リコール請求における署名簿の縦覧は選挙の秘密に反しないのか?という疑問

第6回国会 衆議院 地方行政委員会 第5号 昭和24年11月17日に興味深い質疑がありました。

○立花委員 請求権の制限の問題でありますが、請求権に関しまして、大体選挙に準ずるものとして、お扱いになつているように考えられますが、そういたしますと、署名簿の縱覧という言葉があるのでございますが、これは非常に問題ではないかと思われます。御承知のように、選挙の祕密の保持ということは憲法にも保障されておりまして、選挙における投票の祕密はこれを犯してはならないということがはつきりあるのであります。もし署名を選挙に準じてお扱いになり、それに関する取締りあるいはその他の規定を選挙法に準じておやりになるとすれば、縱覧ということは非常に不適当ではないか。これは表面上非常に合法的のように見えますが、合法的な形で選挙権の、行使に対する非常な圧迫になるのじやないかと考えられます。署名と申しますことは、投票にいたしましても記名投票と無記名とありますが、記名式の投票に準ずる、それに近いものだと考えられますが、記名ということは決して縱覧させてもいい、公表してもいいという意味の記名ではございません。投票した者は何のたれがしだという記録上の責任を明らかにしたものだと思いますので、この縱覧ということは非常に投票に準じた署名の圧迫になり、従つてリコール活動そのものの非常に大きな制限になると思うのであります。この点に対してまず御説明を承りたいと思います。

実は、私も同じ疑問を持っていました。

それに対して政府答弁は憲法16条の「請願権の性質だ」と答えています。

○鈴木(俊)政府委員 署名が選挙と類似する行為であるかどうかという点でありますが、これは選挙とは似た点もあり違つた点もある。一口に言えばそういうふうに言えると思うのでございますが、多数の選挙人が参加をしなければ成立たない行為であるという意味におきまして、これはやはり選挙ときわめて類似した関係のある行為であると思うのであります。しかしながら根本的に違います点は、選挙はあくまでも祕密に行う、記名投票を廃しまして無記名投票で、しかも何人もこれを監視していない所において投票函に投ずるというのが選挙の本質であります。それを憲法が保障いたしておるわけでありますが、署名と申しますのは、むしろ堂々と自己の住所、姓名を書きまして、こういう点に対して請願をする、憲法上の一つの権利に結びつけて考えますならば、これはいわば請願の権利で、請願というのは、堂々と住所と姓名とを署して、意見を具申するのでありますから、これはいわゆる投票の祕密という原則が、ここには当然及んで来ないというふうに考える次第であります。

○立花委員 選挙とは違う面もあり、同じ面もあるとおつしやるのでございますが、実際上この規定によりまして、選挙の取締り、あるいは選挙に関する訴願あるいは提訴の規定を準用になつておられまして、ほとんど選挙と同じような扱い方をなさつておられますし、私どもの考えるところによりますと、本質的には選挙と同じような性格を持つているのではないかと考えておりますので、一面においてそういう選挙に準ずる規定をお入れになり、あるいは一面において選挙の本質とは違うような、縱覧というような規定をお入れになることは、いわば有利な面だけをとつて、不利な面だけはとらないというふうなことを、なさつているのではないかと考えます。実際の問題といたしまして、たとえば町村におきまして町のリコールあるいは村の首脳部のリコールというような問題になつて参りまして、裏長屋のおかみさんたちが、ふだん偉い人だと思つている方、あるいは多少ともお世話になつているような方のリコール署名をいたしまして、それを縱覧に供されるような場合には、これは非常に大きな無言の圧迫があるのでありまして、こういうものを、選挙と違う面があるから縱覧させてもいいのだというような形式的なことでおやりになつては、実質上の署名運動が成立しないではないかと考えます。この点ここで問答しても仕方がありませんので、もう一度お考えおきくださるようにお願いを申し上げます。

実際上も、リコール請求を含む直接請求の所管は選挙管理委員会であり、地方自治法上のリコール制度は、公職選挙法を大いに準用しているので、請願権というよりは選挙権の性質の方が強いはずなのですが…

立法者たる政府がこのような認識だとして、果たして裁判所はどう判断するか?(判断するような場面があるのかわからないが)

以上

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