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【いちばんすきな花】第8話:細かすぎるあらすじ&感想

いちばんすきな花
第8話 2023/11/30(木) 22:00~

第8話。
美鳥ちゃん…!!

本記事では、ドラマ「いちばんすきな花」第8話のあらすじや台詞を、感想や考察を交えながらまとめています。
脚本や台詞が好きすぎて細かすぎるほどに残しているので、長いです!笑

※ネタバレを含みますので、これからご覧になる方はご注意ください。





●「いちばんすきな花」第8話

8-1. 嫌いなポジティブワード

椿宅にて、後片付けをしながら喋る4人。
-紅葉「聞くだけでちょっと熱出るやつある?」
-ゆくえ「なになに?」
-紅葉「"他人は変えられないけど自分は変えられる"」
-ゆくえ「あぁ~…。私あれ。"死ぬ気で頑張れ。死なないから。"」
-紅葉「わかる~。頑張りすぎると人は死ぬよね。」
-夜々「死にますね。かすり傷でもいっぱいつけられたら死にます。
-紅葉「かすり傷いっぱい付けて殺すタイプの人いるよね~。」
-夜々「いっそぶん殴られる方がいい。」
-ゆくえ「無傷に越したことないんだけどねぇ。」
-紅葉「夜々ちゃんは?」
-夜々「"生まれ変わったら夜々ちゃんになりたーい"」
-ゆくえ「うわー。こっちの苦労も知らないで。」
-紅葉「不幸自慢始まるやつだ。」
-夜々「そう。お前の不幸を私の幸福のせいにすな。
-椿「ごめん、何の発表会?」
-ゆくえ「嫌いなポジティブワードです。」
-紅葉「椿さんいっぱいありそう」
-椿「何それ、ないよ。ネガティブよりいいでしょ。」
-夜々「何か思いつくものありません?」
-椿「え~…"失敗は成功のもと"?成功者はね、失敗を悠々と語るよね。止まない雨とか明けない夜とかないらしいけど、咲かない花はあるしね。咲いてもみんな枯れるし。"置かれた場所で咲きなさい"とかね。いい言葉だよね。出来れば最初っから咲ける場所に置いてほしいけどね。

椿の元に寄ってくる3人。
-ゆくえ「人生辛いね。苦しいね。」
-夜々「ポジティブな人、怖いね。」
-紅葉「泊まろうか?大丈夫?」
-椿「大丈夫。いい加減一人に慣れないと。」

こうやって4人の会話劇から始まる冒頭のシーン。
この後のストーリーの伏線になりつつ、役者さん同士の会話劇が面白くて、くすりと笑ってしまいます。
今回も、椿さんが話し出してからの絶妙なトーンと、4人の表情が面白くて。笑いました。
前回第7話は、美鳥がどうなっていくのか?!と、畳みかけるような後半の怒涛の展開で興奮しましたが、こうやっていつも通りのオープニングをしてくれると、心が整って、この後のストーリーを見守る気持ちの準備が出来ます。(笑)

8-2. 誰かの前だけの自分

椿宅から帰るゆくえのもとに、志木美鳥から着信。
後日、美鳥と待ち合わせをしたゆくえは、カフェで美鳥と二人で会う。

実家の花屋に顔を出した椿。オレンジ色のガーベラを見つめ、母親に、中学の時にたまにうちに来ていた子のことを覚えているかと聞くと、「美鳥ちゃん?」と母親は答える。転校後は母も美鳥とは会っていないとのこと。

椿宅にて、椿・夜々・紅葉の3人。今日はゆくえはいない。その理由について、ミドリと会っているのではないかと予想する夜々。
-夜々「言わないだけかも。ほんとにミドちゃんが4人の共通のミドちゃんだったとして、私がゆくえさんの立場だったら、先にミドちゃんと2人で会います。他の3人に内緒で。散々それぞれのミドちゃんのこと話したけど、確実なのって、みんなそれぞれのミドちゃんのことを大好きってことじゃないですか。」
-紅葉「好きとかじゃ…」
-椿「うん、好きとかじゃなくて…」
-夜々「嫌いですか?」
-紅葉「嫌いとかじゃ…」
-椿「うん、嫌いとかじゃなくて…」
-夜々「好きな人と久しぶりに会う時、他の別の好きな人たちが一緒にいたら感情出しにくい気がしません?誰かの前だけの自分ってあるじゃないですか。嘘の顔ってことじゃなくて。ゆくえさん的にも、わー美鳥ちゃんあの3人とも知り合いなんだ、じゃぁ5人で会おうよって、ならないと思うんです。だから多分、うん。みんなのミドちゃん。」

