遠くのことは怖い

最近、フランスより一時帰国しているのだが、なぜか皆一様に「テロ、だいじょうぶ?」と聞いてくる。

そこで暮らしているものにとっては別段変わりない日常が流れているのだが、フランス全土が戦場と化しているかのようなイメージだ。あまりにも大げさなに思えるのだが、かといって、100%安全などと、言えるはずもないので、「それほどでもないですよ」と答えていた。

夏に、ニースでトラックにのった男が通行人を銃で殺傷した事件があったが、あれは、単に頭のおかしい人の暴挙だと思う。アラブ人というだけで、本ではすっかりテロ行為になっている。 そのあと起こった、相模原の知的障害者の施設で何十人と殺傷した事件のほうが、よっぽどひどいと思うのだが。

とにかく、今でもフランスの観光業はかなり打撃を受けているらしい。日本のグルメ番組とかにさりげなく、フランスの紹介をしているものとか、フランス観光局も日本人観光客を呼び込むのに懸命だ。なにしろ、日本人観光客は、おとなしくて、文句もいわず、金払いもいいので、フランスとしてはありがたいお客さんだからだ。

映像というのは、真実ではない。事実を切り取っただけのものである。その場にいるものにとっては、それほどでもないことが、切り取られた情景だけを見るものにとってはそれがすべてになる。

東日本大震災の映像は、海外から見ているものにとってはショックだった。日本全土が津波にのまれ、放射能に汚染されているかのような気持ちになった。当時、フランス政府は、エールフランスをチャーターしてフランス人を無料で帰国させた。

人の心に恐怖が生まれるのは、知らない、わからない、ということだけが理由ではない。目に見えるものだけを信じていると、見えないものに恐怖を覚えるのだ。グーグルマップをイメージしていただけるとわかりやすいのだが、目に見える切り取られた部分に対して、遠く離れれば離れるほど、それ以外の見えない部分が広くなる。この広がりが人の心の恐怖の大きさなのだと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?