『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』は名作になり損ねた名作である。(前編)

『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』という作品があった。
 このアニメ作品はシーズン1とシーズン2で合計4クール作られたわけだが、個人的な感想としては「名作となれたはずなのに、そうさせてもらえなかった」不遇の作品だと思ったりもする。

 舞台は火星。かつて厄祭戦という人類が滅びかねない戦争があった後にいろいろあってスラム化した火星。飢えと貧乏から悪い大人たちの餌にされるようにこき使われている少年たちが蜂起して「鉄華団」という組織を立ち上げ、火星の現状を直談判しようと地球へ行きたいと依頼した金持ちのお嬢様クーデリアを送り届けるというお話だ。

 ビームが廃れ、モビルスーツでの戦いは物理的打撃か火薬の爆炎で攻撃するというなんと埃っぽくなんと硝煙に溢れたステキな世界観。少年たちにはマシーンを神経接続で操るようにするためのデバイス阿頼耶識が埋め込まれたりしてたり、宇宙を舞台としたディストピア感はこれまさに「第9地区」とか「チャッピー」とかヨハネスブルグめいた現代的なマッポー世界である。あのような映画が好きならきっとあなたも好きになれる。

 世界観、音楽、作画、そしてガンダムものを名乗るならば当然でかつ必須要素であるロボット要素については最高峰の設定と完成度を持ち合わせていた。ガンダム路線としてはほとんどないような煙たいSFと少年たちの戦いという面白すぎるテーマ。実に楽しめた。
 キャラデザイン原案が「シュトヘル」「皇国の守護者」の伊藤悠さん。荒々しいタッチと水彩の色使いの似合うあの人ならではの独特のデザイン。実際のキャラデザインが千葉道徳さんという方だが実際マッチしていた。
 メカデザインが鷲尾直広さんを筆頭としたガンダムシリーズを支えるデザイナーの皆さん。ガンダムフレームとその装甲という骨ばり角バリそれでいてケレン味たっぷりの素晴らしいデザインを作ってくれた。
 音楽が「Fate/Apocrypha」でも担当した横山克さん。ケルトめいた軽快でかつストリングスを効かせたオーケストラのような重厚なサウンドの混合。まさに次の時代を背負う音楽家だと思う。
 彼らが揃っていて、面白くないわけがなかったのだ。雰囲気作りと目的にしっかりと合致していたナイス選択だったと思うよ。

 そしてこの記事を書くならば書かねばならないこともある。
 鉄血のオルフェンズは名作になれるポテンシャルがあったのに、一体何が原因で名作を逃してしまったのか。そこについて思い至ることを書き連ねようと思う。
 あえて記事を分けるのは、ネガティブとポジティブを分けることで私の鉄血のオルフェンズ好きという感情をちゃんと正しいものにしたい部分があるんだ。

 後編に続く!


私は金の力で動く。