カフェで再会したゆくえと美鳥。他の3人には内緒で先に自分だけ会いにきたと話すゆくえ。
-ゆくえ「その人の前だけの自分ってあるしね。」
-美鳥「あるある。嘘の顔ってことじゃなくて。」
-ゆくえ「わかる。だから、久しぶりは二人で会いたかったんだよね。ごめんね勝手に。」
-美鳥「ううん。ありがとう。ゆっくり話せたし、2人で良かったよ。」

夜々のもとに、ゆくえから着信。慌てて紅葉をソファーの方に連れて行く夜々。椿の方をチラチラ見ながらこそこそ話す3人。気になる椿。
家から出るな、ごゆっくりどうぞと言い残して慌てて帰っていく紅葉と夜々。意味が分からないまま置いていかれる椿。
しばらくして、家のチャイムが鳴る。ドアを開けると、門の前には美鳥の姿。「春木」と呼ぶ美鳥の姿に、驚きながらも、家に迎え入れる椿。

ついに美鳥と再会したゆくえ。
電話ではよく話していましたが、実際に会うのは久々の様子。
美鳥はゆくえの憧れの塾講師だったということもあり、いつもと少し違い、緊張感や高揚感のある様子のゆくえが可愛らしくて、お芝居の繊細さが素敵だなと思いました。
今、ゆくえは希子ちゃんにとっての憧れの先生で。
同じように、美鳥はゆくえにとっての憧れだったんだろうな。
美鳥も、ゆくえとの再会を嬉しそうにしていて、穏やかにゆくえの話を聞く姿が、"ゆくえが好きそうな人だな"と思わせるものでした。

誰かの前だけの自分って、確かにあって、もしかしたら人の数だけあるかもしれませんね。
嘘をついているとか、隠しているということではなくて、その人にしか見せない自分。
相手が好きな人だったり、心を開いている人だと、その人に見せる自分を、他の人に見られるのはちょっと恥ずかしい部分もあって。
みんな、1対1の関係の前では、その関係性にしかない特別な自分がある。
だから誰かのことを語る時も、みんな、自分が見ている面でしかその人を表現できなくて。
当然、自分の知らないその人もいるわけで。
どれが正解で、どれが間違いということではなくて、いろんな面がある、いろんな顔があるということを、受け入れたり尊重することって大切ですよね。


8-3. みんなのミドちゃん

夜々と紅葉を自宅に呼び、椿と美鳥を2人で会わせるために突然協力を依頼したお詫びにとアイスを用意したゆくえ。
-夜々「ほんっとにみんなのミドちゃんでしたね。びっくり。」
-ゆくえ「ねぇ。なんか反省した。自分が知ってる頃の美鳥ちゃんだけで、こういう人って決めつけてた。

-ゆくえ「紅葉は高校卒業ぶりだっけ?会うの楽しみだね。」
-紅葉「会いたかったけど…俺はみんなみたいに仲良かったとかじゃないから。向こうも別に会いたいとかないと思うし。」

紅葉の表情を見ながら、話を変えるゆくえ。紅葉が高校時代、本当は数学が得意なのに、美鳥先生の補修を受けるために悪い点をとっていたという美鳥から聞いた話を夜々にして、笑う二人。

椿と美鳥を2人で会わせるために、椿宅から切り上げてきた夜々と紅葉。
久しぶりの再会は、2人ずつ。それで正解だと言われて安心した様子のゆくえでした。

紅葉は高校時代、美鳥に好意を抱いていたのでしょうか。
その好意が、恋愛なのか憧れなのか信頼なのかは分かりませんが、補修を受けたり、家で話を聞いてもらったりしていたということから、紅葉は美鳥に対して心を開いていたように思います。
それぞれと美鳥とのエピソードが気になりますね。


8-4. もう怪我してない?

