった。あの声で聞くことすらできなかった。イヤフォンが壊れてしまったのは、3年くらい前。それからずっと、音が出ない。その好きな人とは、どうなりましたか。好きだった人の、好きな人って、どんな人ですか。」

紬。新しいワイヤレスイヤフォンを付け、世田谷代田駅改札前を去る。

想。奈々の背中の開けっ放しのリュックを閉じてあげながら笑って歩く。

さっきまであんなに胸キュンなシーンだったのに!!!!!!
切なすぎる!!!!

モノローグを通じて、二人がその後別れてしまったことが明らかになりました。
あんなに電話が好きで、声が好きで、でも、LINEのメッセージひとつで別れてしまった。一方的に紬は振られ、その後今まで会うことはなかったんですね。
イヤフォンは、想の聴力に紐づけた演出ですが、壊れてしまったイヤフォンには二人の甘酸っぱい思い出がたくさん詰まっていて、それも含めた二人の時間が3年前に止まってしまったことを感じさせ、切なくなりました。

そしてイヤフォンが、高校時代はコード付きだったのに、現在はワイヤレスになっているのも、今一緒にこの時代を生きている世代感がよく出ていて共感しやすいですよね。生方さんのこういうセンスが好きです。登場人物が今この世界のどこかに生きているように感じます。


1-11. もういらない

フットサル施設にて、湊斗と古賀先生。想が見つかったか気にかける古賀。
音信不通になった頃、想の実家を訪れたが会えず、想の大学まで行って話したという湊斗。
-湊斗「ほんとに元気だったから、もうしょうがないって。向こうが関係切りたいなら、どうにも。」
-古賀「何言ってた?佐倉。」
-湊斗「想、紬いらないって。俺もう青羽いらないから、やるよって。あげるって。悔しいからすぐにはもらわなかったんですけど、結果もらいました。紬に聞かれたら、私は物じゃないってキレられそうですけど。」

想から古賀へ、LINEの返事。「静かです。」と一言のみ。

想は紬だけでなく、湊斗に対しても一方的に関係を切ったんですね。
その時のやりとりもあり、紬は湊斗にとって想から"もらったもの"、元々は"想のもの"、なんですね。
想のこの時の「もう青羽いらない」は、耳のことがありあえて嫌われるような言い方をしたのだと推測されますが、湊斗にとってはこの時のことがずっと頭にあるのでしょう。うーん。切ない。


1-12. 想の耳

想の実家を再度訪れる湊斗。想の妹・萌が応じる。
想の連絡先が分からなくなってしまった、と湊斗。「湊斗くんってさ、知ってるんだっけ?お兄ちゃんさ…ね…」と萌。知っているフリをする湊斗。想の連絡先を教える萌。
「よかった。お兄ちゃん高校の友達ぷっつんだったでしょ、卒業してから。新しい友達もなかなか作らないからさ、耳聞こえなくなってから。お兄ちゃんって人に甘えられないのが唯一の欠点だよね。」と萌。
瞬時に理解するも動揺を隠せない湊斗。

帰っていく湊斗を見かけた想の母・律子。帰宅した萌と律子の会話。本当は想の事情を知らなかった湊斗に、連絡先と想の耳のことを伝えてしまったことに気付き、「ごめんなさい」と萌。

線路際の道、動揺する湊斗。紬からの着信。電話に出ることが出来ない。
駅のホーム。想に「元気にしてる?」とLINEを送りかけて消す湊斗。

ここで初めて、想の耳が聞こえなくなったということが明かされました。
そのことがおそらくきかけで、紬とも湊斗とも関係性を断ったのだということを把握し、動揺する湊斗。
母・律子と萌の会話からも、想はかつての友人たちと関係性を断ち、孤独の中にいるのかなと想像されます。また、そんな想のことを家族も気にかけていることが分かりました。

1-13. 好きだった人

バイトの休憩中。ゆかこに湊斗のことを聞かれ、湊斗とは同窓会で再会してから付き合ったと話す紬。
-紬「優しいです。なんかもう、主成分優しさって感じの人で。怒んないんです。怒ったとこ見たことなくて。人のために優しさ全力で使っちゃって、自分の分残すの忘れちゃう人です。」
-ゆかこ「あ、その彼氏がスピッツ好きなんだ?言ってたじゃん前に、好きな人が好きで的なこと。」
-紬「違います、好きだった人です。昔、好きだった人。
-ゆかこ「あ、元カレ?」
-紬「昔付き合ってた、好きだった人です。

