韓国地裁の慰安婦判決変更理由の注意点

1)「強行規範に反する反人道的行為」「私法的行為」は主権免除の対象外か?

裁判官はまず、被告である日本政府の行為について「慰安婦を選抜する被告の行為は韓国の領土内で行われ、慰安所において慰安婦として被告に所属する軍人らと、意思に反して性関係を持つようにしたことは、国際人権法などに違反する行為としてこの事件被害者に対する深刻な人権侵害」と定義した。さらに「外国の主権行為は主権免除を認めるが、非主権行為に対しては主権免除を認めない」という韓国最高裁の判例を基礎とした。

その上で、「強行規範に反しているから主権行為ではなく、主権免除は適用されない」との原告の主張について、「主権行為というのは私法的行為の反対の概念であり、違法かどうか倫理的にどうかという要素は関係が無い」として、「ある国家の主権行為が強行規範に違反したとしても、その行為は違法な主権行為になるだけであり、主権行為でなくなるわけではない」と一蹴した。

さらに「原告は進んで被告の行為が商業的行為だと主張するが、被告の行為は被告軍隊の要請により当時朝鮮半島を管轄した朝鮮総督府が行政組織を利用して慰安婦を選び出し、被告軍隊が駐留した地域の慰安所に配置させ性関係を強要したとの事なので、このような行為は公権力の行使としての主権的行為であって、これを商業的行為と見ることはできない」と、こちらも認めなかった。

韓国地裁の慰安婦判決が地裁の別の裁判体によって事実上変更された理由について、日本語媒体ではFNNが最も詳しく紹介していますが、注意点があるのが分かるでしょう。

この説明を見る限りは「強制連行」という言葉は使っていないようですが、言葉の端々に読者がそのように受け取るような表現が見受けられます。

また、「国際人権法などに反する人権侵害」「性関係を強要」については、一部そういう実態があったことは否定できないだろうけれども、標準的な実態としては決してそうではなくむしろ朝鮮における業者の影響が大きい(日本軍・日本政府は管理監督する立場なのでまったくの道義的責任が無いと言うことはできないだろう)ということは重要です。

したがって、この修正判決は「主権免除」との関係においてのみ肯定的に論じられるべきであり、内容全体を肯定してしまう事は厳に慎むべきということになりそうです。

以上:ハート形をチェック・サポート・フォローして頂けると嬉しいです。

サポート頂いた分は主に資料収集に使用致します。