椿宅を訪れた美鳥。リビングを見渡して「変な感じ。違う家みたい。でもなんか、ちゃんと帰ってきた感じ、ある。」と言う美鳥。
美鳥をソファに座るように促し、コーヒーを淹れる椿。
「ゆくえさん」「夜々ちゃん」「紅葉くん」という椿の3人の呼び方に、聞き慣れなくて思わず笑いだす美鳥。「びっくりした。春木がゆくえと友達…」と言いながら笑いだす美鳥を見て、どこか嬉しそうにする椿。

-椿「変な感じだよね。」
-美鳥「うん。でも納得ではある。ゆくえとか夜々と仲いいって。あ、でも佐藤くんはちょっと意外かな。あの4人かって。色々こう、記憶辿って、思い出が繋がって、楽しくなっちゃった。」
-椿「よかった。どうしてるかなって。たまに思い出してて。ここ、買う時とか。店手伝う時とか。あ、花屋まだやってて、弟が継ぐ予定で。で、あの3人とそういう話に。志木さんの話になって、余計に色々思い出して、勝手に心配して。今さらなんだけど。」
-美鳥「…あの頃も、あの後も、色々あったけど、でも、こうやって昔の友達に会ってまわったり、あと、こういう家、自分で買ったり、そういうの、一人で出来るようになった。」
-椿「…怪我、もうしてない?」
-美鳥「してない。もう喧嘩してない。」
-椿「そっか。よかった。」

目に涙を浮かべて笑う椿。頷きながら、目から涙がこぼれる美鳥。

「春木がゆくえと友達…」と言いながら笑う美鳥を見て、少し嬉しそうな表情をした椿。
心配していた美鳥の笑顔を見た安心感でしょうか。
美鳥のことを、なんというか、尊そうに見つめる椿が印象的でした。

この家は、椿が実家で引っ張り出した画用紙に描かれていた一軒家とそっくりです。
美鳥が自分で建てたのか、似ている家を買ったのかわかりませんが、美鳥が住みたいと思っていた理想の家だったのかなと思います。
今は椿が住んでいて、内装や家具が変わっているけれど、「なんか帰ってきた感じある」と話す美鳥の表情は穏やかでした。

そして二人の会話。
美鳥が転校して以来ずっと会えていなかった美鳥のことを、椿は折に触れて思い出し、心配していたとのこと。
昔を思い出して、でも今は一人で頑張っていると話す美鳥は、少し目に涙が浮かんでいるようでした。
「怪我、もうしてない?」と言った椿、声が震えて、目に涙が浮かんでいて。
それに答えた美鳥も、思わず涙を流していて。
この二人が共有した中学時代に、何があったのでしょうか。
大人になった二人の、言葉数は少ないながらも心が通じ合えているような会話が、とても印象的でした。


8-5. 椿の"志木さん"

椿、中学時代の回想シーン。クラスメイトが「あ、志木美鳥!また喧嘩やば」と言いながら見つめる先には、左腕に包帯を巻き暗い表情で歩いている美鳥の姿。その姿をじっと見つめる椿。

椿モノローグ「僕が知っている頃の志木さんは、いつもギラギラしていて、怖くて、中学のみんなから嫌われていた。」

ある日、椿の実家の花屋の店先で、オレンジ色のガーベラを静かに見つめている美鳥。美鳥は頬を怪我しており、気付いた椿が美鳥を家に入れ、椿の母が傷の手当てをしてやる。将棋をしようと用意する椿。将棋知らないという美鳥に、教えてあげると椿。
-美鳥「…これ喧嘩だから。怪我。」
-椿「ほんとに喧嘩してるんだ。」
-美鳥「みんな言ってるでしょ。」
-椿「みんな言ってるけど、見た人は多分いないし。志木さんから直接聞いた人も多分いないし。ただの噂話だと思ってたから。
椿の向かいに座り、将棋の駒の並べ方を教えてもらう美鳥。

椿モノローグ「それから志木さんは、時々気まぐれにうちにやってきては、一緒に将棋をさした。僕が学校に行っている時は、店の手伝いをしたり、母から料理を教わったりしていた。」

