Design for All
武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース クリエイティブリーダシップ特論 第14回 赤池 学さん, 2020年8月17日 by コク カイ
本日はユニバーサルデザイン総合研究所代表 赤池 学のさんの講義を拝聴した。
赤池さんは今までユニバーサルデザインに基づいた製品開発、地域開発を手掛けてきた、「生命地域主義」「千年持続学」といった主張を積極的に提唱し、地方自治体や中国の産業創出プロジェクトや地域ならではの産業技術、人材、地域資源による「ものづくり」プロジェクトの運営、環境技術関連の地域資源データベース構築の事業にも参画した。
ユニバーサルデザインとは何だろう、初めて聞く人もいるかもしれないが、一言でいうと皆のためのデザイン(Design for All)のことだ。文化、言語、国籍や年齢、性別、収入などそれぞれに違いがあるにかかわらず、出来るだけ多くの人に利用できることを目指した、建築(設備)、製品、情報などデザインのことであり、またそれを実現するためのプロセスである。
例えば、日常生活の中で商品の取り扱い説明書をちゃんと読んでから使う人はほとんどいない。しかしそれはユーザーたちの問題なのか?一般人から見たらそうかもしれないが、デザイナーから見るとそれは紛れもなく作り側の問題だ。なぜならデザインをする時の対象は人で、実際できた製品を使うのも人なので、人とコミュケーションをする意識はなくてはならない。取説の例で言うと、きちんとコミュニケーションができていないからそのようなことが生じてしまったのだ。
ではより良い商品や体験をできるだけ多くの人にもたらすために何が必要か、赤池さんはここで以前依頼を受けた和菓子屋の例を挙げた。ある日赤池さんは地域の和菓子屋のオーナーからユニバーサルデザインショップを作りたいという依頼を受けた。赤池さんはまず調査から始まった、調査を通して彼が見たのは、単に商品をもっと売れるように考えた企画は、結局どれもうまく行けず失敗してしまった。
そのような状況に対して、赤池さんが考えた原因は、おそらく店側が一度も顧客の立場に立って店を省みることがしていなかったからだ。ユニバーサルデザインの観点から見れば、店側として商品やサービスをいくらにデザインしていても、ただ過剰になってしまう一方だけであって、予想通りの効果が得られない。初めて顧客の立場に立って、コミュニケーションをするつもりでデザインしていかないと、なかなか新たな価値が見えてこないだろう。そのような些細な部分をしっかり見つめて、赤池さんは価格の妥当性の再評価(アフォーダビリティ)と動きやすい室内空間改造(ユーザビリティ)の提案を出した、それを受入て改造を行った店側もその後徐々に利益が上がってきた。
工業化時代からのデザインはハードウェアの面(技術基盤がもたらす品質)をかなり重視してきたが、物資が豊かになってから、デザインが重視する要素がソフトウェアの面(アプリケーションがもたらす品質)に移行するようになった。さらに、21世紀に入ってからもう一つの要素が益々重要になってきた、それはセンスウェア(五感と愛着に基づく品質)の部分である。そこで、人々が商品に対する愛着が生まれ、商品の使用価値以外の価値もそこから生み出された。そしてこのリサイクルの最後の一環として、ソーシャルウェア(公益としての品質)という概念が近年は少しずつ取り上げるようになった、その中におけるデザインの目的は単なる実用的な目的だけではない、持続可能性やユーザービリティなどを含めた社会全体にとっての価値を考慮した社会のためのデザインである。つまりありたい未来の社会をデザインの力を活かしてどう作るべきだという考え方だ。
そのため、社会の発展と共に、これからのデザインにとって益々重要になってくるのはデザインを通してこのようなありたい社会をどうつくっていくという考え方だ。デザイナーたちにとってまず自ら心が思う望ましい着地点を設定して、そこから見えたビジョンに向かってどう出発していくべきかはそれぞれの課題として考えるだ。
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