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吉村知事とインサイダー取引を関連付ける人たちへ

インサイダー取引は以下3種類があります。

1:会社関係者によるインサイダー取引の規制(金融商品取引法166条)
2:公開買付け(TOB)の関係者によるインサイダー取引の規制(金融商品取引法167条)
3:情報伝達行為・取引推奨行為の規制(金融商品取引法167条の2)

吉村知事は、これらによって規制されるべき主体であって、規制されるべき行為をしたのでしょうか?

吉村知事は「会社関係者」や「公開買い付け等関係者」や「情報受領者」ではない

会社関係者」とは、金融商品取引法166条に定める者です。

株主・社員・投資主・法令上の権限を有する者・契約締結者などが権限行使や契約締結若しくはその交渉又は履行に関し知つたときを規制していますが、単に「特定企業の株式を持っている首長」というだけでは該当しません。

公開買付者等関係者も公開買付に関する上述のような属性の者を指します。

情報受領者(金商法166条3項)は会社関係者等からそのような情報を受け取った者です。

吉村知事は松山教授という研究者から実験結果の報告を受けたのであって、イソジン関連製品の製造販売会社の株主等の、会社関係者や公開買い付け等関係者からそうした事実を受け取ったのではありません。

ポビドンヨードに関する実験や実験結果の公表は業務に関する事実ではない

そして、ポビドンヨードに関する実験は、イソジン関連製品の製造販売会社の業務ではなく、外部の事項です。勝手にイソジンを使っていたに過ぎません。

「実験結果の公表の事実」も同様で、イソジン関連製品の製造販売会社の業務ではありません。

情報伝達自体は直ちには違法ではない

また、「業務等に関する重要な事実」について、他者に伝達する行為自体は、直ちには違法になりません。

金融商品取引法ではそうした行為を罰する規定はありません。

ただし、会社関係者等から業務等に関する重要な事実について情報伝達を受けた者が、上場株券等の売買等を行った場合に、情報伝達をした者が、その教唆や幇助になり得るという構造になっています。

参考:https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/insider_h24/siryou/20120731/03.pdf

ここまで見てきたように、吉村知事を金商法上の非難に値すると考える人たちは「犯罪行為主体となりうるのか?」「会社等の業務に関する事実なのか?」「情報伝達が違法になるか?」という3点において、無理筋な見解を言っているのが分かります。

「インサイダー」という非難は妥当しない

吉村知事のイソジン会見について、「インサイダー取引だ!」「インサイダー取引の幇助だ!」という非難をする人たちは、大丈夫でしょうか?

まぁ、「仕手」と言われるようなことをしたのではないか?という非難は有り得るのでしょうが、それにしても平時の値動きとそんなに変わらないのに、そういう効果を狙っていたと考えるのはちょっとおかしいと思いますよ。

吉村知事の会見については何度も批判しています。

以上

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