ある日、将棋をさしながら美鳥に将来の夢を聞く椿。「家が欲しい。自分の家。帰りたい家。」と話す美鳥。椿が画用紙を差し出すと、その家の絵を楽しそうに描き始める美鳥。
別の日、椿の家にやってきた美鳥は、左目に眼帯をしていた。

椿モノローグ「来る度、新しい怪我をつくってきて、毎回、喧嘩したと言っていた。一方的な暴力でも、喧嘩と言うんだろうか。志木さんは、何も言わずに突然来なくなり、それからすぐ、転校したと知った。」

美鳥がいない日、一人で将棋の駒を並べる椿。その様子を見た母親が美鳥の席に座り、黙ったまま、将棋の相手を始める。

椿モノローグ「会えなくてもいいから、もう怪我をしていないことを願った。いつか、帰りたい家を持てるようにと、願うしかなかった。

現在。椿宅から帰ろうとする美鳥。玄関にて、「おじゃましました」という美鳥に、「また志木さんの家に戻るし」と椿。
家のことはまた今度話そうと言い、「またね」と別れる二人。

美鳥ちゃん、家庭内暴力を受けていたと思われます。
連日のように怪我をして登校してくる美鳥に対して、美鳥は喧嘩っぱやい不良だ、ヤンキーだという噂が学校では流れていたのでしょう。
美鳥も、周囲には説明することも助けを求めることもなかったのか、喧嘩をしたと、椿に対しても言い続けていたようです。
椿も、椿のお母さんも、そんな美鳥を、特に多くを語ることも聞きだすこともせず、受け入れて、逃げ場をつくってあげていた。
美鳥にとっては、椿の家が、暴力から逃れ、ひと時でも穏やかに過ごせる場所だったのでしょう。

クラスメイトみんなが喧嘩だと噂していても、クラスメイトみんなが美鳥を嫌いでも、椿は、その"みんな"と同じにはならなかった。
みんなと同じになれないことは、椿にとってはいつも苦しかったことだったけれど、みんなと同じにならない椿が、美鳥にとっては救いだったんですね。

美鳥が夜々に教えた将棋は、実は椿から教わったものだった。
美鳥が救われた将棋が、夜々の救いになっていたというのも、この物語らしい仕掛けです。

美鳥が家庭内暴力を受けていることは、きっと当時の椿も椿なりに理解していた。
でも、美鳥が喧嘩だと言うから、喧嘩だということにしておいた。
そんな美鳥が姿を消した後、ずっと心配していた椿ですから、大人になり再会した美鳥が、笑っていて、自分の足で立っていて、ちゃんと生きていること、その姿を見て本当に安堵して、だからさきほどのシーンでの涙に繋がったんですね。
結果的に、何もしてあげられなかったと椿は悔やんでいたかもしれない。
でもきっと美鳥にとっては、椿の家で見せられる自分がいたことも、自分のことをずっと覚えて気に掛けてくれた椿がいたことも、嬉しかったし、救いだった
んだろうな。

美鳥が転校してから大人になるまでの空白の時間の間に、どれほどの苦労をしたのかは、想像を巡らせるほど恐ろしくもなりますが、少なくともこの時、この中学生の時の椿が、美鳥の救いになっていたことは、確かだと思います。

そして、この時に描いた理想の家、帰りたい家が、今の椿宅なんですね。
だからきっと、前の住人が志木美鳥だと気付いた時点の椿に、この家を美鳥の元に戻すことに躊躇いはなかったのだと思います。


8-6. 友達目指せばよかった

ゆくえの家、帰宅したこのみ。久しぶりの紅葉を見て、「お風呂入れてくる」とニヤッと笑うこのみ。「なみなみ水張って」というゆくえの言葉に、幼い頃のプールのことを思いだしたのか、怖い、帰ると言い出す紅葉。笑う夜々。

別日、美容院にて、休憩しながら谷本と話をする相良。
「好きな子に言われて一番ショックな言葉わかります?」という相良。
-谷本「"友達だと思ってた。" "友達にしか見れない。" "友達以外ありえない。" "友達としては好き。"」
-相良「いっぱい言わなくていいです…」
-谷本「お互い片想いなんだ。一方は恋、一方は友情。
-相良「彼氏って嘘つかれたんですけど、本当は友達の男友達いて。夜々ちゃんが。しかもイケメンの。友達なのがいいなぁって。いいなぁって思って、また余計なこと言いました。」
-谷本「それで余計に嫌われたんだ。」
-相良「最初から友達目指せばよかったです。」