-紬モノローグ「もう一度話したかった。卒業した後、元気だったのか。それだけ知りたかった。私は元気だよって伝えたかった。湊斗と付き合ってるんだよ。佐倉君は?って、今なら笑って聞ける気がした。だから、会いたかった。」

湊斗の優しい人柄が分かるシーンです。ほんとに鈴鹿くんが適役でしたよね。ここで表された湊斗の人柄が、後の物語でどんどん効いてきます。

また、紬の想への思いもよく描かれていました。
紬にとって想は、過去の人。好きだった人。今は、湊斗。それはきっと本音。
それでも、あんな終わり方をしてしまった想のことはやっぱり気になるし、今でもスピッツを聴いてしまったり、きっといつもどこかで心の中にいて、今も気になる人。
大切だった人が、事情もよく分からないままに突然疎遠になってしまって、今どこで何をしているのかも分からない。どうしているのって、ただ気になる。もう一度会いたいなって思う人。

もうこの時点で、私含め全視聴者が、「佐倉くん、どうしてるの?元気なの?」と気になって仕方ない状態ですよね。
何があったの、佐倉くん。

「元カレ」かと聞かれて、「昔付き合ってた、好きだった人」と答えた紬。
おそらく紬と想が付き合っていたのって、高3の秋とか?制服が長袖になる頃の季節からなはずなので、その後大学に進学してすぐに疎遠になったことを考えると、付き合っていた期間ってそんなに長くないと思われます。
後に分かりますが、大学進学後は遠距離恋愛だったようなので、実際に付き合っていた期間の中で、そこまで関係性を深めてはいなかったのかもしれません。
紬にとって想くんは、ずっと好きで憧れていた人で、やっと付き合ったと思ったらすぐに一方的に関係を断たれてしまって、もっと知りたかったことや、一緒にしたかったこと、行きたかったところとか、たくさんあったんだろうな。
今はもう時も流れて恋愛感情は薄れたけれど、想くんに恋していたこと自体を恋しく思うような、そんな思い出なのかな。
そんな風に感じさせる台詞でした。


1-14. 昔の友達

カフェにて、想と奈々。
湊斗から「久しぶり。元気?」とLINEが届き驚く想。
誰?と聞かれ、昔の友達と答える想。二人の会話は手話。

「高校の友達から連絡あった?ごめん、それ萌のせい」と想にLINEを送る萌。「大丈夫」と一言返す想。

高校クラスのグループLINEから「青羽光」を探し電話をかけ、湊斗が紬と今でも連絡をとっているかを尋ねる萌。二人が付き合っていることを知る。

想が手話を使うシーンはこのシーンが初めてでした。
奈々役の夏帆さんの手話を含めてお芝居が本当に自然で驚いたシーンです。
夏帆さんが出演されていると、この作品絶対面白いだろうと期待値が高まります。

萌と光は高校3年生の時に同じクラスだったようです。特に深いつながりはなかったようですが、LINEをきっかけに再び繋がっていきます。

この物語では、連絡手段が「電話」と「LINE」で描かれますが、LINEは常に近く誰かと気軽に繋がれる一方で、文字面だけでする会話の寂しさ、時には関係性が終わってしまうことの儚さを感じさせます。


1-15. 刷り込みと偏見

居酒屋にて、湊斗。想からの返信は無い。
来店し隣に座った春尾。春尾が店員と手話で会話する様子を見て、話しかける湊斗。春尾が店員に手話を無料で教えていると知り「人が良さそうですもんね」と湊。

-春尾「そういう刷り込みがあるんですよ。偏見っていうか。手話、耳が聞こえない、障害者、それに携わる仕事、奉仕の心、やさしい、思いやりがある。絶対いい人なんだろうなって勝手に思い込むんですよ。へらへら生きてる聴者の皆さんは。僕も聴者なんですけどね。

思わず謝る湊斗。なぜ手話が気になるのかと問われ、昔の友達が…と答えながらも、信じたくない様子の湊斗。自身の手話教室のチラシを渡す春尾。「出来れば覚えたくないですね。また、普通に話したいです。」と湊斗。

この台詞を放った春尾は、どこか影があり毒もありそうな印象でした。
ここまでで、想の身に起こったことを想像する視聴者は、「かわいそう、何があったの」と想に思いを馳せているはず。そう仕向けたはず。そこでこの春尾の言葉です。
わかったような気持ちになって、感情や立場を勝手に想像することは、時に人を傷つけることにもなる。
軽く頭を殴られたような衝撃でした。

