映画感想:『CABIN』はクリティカルとファンブルの奇天烈な結晶体である。

 CABINという映画を見た。
 ネタバレありありなので気になる人は回れ右だ。とてもおもしろい映画だ。
ああ回れ右する前に待つんだ。こういう人なら得に面白いと思う。
ずばり、TPRG経験者、特にクトゥルフの呼び声TRPG経験者に絶対おすすめできる映画だ。

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 簡単なあらすじを書いておこう。5人の男女が山奥の鄙びた山荘に行ってテンプレ通りの休暇を過ごそうとするが、山荘の地下にあった怪しげな古文書を読み上げたことでゾンビが蘇ってしまう……という典型的なB級ホラーの皮を被った「儀式」が起きる。
 しかし一方で古臭い秘密基地のようなオフィスの場面が始まる。5人の男女が遭遇しているホラー現象はオフィスにいる組織が意図的に引き起こしているもので、彼ら組織の目的は「シナリオ通りに生贄である5人の男女を殺す」ことである。この儀式は定期的に行われて今回もつつがなく終わる……はずだった。という物語だ。

 恐怖を演出させられ、入らなくてもいい地下室に行って、怪しげなアイテムを手に取る。「こういうの触ると怪物が目覚めるんだよなぁ」と思ったあなたは大正解だ。各種あるアイテムのどれが最初に発動するかで、「今回の儀式で登場する怪物」が選択させられるのだ。そう、これはTRPGの流れそのものだ。

 冒頭に書いているのを見れば察しのいい人は大体気づくだろう。
 これはクリティカルとファンブルの入り混じった物語である。

あなたは経験がないだろうか。ここぞという時に失敗しまくったり、とんでもないタイミングで奇跡的な大成功が出てしまって、シナリオが取り返しもつかないほど歪んでしまうという経験を。特にTRPGやってる人はおなじみだろう。「なんでこんなタイミングで大成功が出るんだよ!!」「全員失敗ってなにそれ怖い」とかそういう体験。まるで運命の女神が大爆笑してるような状況。

 この映画はまさにそんな奇跡的で悪魔的な出来事を体現した映画だ。TRPGプレイヤー、特にGMにとってはすごく納得できてしまう映画だろう。
 起きてはならない奇跡が起きてしまう。
 起きてはならない悲劇が起きてしまう。
 猛烈に起きまくるクリティカル判定によって正しい選択肢を選んでしまったり、ファンブル判定によって本来シナリオで必要不可欠な出来事が起きなくなってしまうというアクシデント。まさにTRPGプレイヤーならば醍醐味として味わえる展開を、まさに映画で再現してしまうという楽しさであるのだ。

 だからこそTRPG体験者ならきっとぞっとするか大笑い間違いなしだろう。感情が揺さぶられる映画だと思いたい。
 機械仕掛けの女神の大爆笑の末に導かれる結末を見た時、きっと大きな達成感か落胆を覚えると思う。

 似たようなコンセプトの映画に「タッカーとデイル 史上最悪にツイてない奴ら」という映画があるが、これはこれで別の記事で上げるとしよう。

 この記事を読んでくれた画面の向こうのあなたに感謝を。

私は金の力で動く。