退勤間際の夜々に、この後時間はあるかと誘う相良だが、約束があると断られてしまう。夜々の約束の相手は、美鳥だった。

相良くん!
夜々のことは普通に好きなんですね。でも近づき方を間違えた。
軽い子だと思っていた夜々がそうではないことを知って、自分も向き合い方を変えてみようと思い始めている様子があるように思いました。
友達になりたいとのことですが、"まずは"お友達から、なんですかね?
どのくらいの下心があるのかわかりませんが、自分が最初の一手を間違えたせいでまだ"友達"にもなれていない、その自覚がある相良を可愛いなと思ってしまいました。
私、相良くん肯定派なので(笑)
いつか相良くんが夜々に友達認定してもらえるのを願っています(笑)


8-7. 夜々の"ミドちゃん"

久々に再会した美鳥と夜々。嬉しさの余りハグをする二人。
夜々の家で手料理を振舞う美鳥。そのラインナップは、昔椿の母から教えてもらっていた料理、「これだ、ママよりママの味。」と喜ぶ夜々。
北海道にいる美鳥の母のことは、現在美鳥の兄が面倒を見ており、施設も考えていると話す美鳥。
-美鳥「一応連絡もらって。その…お母さんそういう感じって。来なくていいとは言われたんだけどさ、わざわざ塾閉めて、家売って、帰った。帰ったんだけど、全然帰ってきたって感じしないの。」
-夜々「わかる。意地っていうか…わかるよ。親とか家族とか関係ないよって言われることあるけど、関係あるもん。意地でも関わらなきゃって思う。わかる。
-美鳥「…ありがとう。」

夜々モノローグ「私の知っている頃のミドちゃんは、いつもぽわぽわしていて、穏やかで。」

夜々、幼少期の回想シーン。夜々の家に美鳥もいて、一緒に遊んでいる二人。その後ろで、夜々の母は美鳥の母と電話をしている様子。夏休みの間、美鳥を預かるように頼まれ、困りながらも、お金は振り込んでくれと話す夜々の母。その会話が聞こえ、申し訳なさそうな表情の美鳥。

夜々モノローグ「大好きな従姉のお姉ちゃんだったけど、親戚中から嫌われていた。」

夜々の兄の迎えに行くために出かけると、緊張が解けたように足を崩して伸ばす美鳥。夜々の父の将棋盤を見つける美鳥。「女の子やけん、あれはせんでいいって」と母に言われたことを言う夜々を見て、ママには内緒で教えてあげると言う美鳥。「相手と向き合うようにして置く」と、椿に教わったように、将棋の駒の並べ方から夜々に教えてあげる美鳥。

夜々モノローグ「6歳の私は、遊びに来てくれたんだと思い喜んでいたけど、実際は親戚中にたらいまわされたあげく、辿り着いたのがうちだったらしい。ミドちゃんは親戚中からやっかいものにされていて、なかでも、特にやっかいに思っていたのが、ミドちゃんのママだった。」

ある日、将棋をさしながら話す夜々と美鳥。
-美鳥「夜々のママと半分にしたらちょうどいいのにね。娘への束縛っていうか。
-夜々「束縛ってなん?
-美鳥「好きすぎて、嫌われることしちゃうってこと。

夜々モノローグ「ミドちゃんは、夏休み最終日に新潟に帰った。ミドちゃんのママも、お兄ちゃんも、北海道に残ったらしい。」

駅まで車で美鳥を送る夜々の母。「気をつけて帰りぃよ。お母さん、大丈夫?」と夜々の母が聞くと、「大丈夫です。ありがとうございました。」と答えて、夜々に"将棋のことは内緒だよ"と笑顔で合図を送り、一人で帰っていく美鳥。

夜々モノローグ「愛着のない場所、誰も待っていない場所、そこにひとりで向かうことも、帰ると言うんだろうか。ミドちゃんが、いつか自分の居たい場所に帰れることを願った。おかえりと言ってくれる人が、そこにいることを願うしかなかった。