また、このシーンの湊斗は、想の事情がなんとなくわかり、でも信じられなくて葛藤する様子がよく表れています。
この作品では、"変わってしまった"想との再会から物語が動き出していきますが、その変化を簡単には受け止められない側の人間として、湊斗の思いや表情がとてもリアルで、切なくなってしまいます。
"普通に"話したい。会いたい。でも、怖い。そう思いますよね。


1-16. 話したい

紬のバイト先、タワレコまで紬を迎えに来た湊斗。
二人の帰り道、夜空の月を見上げて「晴れてるね」と湊斗。「夜に晴れてるっていう人いるんだ。そういうとこ好きだなぁ。」と紬。
想に会えたのか、会えたらどうすると聞く湊斗。

-紬「今さら私も何の未練もないし、こっちこそ好きな人いますけどって感じだし。ただ、元気でいてくれたらそれでいいっていうか。もう時効だしさ。いまならなんもダメージなく聞けるもん。その好きな人とどうなったの?って。」
-湊斗「うん。話したいよね。」
-紬「私さ、あ、これも時効ってことで許して。私ね、佐倉くんの声が好きだったんだ。だから話したいっていうのはある。あ、怒んないでね。怒んないかそんなことで。」

泣きそうになり紬の手を放し立ち止まる湊斗。「高校生の時の話だよ」と慌てる紬。「妬いてるとかじゃない、怒ってないから、ごめん」と湊斗。
「私、湊斗の声も大好きだよ」と紬。
笑い合い、再び手を繋いで歩き出す二人。

湊斗の中には今、変わってしまった想に対する不安と、想と紬が再会してしまったらという不安、変わってしまった想に会ったら紬はどうなってしまうのかという不安。たくさんの不安が渦巻いていて、整理しきれていない、葛藤と混乱の中にある状態です。
湊斗を演じる鈴鹿くんのお芝居がとても切ないシーンでした。

紬にとって、想は過去の人。今は湊斗が好き。
でも、紬もきっとそんな想の存在を湊斗がどこかで気にしていることもわかっていて、どことなく気まずい雰囲気も感じられました。


1-17. うるさい。お前、うるさいんだよ。

湊斗との新居の内見に向かう紬。待ち合わせ場所で紬を待つ湊斗。想へのLINEは既読だが、返信はまだない。
世田谷代田駅に到着した紬。改札前に片耳からワイヤレスイヤフォンを落としてしまった紬。ベンチに座る誰かの足元へ転がるイヤフォン。拾い上げたのは、想。驚き、慌てて逃げるように去る想。追いかける紬。
その直後、ベンチの近くに落ちていた想の本を見つけ、遠くに想の姿を見つけた奈々。

「久しぶり。分かる?覚えてる?高校の時の。私ね就職する時上京したんだ。佐倉くんもこの辺に住んでるの?ねぇ、佐倉くんだよね?ねぇ!」と、想に追いつき想の腕を掴む紬。努めて明るく話しかける紬。

-紬「無視することないじゃん。あの後、卒業した後すっごい心配したんだよ。なんかあったのかと思って。別にもう全然怒ってるとかじゃないんだけど。ちょっと話そうよ。今から…は、私用事あるから、また今度。あ、そうだ、連絡先教えて。佐倉くん全部変えちゃったでしょ。(黙ったままの想を見て)そんなに私と話したくない?」

意を決したように、手話で話す想。手話のような身振りに驚く紬。
-想「(手話で)声で話しかけないで。一生懸命話されても、何言ってるかわかんないから。聞こえないから。楽しそうに話さないで。高校卒業してすぐ、病気がわかった。それから少しずつ聞こえにくくなって、3年前、ほとんど聞こえなくなった。」

「ちょっと待って」と想の手をおさえる紬。振り払って続ける想。
-想「(手話で)なんで電話出なかったのか、別れたのか、これでわかっただろ?もう青羽と話したくなかったんだよ。いつか電話もできなくなる。一緒に音楽も聴けない。声も聞けない。そうわかってて一緒にいるなんて、つらかったから。好きだったから。だから、会いたくなかった。嫌われたかった。忘れてほしかった。

涙を浮かべながら必死に何かを伝える想と、何を言っているか分からない紬。紬の目にも涙、表情には戸惑い。
「ごめん、私わかんない、わかんないから、なんか筆談とかで…」と鞄の中を探す紬。それを制する想。

