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丈夫なベンチを作ろう

武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース クリエイティブリーダシップ特論 第11回 芦沢 啓治さん, 2020年7月27日 by コク カイ

本日は芦沢啓治建築設計事務所代表 芦沢 啓治のさんの講義を拝聴した。

建築、インテリア、プロダクトデザインを始め、様々な領域で活躍している芦沢さんは横浜国立大学建築学科卒業後、家具製作工房Super Robotの仕事を経て、2005年に芦沢啓治建築設計事務所を立ち上げた。2011年の東日本大震災をきっかけに石巻工房を設立し、それ以来地域に基づいた幅広い活動をしてきた。

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東日本大震災が発生後、地域の復旧、復興の一環として、震災で倒壊した建物や施設の大規模な改修を行った。そこで芦沢が設立した石巻工房は、被災地の人々に家具など作ったのではなく、作り方を教えてあげた。中国語では「授人以魚 不如授人以漁」という老子の言葉がある、訳すと「人に魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えよ」という意味だ、腹が減っている人に魚を与えるのが一番手取り早い方法だが、その人はもし魚を釣る技術が持っていないとまたすぐ腹が減ることになる。おそらく石巻工房においては芦沢も同じ考え方かもしれない。

もちろん、それだけではない。石巻工房の設立にあたって芦沢さんの一番のコンセプトは「使える場」にするということだ。非常時期だから、とりあえず大量に作るというやり方ではなく、きちんと素材から構成、使い道、耐久性などの実用的な部分も取り入れて、ものづくりを考えるところが、芦沢さんの素晴らしいところだと思う。

現地の素材を最大限生かして、そこに住む人々と協力しあって共創の場を作る。これはただのキレイごとではない、現地で手軽に手に入れられる素材を利用することはまずコストは低い。次に地元の業者さんから原材料を仕入れることで、作り側が地域の経済循環にも貢献することになる。最後に製品の補修やメンテナンスの面を考えると長い目で見ても地産地消の材料のメリットがはっきり見えてくる。

物質的資源が過去にない極めて豊富な現代社会において、それらを運用して使えるものにするデザイナーたちは、どんな役割を果たしているのか?ポストインダストリアル時代の現在、我々は「使えるもの」の定義を再認識する必要があるかもしれない。

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