現在。夜々の家から「おじゃましました」と言って帰ろうとする美鳥。
-美鳥「佐藤くんってさ、あの子、何か言ってた?会いたくないとか、そういうの。」
-夜々「みんな、ミドちゃんがいたことを知らずに集まったのね、あのおうち。でも、紅葉くんだけは、ミドちゃんに会うために行ったんだよ。」
-美鳥「…うん。ありがとね。」

以前、椿宅にて椿の母が作った料理を食べた時に、夜々は懐かしいと言っていましたが、昔美鳥が夜々に作ってあげた料理が、椿の母から教わったものだからですね。
こんなところで繋がりがあったとは。
将棋に、料理に。春木家から美鳥を通じて夜々に渡されたものでした。

美鳥も夜々も、親との関係において抱えるものがあって。
幼いながらもそういった境遇で通じ合うものがあった二人は、お互いの存在に助けられたことが何度もあったのではないでしょうか。
大人になった夜々が、家族との関りについて「わかる」と美鳥を肯定した時、美鳥が「ありがとう」と言ったその表情から、二人の関係性が垣間見えた気がしました。

親戚中からやっかいもの扱いされていたという美鳥。
母親が親戚中に美鳥を預けていたのでしょう。
美鳥自身が何かをしたわけではないのに、おそらく母親が煙たがられていて、その娘である美鳥もやっかいもの扱いされてしまったのかな。
その中で、夜々は、まっすぐに美鳥のことを慕ってくれた。
その夜々の存在が、美鳥にとっては癒しだったんじゃないかなと思います。
重すぎる母親からの愛を受け止める夜々と、母親からの愛に飢えていた美鳥。
半分ずつだったらちょうどいいと言った当時の美鳥、切なすぎます。

夜々の母親が美鳥を送りだす時、「お母さん大丈夫?」と一応美鳥に聞きましたが、そんな聞かれ方をしたら、大丈夫と答えるしかないですよね。
それでも夜々の母は、他の親戚が断る中で、夏休み期間中は美鳥を家で預かった。夜々の母なりに美鳥のことを思っていた部分もあったのかなと思います。

6歳と幼かった夜々にとって、美鳥は優しくて憧れのお姉ちゃんだった。
大人になってからきっと、当時の美鳥の境遇を夜々は知ったわけで。
ミドちゃんが結婚したと聞いた時、夜々はミドちゃんに帰る場所、居場所が出来たと思って安心したんじゃないかな。
名字が志木に戻ったということは離婚したのか?
美鳥の現在までの出来事が気になりますね。

美鳥はいつも、ゆくえと会った時も、椿と会った時も、夜々と会った時も、「おじゃましました」と「ありがとう」をたくさん言いますね。
親戚中にたらい回しにされて、自分の居場所と思える場所がなくて、いつも周りに気を張っていた美鳥に染みついたものなのかなと思うと、切ないです。


8-8. 考え事

椿宅にて、椿の声に対して心ここにあらずといった感じで反応の薄い紅葉。志木さんに会うのが自分が一番最後だから拗ねているのかという椿に、黙り込む紅葉。
-紅葉「どんな顔して会おうかなって。何話そうかなって。そういうのちょっと考えてるだけです。考え事すると機嫌悪い顔になるんです。ごめんなさい。」
-椿「うん。でもあれじゃない?そもそも会いにきたんじゃなかったっけ。」
-紅葉「他に話せる人いなかったから。その時はまだ。」
-椿「なるほどね。」
-紅葉「俺のことなんか言ってました?」
-椿「志木さんの補修受けたくてわざと赤点取ってたってほんと?」
笑う椿と、拗ねる紅葉。紅葉に精神安定パンを食べさせる椿。

紅葉と美鳥の関係性、気になりますね。
「考え事すると機嫌悪い顔になる」って、神尾くんの顔立ちにぴったりな台詞で、配役に合った台詞過ぎてとても好きです(笑)
私もどちらかというとそういう風に見える顔なので、わかります(笑)

美鳥に会いたくてこの家を訪ねて来た当時の紅葉には、色々話せる相手が、美鳥しかいなかった。
3人と出会い、今は3人に、中でも特に椿に色々な事を話せるようになった紅葉にとって、今は美鳥が占める占有率のようなものが以前と比べて少し小さくなっている。
再会して、どんな風になるのか、気になります。


