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デザインの力を広まっていこう

武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科クリエイティブリーダーシップコース「クリエイティブリーダシップ特論2021」第3回:森 一貴さん
2021年4月27日 by コク カイ

「クリエイティブリーダーシップ特論2021」は武蔵野美術大学大学院造形構想研究科クリエイティブリーダーシップコース(通称「ムサビCL学科」)が行われている、クリエイティブとビジネスを活用して実際に活躍されているゲスト講師を招いて、参加者全員で議論を行う形の講義です。受講生たちは毎回の内容をレポート形式でnoteで連載しています。

今回のゲストはサービスデザイナー、プロジェクトマネージャーの森一貴さんです。

現在は福井県を中心に活動している森さんは、元々コンサルタント職を経 て、福井県鯖江市の「ゆるい移住」という体験移住のプログラムがきっかけで、福井県でフリーランスとして活動を始めました。

彼のビジョンは「社会に自由と寛容を作る」ことです。その中の「自由」とは人々に「できるという確信」を持つことです、そのような人々を応援する組織を作るのはまさにデザイナーです。

言い換えると、従来のように専門家や権力者が政策、都市、プロダクトやサービスを作って、利用者や市民に提供するモデルから、人々が欲しいものを自分たちで生み出していくモデルへ変わります。そして今までの専門家たちの役割は、いかに社会を変えやすいようにシステムを構築することと、そのプロセスのファシリテーター役(教育者)になることです。

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その実践として、福井県にある日本最大級の工房を一般公開して、来場者に見学やワークショップを体験させるイベント「RENEW」や子供と一緒に探究しながら学ぶ学習塾「ハルキヤンパス」、そして福井県の境から越えた「ゆるい移住」のチなど、今まで多くのプロジェクトを携わってきました。

彼の考え方は主に4つの部分で構成されています、それぞれを事例を含めて紹介していきたいと思います。

まずは「変化のための小さな階段を作る」です。この部分は小さなプロジェクトを始め、地方の人々に色んな生き方や働き方を紹介することで、多様な価値観や可能性を人々にもたらします。

次は「作ることの民主化」です。例えばイベント「RENEW」において、一般の消費者を生産の現場に案内することで、作り手の思いや伝統工芸と触れ合い、生産のプロセスに巻き込みます。そして地方にとって、こういった「産業観光イベント」が産地にエンパワメントし、作り手が持続的で内発的動機をデザインするきっかけにもなっています。

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次は(総教育化社会という目標を目指して)「作ることの民主化v2.0」です。この部分は組織がいかに個人のエンパワメントができるというところに注目しています。例えば県庁で行った「Public Design Lab Fukui」の実践や行政職員自身をサービスデザイナーにすることなど、さまざまな試みをしてきました。これをきっかけに、県庁職員が従来のデザイナーに頼る受動的な立場から、自らサービスデザイン(現場主義で仕事を遂行する)になって能動的に動く機会が増えました

最後は「主客融解のデザイン」です。この部分は彼の個人的なチャレンジでもあります。彼にとって場は人を集まる機能を持っているというものの、いつも主(提供者)と客(受け手)の二項対立が存在してきました。これを崩すために、彼は新しい形態のシェアハウス運営を考えました。そこにいるいろんな人々は皆主客の身分を持っていなくて、皆が皆「共に作る仲間」である。このような「エアコンの温度を勝手に変えられる状態」こそ彼が考える場の理想状態です。

イタリアのデザイン学者Ezio Manziniの言葉からすると、これからのデザイナーの役割は「人々にデザイン能力をエンパワーしていくこと」です。ここにおけるデザイン能力は、グラフィックデザインとか企画力とかではなく、多様な価値観と文化が溢れる社会において、自ら主体性を持って自分のビジョンを実現していく力を持つことです。これも森さんの今までの実践と思考の軸かもしれません。

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