いつか来る幸せ
中3の頃、僕は塾で一生懸命勉強していた。
一日中勉強していて本当に苦しかったけどそんな僕を励ましてくれたのは塾の先生の「今は苦しいと思うけど、ここで頑張って良い高校に入れば人生バラ色だから!」という言葉だった。
その言葉を信じて死ぬ気で勉強して、僕はその県で一番の高校に合格した。
やっと勉強の苦しみから解放される、これから僕を待つのはバラ色の人生なんだ。
そう思っていた。
だけど僕は間違っていた。
勉強のレベルは中学時代と比べものにならないほど跳ね上がり、クラスメイトも僕より優秀な人達ばかりで、僕はそんな生活についていくのに必死だった。
一生懸命勉強したけど成績はどんどん下がっていって
そして僕は大学受験に失敗し浪人、予備校通いの生活を始めた。
朝から晩まで勉強漬けの日々。受験のプレッシャー。ほんとうに苦しくて、頭がおかしくなりそうだった。
でもそんな僕を予備校の先生や僕の親は「いいか、ここが踏ん張り所だ。良い大学に入ればその後の人生が全然変わってくるんだぞ。」と励ましてくれた。
なんだか似たような言葉を昔聞いた気がするし、そして僕は一度その言葉に裏切られている。
僕はその言葉に疑念を抱き始めていたけど、それでも信じることにした。
そして僕は一年間勉強漬けの日々を過ごし、結果その地方で一番の大学に合格した。
あぁ、やっとこの苦しい日々が終わる。
夢のキャンパスライフが始まるんだ。
新しい友人を作って、恋人なんかも作っちゃったりして...
そう思っていた。
だけど僕は間違っていた。
入学直後に僕は学校に行けなくなってしまった。
理由は分からないけど学校に行くのがたまらなくしんどかった。
そして僕は留年した。
親には泣きながらこう言われた。
「私は良い大学に入れなくて働くのにすごく苦労してきた。だから息子のお前には良い会社に入って高い給料貰って、良い生活を送って欲しいんだ。だからここは苦しくともしがみついてでも大学に通いなさい。」
僕は不安と焦燥と、絶望を感じていた。
もしこのまま学校に行けずに、退学にでもなったらどうしよう。
ここで辞めたら中学生からここまで頑張ってきたことが全部無駄になってしまう。
親も僕に期待してくれているのに、それを裏切ることになってしまう。
早く、早くなんとかしないといけない。
学校のカウンセリングに通ったり、病院に行ったりもした。
でも学校に行くことができるようにはならなかった。
そして僕はその後さらに2回留年した。
本当に毎日が地獄で毎日自殺したいと思っていたけど、そんな日々の中で僕は自分のこれまでの人生を見つめ直していた。
僕はこれまで一生懸命頑張ってきた。
良い高校に入るために。高校の勉強についていくために。良い大学に入るために。そして今は大学に戻るために。
...でもそもそも僕はなんで頑張ってきたんだろう。
「今は苦しいと思うけど、ここで頑張って良い高校に入れば人生バラ色だから!」
「いいか、ここが踏ん張り所だ。良い大学に入ればその後の人生が全然変わってくるんだぞ。」
「私は良い大学に入れなくて働くのにすごく苦労してきた。だから息子のお前には良い会社に入って高い給料貰って、良い生活を送って欲しいんだ。だからここは苦しくともしがみついてでも大学に通いなさい。」
思えば僕はいつも、今を犠牲にして生きてきた気がする。
いつか来る幸せのために。
でもいつかって一体いつなんだろう。
中学生の時は高校生活だと思っていた。高校生の時は大学生活だと思っていた。大学生になってからは社会人生活...
...疲れた、もう疲れた
これは甘えかもしれない、弱さかもしれない。
学校にも行かず部屋でうずくまる情けない僕を肯定しようとしているだけなのかもしれない。
それでも、僕が今この瞬間幸せを感じていないのなら、その人生はきっと間違ってる。
いつ来るかも知れない幸せのために今の自分を犠牲にするのは、もう嫌だった。
だから僕はこれまでの人生から降りることにした。
僕は今から大学を辞めようと思う。
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