8-9. 答え合わせ

おのでら塾にて、「途中式これでも合ってる?」とゆくえに聞く希子。
-ゆくえ「うん。これでも合ってる。正解。不思議だよね。違う解き方しても、ちゃんと同じ答えになるんだよね。
-希子「それが美しいんだって語ってたじゃん。」
-ゆくえ「答え合わせしたのね。友達の間で同姓同名の知り合いがいたの。その人が本当に同一人物なのかどうか。結果同じ人だったんだけど、辿り着くまでが全然違ってて、同じ答えとは思えないところがいっぱいあって。」
-希子「円錐みたいな感じ?丸にも三角にも見える。人によって見え方が違う。」
-ゆくえ「うんでも円錐…丸でも三角でもないし、そもそも平面じゃないし。」
-希子「いやそれは知ってるけど。わかりやすいと思って言ってあげたんじゃん。」
-ゆくえ「見てる方向が違うだけの人がさ、奥行き無視して、勝手に丸だ三角だって言い合って。それって円錐からしたらどう思うんだろ。
-希子「円錐の気持ちまで考え始めたの?」
笑っていたが、時間を気にして、急に帰ると教室を出て行く希子。

ある日、東京明秀ゼミナールという塾の前を通りかかった美鳥。
昔の教え子の母親と偶然会い、「東京戻られたんですか?」と聞かれて微妙な表情をする美鳥。「今ここ通わせてるんですけど、やっぱり美鳥先生がいいってよく言ってて。再開するならまた通わせてください。」という母親。また歩き出す美鳥。

人との関係や感情や価値観をいつも数学脳で考えていくゆくえ、本当にゆくえらしいですよね。
数学って答えはひとつだけど、解き方はひとつじゃないこともある。
第1話でカラオケで赤田との会話の中で、ゆくえは「解けない人に採点はできません。ただの間違い探しじゃないの。○か×かじゃないの。途中式ここまでは合ってるよ、とかさ。」と言っていました。
この台詞がとても印象に残っているのですが、繋がる考えだなと思いました。
なんかもう間違い探しとか途中式とか答えとか、第1話からずっとテーマは一貫していますよね。
生方さんの脚本って、キャラクターの人物設定とか相関図とか物語のテーマとか、土台の部分が相当作り込まれてるんだろうなと感じます。

円錐の気持ちまで考え始めるゆくえちゃん、可愛いですね(笑)
希子が数学トークに付き合ってあげてる感じも微笑ましいです(笑)

美鳥のシーン、「東京戻られたんですか」と言われた時の微妙な表情が気になりました。
椿やゆくえたちと会って、みんなの居場所になっているあの家を買い戻すことに躊躇いが生じてきているのでしょうか。


8-10. "みんな"

希子が帰った後のおのでら塾の教室に一人でやってきた朔也。朔也のいつもと違う様子が気になり、「なんか言われた?保健室来るなとか言われた?」と聞くゆくえ。静かに頷く朔也を見て、教室のドアを、ぶら下げたプレートを「授業中」に変更してそっと閉めるゆくえ。

-ゆくえ「それね、"保健室に来ることで穂積くんが嫌な思いするくらいなら私一人でも大丈夫だよ"って意味ね。」
-朔也「望月、みんなから嫌われてて。」
-ゆくえ「みんなって?」
-朔也「学校のクラスのみんな。保健室に給食持ってくの押し付け合ったり、居る時少しだけ聞こえるような声でコソコソ話したり。はっきりさせないようにしてる。はっきり言いきれないように。」
-ゆくえ「いじめじゃないって言い訳できる程度にしてるんだ。被害妄想とか便利な言葉使える感じの。いっそぶん殴ってほしいよね。ずるいよね。かすり傷だけいっぱいつけて。
-朔也「学校の先生って相談したらなんとかしてくれるんですか?言って、余計にってことある気がするから…」
-ゆくえ「それさ、本当にクラスメイトみんな?穂積くんもクラスメイトでしょ。じゃぁ希子、みんなに嫌われてるわけじゃないね。」
-朔也「はい。」
-ゆくえ「学校の先生はね、なんとかしてくれる人もいるし、してくれない人もいるよ。先生とか、クラスメイトとか、そういう呼び名じゃわかんないんだよ。その人がどうかでしかないから。希子のこと、みんなから嫌われてる子だから嫌いって子もいるでしょ、多分。」
-朔也「ほとんどそれだと思う。」
-ゆくえ「教室に行けたり、みんなに好かれたり、それが出来たらすごいけどさ。でも、みんながあの子のこと嫌いだからっていう理由で、"みんな"にならなかったのは、すごいよ。それだけでその子は救われると思うよ。
-朔也「(黙って涙をこらえる)」
-ゆくえ「辛いんだよね。みんなと違うこと、思ったり、考えたりって、辛いよね。