-想「(手話で)何言ってるか分かんないだろ?俺たちもう話せないんだよ。

涙を流し背を向けて立ち去る想。「待って」と腕を掴む紬。
泣きながら手話で「うるさい。お前、うるさいんだよ。」と想。
立ち去る想。立ち尽くし、泣き出す紬。
紬から見えない場所まで歩き、耐えられず蹲り泣く想。

高校時代の回想シーン。
卒業式の後、「佐倉くん!」と遠くの想の背中に呼びかける紬。
イヤフォンを外して笑顔で振り向く想。
「電話するね」と紬。「電話するね」と想。笑顔で手を振り別れる。
もう一度振り向く想。笑顔で手を振っている紬。また手を振る想。
背中を見送る紬。笑顔で歩いていく想。

想の自宅、想の部屋にて、律子。
ベッド下の段ボールにしまい込まれたCD。空っぽになったCDラック。

はぁ…。何度目かっていうくらい見たシーンなのに切なすぎる。

もう二度と会わないと覚悟を決めて、耳のことは伝えないと決めて、紬と別れた想。再会してしまい、長年ひとりで抱えていた想いを手話で紬にぶつける想の姿が切なくて苦しくて。
そう、伝えるというよりも言葉や想いをぶつけるような切迫した感じがあって、このシーンの目黒くんの全身全霊のお芝居がすごかったです。
どうせ伝わらない(手話が理解されない)という苛立ちや、今さら再会したってもうどうにもならないという虚しさ、本当は嫌いになって別れたわけではなかった悔しさ、いろいろな感情が溢れ出して手に取るように伝わってくるような、すごいお芝居でした。

また、それを受ける紬を演じる川口春奈ちゃんのお芝居も、目の前で手話らしきものを使って何かを話している想への戸惑い、目の前で感情を露わにして涙を流しながら何かを訴える想を見た驚き、変わってしまった"何か"を理解した悲しみ、言葉にならないほどのいろいろな感情がとてもリアルに伝わってきて、胸を打たれました
とてもドラマチックな演出のシーンではありましたが、目の前で大人にあんな風に泣かれたら、そりゃびっくりして言葉も失って戸惑うよねっていう、リアルさもあって。それは川口さんのお芝居のリアルさが成立させたものだと思います。

回想シーンの使い方も見事。
"名前を呼びたくなる背中"の佐倉くんの背中に向かって、思いっきり「佐倉くん!」と無邪気に呼べた高校時代の紬。イヤフォンをしていても紬の声は聞こえて笑顔で振り向いた想。
今現在は、変わらない佐倉くんの背中がどんどん遠ざかっていくのに、名前を呼ぶことが出来ない紬。振り返らず去っていく想。

変わってしまったものの大きさを印象づける演出でした。

そして流れる主題歌。タイミング完璧
「うるさい」も、たった4文字なのに、冒頭はあんなに愛おしい「うるさい」だったのに…そんな風に泣きながら言わせるなんて…この対比よ…
もうsilentチーム天才ばっかりなんですけど…
なんて贅沢な作品なんだ…と改めて噛みしめます。

放送をリアルタイムで見た時は、このラストシーンにはなんとも圧倒されました。
気付いたら自分も涙を流しながら見ていて、想くんに何があったのか知りたくて、もう紬の気持ちになっていました。
今現在(2023年10月)放送されている「いちばんすきな花」もそうですが、登場人物の誰かに気付いたら感情移入してしまうような脚本ですよね。

そして、川口春奈さんの紬と、目黒蓮さんの想を、もっとずっと見ていたいと思いました。
そしてそして、もう想くんにはとっくに恋に落ちていたし、目黒蓮さんのことを見つけてしまった衝撃で呆然でした。(笑)

高校時代の想くんのシーンを見ていると、「あぁ、昔この人のこと好きだったな」って、あるはずもない恋の記憶が蘇ってくるような、そんな感覚になるんですよね。きっとsilentファンの全視聴者そうじゃないですか?
あの声が好きだったし、あの背中が好きだった。大好きだなったなぁ。
なぜかそんな感覚にさせてしまう目黒くんの存在感、居姿が、本当に素敵で。
当て書きとはいえ、こんなにも目黒蓮という素材を生かし切った脚本・演出と、生かされて演じきった目黒さんに感服です本当に。

これだけ印象的に終わった第1話でしたが、第2話以降も失速しなかったのがすごい。本当に、今も心に残っているし、何度でも見たくなるドラマです。

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