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劇団未来「白き恋人たち」感想(2024/2/24 11時&16時)

今日は吹田のメイシアターで行われた「白き恋人たち」の公演を見てきた。覚えている範囲で感想を書いていく。

最初は、パリの駅で再会した男女のシーンから始まる。(まぁメインの与謝野晶子とその夫だろうなと予想。)

与謝野鉄幹が林滝野の家にプロポーズをしに行く場面。
学校の先生であったことや自身の作品、新聞などを見せたり、自作の歌を歌ったりして滝野の両親を説得。
鉄幹が滝野を連れて東京に戻った後、林家に鉄幹の妻だったという人とそのおじいちゃんが来て、鉄幹にどれだけあくどいことをされたかを一つ一つ説明してきた。やり方が滝野の時と完全に一致。
それを聞く度にダメージを受ける滝野の父が面白かった。
もうやめて!とっくにお父さんのライフはゼロよ!

鉄幹が設立した新詩社での場面では、どうしても安く本を売りたい鉄幹と赤字の出ない価格設定をしたい滝野が言い争いをしている。
その流れから突然資金援助をお願いされた落合直文の「ぁえ!?」みたいな感じで不意打ちを食らった反応がなんか良かった。
それで500円の支援をもらうことになった後、鉄幹と滝野の態度の変わりぶりも凄かった。もしこういう流れを作るために言い争いしてる振りをしてたんだとしたら相当悪辣だが、果たして…。
あと、鉄幹の「ちゃんとした歌人」発言に対する高須梅渓の「『ちゃんとした』の定義による」っていうのも好き。

山川登美子が初参加した歌会のシーンでは、人間関係が大きく変わる。
鉄幹は晶子を「白萩」、登美子を「白百合」と呼び、どちらとも何か良い感じの関係になる。妻の滝野がいるにもかかわらず。(ちなみに滝野は「白芙蓉」)
あちこち別の場所で恋人を作るならともかく、同じ集まりの中で複数人を愛するの、この後は人間関係の縺れで滅茶苦茶になるんだろうなぁ…とか思ってた。(史実を全く知らないのでだいぶ好き勝手な予想をしていた)

その後、鉄幹が梅渓に「登美子にあまり言い寄らないでほしい」と言うシーンはなかなか緊迫感があった。
その前のシーンで「(恋をすることで)2人の歌に色気が乗ってきた」というようなことも言っていたが、それを踏まえた上で「2人の筆を磨けるのは私しかいないと思わないか?」というのが滅茶苦茶傲慢で、なんか妙にテンションが上がってしまった。ヤバい人間を見るとテンションが上がってしまう。人はここまで傲慢になれるんか。序盤からヤバい人物だとは思っていたが、ここで自分の中で鉄幹のクレイジー度数が数段跳ね上がった。そりゃ梅渓も出て行きますわ…

鉄幹の悪評が書かれた怪文書が出回っているというシーンでは、舞台端に意味深に梅渓が佇む。
(ググったら史実でも梅渓は鉄幹を攻撃したとして訴訟されてた。(Wikipedia)参考文献Wikipediaだけど許して)
メインで話が進むのは下手側、梅渓が佇むのは上手側で、話としては下手側を見るところなんだけど、あまりにも最推しの佇む姿がかっこよすぎて視線が滅茶苦茶往復してた。11時の回ではド正面に座ってた&前方に人がいなかったのもあってすごくよく見えてた。

晶子が家を出て与謝野家に来てからのシーン。
今まで晶子や登美子のことを知っていた滝野も、流石に家に連れて来られると出て行きたくなるのも無理はなし。むしろ今まで耐えられたのが凄い。
さらに晶子を連れ戻すために兄が来て、もう滅茶苦茶に。結局滝野が出て行くことになる。

「君死にたまふことなかれ」の思想を批判されるシーンもあった。この辺は日本史に弱い自分でも知っていた知識だ。
言い争っている間、後ろで赤子をあやしている弟子たちが可愛かった。
話は逸れるが、このシーンで出てきた大町桂月についてググってみたら、予測候補で「大町桂月 アントニオ猪木」と出てきた。何かと思ったら、お墓が同じところにあるらしい。

終盤は、晶子の名声が高まる一方で鉄幹の勢いが失速し、明星も廃刊になる。最初の傲慢さが見る影もない。「与謝野先生」と呼ばれて自分かと思ったら晶子の方だった、というのも結構精神的なダメージになっていそうだった。
晶子が歌を書いた屏風を弟子たちが運んでいる間、鉄幹がやたら地面のアリを気にして潰したりしていたが、精神が不安定になっているという描写だったのかなぁと思う。
そして稼いだお金で鉄幹をパリ留学に行かせた後、晶子もパリに行ったという冒頭と同じ場面で幕を閉じた。当時の海外旅行の費用感とかは分からないけど、相当稼がないといけなかったんじゃなかろうか。


あとは全体的な感想をいくつか。

前半の明星のメンバーの描写(というか主に鉄幹と晶子と登美子の描写)では、1つの目的に向かって一丸となる集団の危うさみたいなものをふんわりと感じたりした。鉄幹は「短歌を広める」という強い目的意識があり、他のメンバーも程度の差はあるが同じ志を持っていると見て良いだろう。
その中でも晶子と登美子は、恋愛感情も相俟って特に強く心酔しているように見えた。
鉄幹・晶子・登美子の3人で宿にいたシーンで「普通の人には理解してもらえない、星の子にしか理解されない」というようなところがあった。「普通の人」と身内の人との違いがあること自体はもちろん問題ないが、それでその集団に依存していくと変な方向に暴走しかねないよなぁ、と思うなどしていた。
(登美子はお見合い結婚を断れないことを期に抜けていくことになるし、このお話ではそういう方向には行かなかったのだが)
「集団で共有する目的の達成に躍起になるあまり暴走する」というのは割と簡単に陥りやすい状況と思っているので。


自分は日本史とか古文に滅茶苦茶弱いのだが、時代背景とか和歌の知識があればもっと楽しめただろうなぁとも思う。
今回分かったの、与謝野晶子を姉さんって呼んでたのが「君死にたまふことなかれ」の弟なんだなぁってことと、石川啄木と北原白秋の名前だけ知ってたぐらいだった。日本史は高1までしかやってなかった。
自分が高3だった年のセンター試験の古文があの悪名高い源氏物語だったのだが、「紫式部絶対許さないんで」とか言わずに古文も教養程度には触れておけば良かったかもしれない。源氏物語だけは永遠に読まないが。


そういえば話は脱線するが、「深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いているのだ」という有名な言葉がある。
あと、個人的な経験として、学会発表などで人前に立った時、結構後ろの方まで人の表情が見えるなぁと実感している。
ついでに、一昨年ぐらいに加田さんの舞台を見に行った後、別のイベントかラジオ観覧か何かで加田さんとお話した時に「舞台いらっしゃってましたね」って言ってくれたことがある。(受付とか、公演中じゃないタイミングで見かけたのかもしれんけど)
自分が舞台行くときに真っ黒ファッションが多いのは暗闇に紛れやすいようにという意図があったりなかったりするが、滅茶苦茶加田さんをガン見してるのがバレてないといいなぁと毎回思っている。

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