涙がこぼれる朔也に、ゆくえは何も言わずティッシュを差し出す。

穂積くん役の黒川想矢くん、相変わらずお芝居が素晴らしいですよね。
希子の事を話しながら、怒りと悔しさが溢れてきて、それを抑えながらぽつりぽつりと話す感じ。
憤りと、情けなさと、いろんな感情がごちゃごちゃな感じ。
このシーンの穂積くんには、思わず泣かされました。

それをまっすぐに受け止めながら、根拠のないその場限りの慰めは言わずに、冷静に、淡々と、まっすぐな言葉を届けるゆくえ。
「先生」とか「クラスメイト」とか、そういう呼び名、ラベルで、人はくくれない。
あくまでもその人がどうかでしかない。
なのに、ラベリングして誰かを定義づけして、それが"普通"だ、みんなそうだって乗っかろうとする人たちはたくさんいる。
朔也も、そんな"みんな"になれたら楽なのかもしれない。
でもなれなくて、だから苦しくて、だけどきっとそれは、希子にとっては救いになっている。
美鳥も、希子も、"みんな"になれなかった誰かに、救われている。
昔のゆくえもそうだったのかな。


8-11. 好きだよ

帰り道、朔也と希子の話を電話で美鳥に話すゆくえ。間違ってないと美鳥に言われて安堵する。
「ゆくえの先生してた頃って、私ほら、嫌われてたじゃん。塾のみんなから。」という美鳥。
道端の円錐型の三角コーンを少し見つめて、「みんなじゃないよ。私と赤田は好きだったよ。好きだよ。」と言うゆくえ。
「その二人か~」と笑う美鳥。

紅葉。自宅にいると、美鳥から電話がかかってくる。
思わず正座して出る紅葉。
「こんばんは。小花です。もう違うけど。」と美鳥。
少し気まずい沈黙の後、「嫌いなポジティブな言葉ってあります?」と聞く紅葉。
-美鳥「沈黙破る質問それ?」
-紅葉「すみません。」
-美鳥「佐藤くんは?」
-紅葉「"他人は変えられないけど自分は変えられる。"」
-美鳥「(笑って)あぁ、なんか相変わらずっぽいもんね、佐藤くん。」
-紅葉「俺自身は、なんも、はい。相変わらずです。」
-美鳥「うん。それはよかった。」

ベンチで空を見上げる人のイラストを描きながら喋る紅葉と、桜の花の絵を描きながら喋る美鳥。今度会って話そうと話す二人。
「補習室とかある?」「ないですね」と笑い合う。
「なんか機嫌いいですね」と紅葉。

美鳥とゆくえの会話。
美鳥が塾講師時代、ゆくえと赤田は美鳥を慕っていたけれど、他からは嫌われていたと話す美鳥。
多数の"みんな"にならなかったゆくえと赤田は、美鳥の救いだったのかもしれません。
美鳥とゆくえと赤田の過去が明かされるのが楽しみです。

紅葉と美鳥のエピソードも、次回ですね。
2人が電話をしながら描いていたイラストにどんな意味があるのでしょうか。
美鳥は、椿の前で家の絵を描いた時も、とても楽しそうに絵を描いていて、上手でした。
紅葉がイラストを仕事にしたいと思ったきかけに美鳥が絡んでいるように思うので、次回が楽しみです。

今回は、「みんな」がテーマでしたね。
次回以降、もう少し美鳥ちゃんが詳しく描かれていくと思うので楽しみです。


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