Fukushima50と菅直人の「海水注入中断指示」

昨日(3月12日金曜日)は、Fukushima 50が放映されましたね。

「総理」の人災ぶりが描かれた映画でもありますが、その中でも現実世界では総理大臣経験者同士の訴訟にもなった「菅直人総理大臣による海水注入中断指示」の事実関係について改めて整理します。

東京地裁平成27年12月3日判決平成25年(ワ)第18564号

東京高裁平成28年9月29日判決平成28年(ネ)第25号

最高裁第三小法廷平成29年2月21日決定平成28年(オ)第1866号平成28年(受)第2347号 (※上告受理棄却決定なので中身無し)

「菅直人総理大臣による海水注入中断指示」

上記で高裁判決文ベースで中身を解説していますが改めてここで補足。

1:海水注入に関して、菅氏の間違った判断がなされたことが裁判所に認定された
2:ただし、菅直人総理大臣から直接的な海水注入中断指示は無かった
3:実際に吉田昌郎所長に中断をするよう求めたのは東電の武黒フェロー
4:しかし、それは会議における菅総理の態度・言動が導いたものだった

これがこの訴訟での安倍総理のメルマガの記述の真実性判断のロジックです。

総理大臣という権力者による言動

武黒フェロー1

【第47号 平成24年3月28日(水)】東京電力福島原子力発電所事故調査委員会の議事録を見ると、参考人として呼ばれた武黒フェローが以下発言

総理からは、いろいろ御質問がございました。特に、海水を注入するとい
うことで再臨界の可能性がないかとかいうことも含めて、ボロンを入れなくていいのかとか、それから、海水というのが臨界に与える影響はどうい
うことなんだ
、メカニズムというと大げさかもしれませんが、原理的なそういったことですとか、あとは、準備状況がどういうふうに整っているの
かといったような御質問がいろいろとございました

海水注入によって再臨界の可能性が高まることではないということは、物理的に明らかであるということは裁判所も共通認識でした。

東京地裁判決の31頁以降を読むと、内閣総理大臣であった原告=菅直人が強力なリーダーシップを発揮しようとしたこと、海江田大臣が原子力緊急事態宣言の発令を求めた際に菅直人の理解を得るのに時間がかかったと述べたこと、細野内閣総理大臣補佐官(細野豪志議員)が、原告は判断を人に任せる性格ではないと述べていること、会議中に再臨界のおそれについて懸念を示した菅直人に関して、細野補佐官及び貞森秘書官は、このままでは海水注入ができなくなってしまうと懸念したことなどが認められるとしています。

海水注入中止の具体的な指示が無くても、その前後の言動や態度によって、関係者を海水注入中止に向けさせるような発言がある時点で、それは権力者たる内閣総理大臣の責任である、ということです。

たとえば、アメリカのトランプ大統領が演説で妙な仄めかしをしたのが議事堂襲撃の暴動に繋がった、という非難も同じです。大統領という強大な権力者による発言を民衆がどのように受け止める可能性があったのか、という事が重要視されています。

判決文

安倍晋三議員のメルマガにおける「菅直人の海水注入中断指示」批判は、そうした事象について、菅直人氏の行政統治能力はどうなの?という話であると、裁判所では捉えなおされました。

このことを取り立てて「アベの捏造が明らかになった!」と狂喜乱舞している者が居り、そう思うのは勝手ですが、それは何らの意味のない菅直人擁護だということです。

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