3.11と科学
東日本大震災から10年。
現在進行形の課題はあるが、光を意識的に見ていきたい。
国連科学委員会(UNSCEAR)の報告書
国連科学委員会(UNSCEAR)が3月8日付で福島第一原発事故の被曝による健康への影響を評価した報告書を公表しました。
福島では今後も、がんの増加が確認される可能性は低いと評価。
甲状腺がん疑いの検診についても、高感度の超音波検査により生涯発症しないがんを見つけている過剰診断の可能性があると指摘しています。
やっとここまで来たかと。
もちろん、科学的に安全であるという話は、これまでも国際機関、外国の組織等から何度も報告されていましたが(それ以前から日本国内の科学者等が科学的な安全性や過剰検診の問題を指摘していた)、甲状腺がんに関する今回の報告で、一区切りがついたなという印象です。
3.11と科学
私は仙台市出身かつ現在仙台市在住ですが、震災の「被害」と言えるのは家の排水管の破損くらいのもので、報道されるような「災害」とは無縁でした。
その分【その後も残る災禍】について認識、周知しようと決めました。
【メディア等による風評被害】です。
放射性物質に関する数々の嘘や不安煽動、陰謀論。
それらはしばしば「震災を風化させない」という装いの中に擬態して流布されており、科学が風評に負けている様を見せつけられてきました。
その中でメディアに対する憎悪が増えてきましたが、私自身が発信する側にまわると、多くの科学者、良心的な記者の存在を知るようになり、彼らとともに戦っているんだという気持ちになりました。
記者と震災
たとえば朝日新聞の福地慶太郎記者。
今回のUNSCEARの報告書について端的にまとめています。
また、日本の科学者が「沈黙」していたのは、空気に飲まれたということもあるでしょうが、【科学的評価に客観性を持たせるために外部からの評価を辛抱強く待っていた】面もあるのだと思います。
フリーランスライターの林 智裕 氏も、何度も風評被害と闘っている姿を見せてくれました。以下のような良記事を繰り返し発信しています。
政界に進出する前の青山繁晴氏も、もとはジャーナリスト。
原発事故は地震による振動ではなく津波による浸水が原因であること、放射性物質の拡散シミュレーションが極大値を用いた過大なものであったこと、放射線被曝の影響に関する報道が不安煽動的であることを、関西テレビの「ニュースアンカー」やネット番組の個人コーナー、文化放送「ザ・ボイスそこまで言うか」等で何度も説明していました。
政治家と科学コミュニケーション
「福島」に関する「原発事故の影響」については、「空間放射線量」から始まり、それが問題ないとなると今度は「こどもの甲状腺がん」、次に「汚染土壌・海水による生物濃縮」などが叫ばれ、すべて問題ない事が分かっています。
同程度の震度だった宮城県の「女川原子力発電所」ではどうだったのか?についてはもっと知られて欲しいですが、ここでは割愛。
現在は「処理水」の海洋放出の話が多く取り上げられますが、科学的には既に決着がついている話で、「約束がどうのこうの」という専ら政治的な話になっています。
この複雑に絡み合った話については、当時政権与党であった民主党に居た細野豪志議員が先頭に立って情報整理をしています。
東電福島原発事故 自己調査報告書』(細野豪志・著 開沼博・編/徳間書店)
光
東日本大震災に関しては「被害」を語る側と、「風評被害」を咎める側から、どうしてもネガティブな性質の文言、情報となってしまいがちです。
ある種不可避的に、誰かに対する非難の文言となってしまいます。
が、そうした情報は、情報と人間社会の内在的性質によって、ポジティブな情報に比して広まりやすい。だからこそ震災を「ネタ」にコンテンツ化する者が居る。
そうではなく、きちんとした発信をしている人が認識され、その活動が伝えられるということが増えて欲しい。
「震災の被害を受けた人・場所」という「かわいそうな」イメージで認識されるのではなく、一つの地域として認識されるようになってほしい。
かくありたい。
以上
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