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傘と人生(2) 「男性が傘を差さない理由」考

注意


男性の日傘について。
なお、この文章では、身体的・経済的な理由、自転車やバイクの乗車時など、傘を差さないのではなく、差せない状況は対象外としている。

はじめに

真冬に半袖の人を見ると、もっと温かい格好をすればいいのに、と思う。
コートを着ればいいのに。
コートを勧めても着ないし、理由を聞いても「コートは軟弱だから」と言う。
にもかかわらず「寒い、寒い」と辛そうにしていたらこの人は馬鹿なんじゃないかと思ってしまう。

この例えの夏版がこう。

真夏に直射日光を浴びている人を見ると、もっと涼しくなる工夫をすればいいのに、と思う。
日傘を差せばいいのに。
日傘を勧めても差さないし、理由を聞いても「日傘は軟弱だから」と言う。
にもかかわらず「暑い、暑い」と辛そうにしていたらこの人は馬鹿なんじゃないかと思ってしまう。

女性に比べ、男性は日傘を差さない人が多い。
街行く人を見てもわかるし、何より日傘売り場を見ると一目瞭然。女性用日傘に比べ、男性用日傘の品揃えは明らかに悪い。あまり売れないから、少ない。

日傘を差さない男性に理由を聞いたとして、返ってくる答えは主にこんな感じだろう。

  1. 日傘は女性が差すものだから

  2. 見た目が格好悪いから

  3. 暑いのが好きだから

  4. 日焼けして健康的に見せたいから

  5. 軟弱だと思われたくないから

それぞれの理由は少しずつ関連しているけれども、ひとつずつ。

1. 日傘は女性が差すものだから

大半の理由はこれだろう。

しかしこれは、思い込みである。なぜ女性が差すものなのか、との問いについて考えてみれば、「何でと言われても、元々そういうものだから」という理由にならない理由に行き着くだろう。そしてこれは堂々巡りの答えだ。
男性が日傘を差さない→日傘は女性のものだと思う→男性が日傘を差さない、という循環。
(自分が生きてきた範囲で、という意味で)長年日傘は女性ばかりが差しているため、男性が差すものではないと思っている。

逆に言えば、この循環が覆れば、一気に価値観が変わる可能性もある。それくらい、理屈上の根拠は弱い。

2. 見た目が格好悪いから

男性も雨の日には雨傘を差すでしょう?
だから、見た目そのものが格好悪いのではなく、根本には「女性のものだと思っている」という理由がある。女性のものだから、格好悪い、と。

3. 暑いのが好きだから

つまり、趣味嗜好の世界である。
日傘を差さない理由として成立しうるけれど、他の理由を糊塗するための回答かもしれないことは疑わなくてはならない。
程度問題もあるので一概には言えないが、暑いのが好きと答える人も、真夏の、エアコンのない部屋とエアコンの効いた部屋では、後者を選ぶ人が多いのでは?
命を失いかねない暑さは身体的には明らかに不快のはずなのに、本当にその暑さが好きなのだろうか。

また、暑いのが好きだと答える人の中には、暑いところから涼しいところに入った時の落差が好きという人も混じっている。この人は暑さが好きなのではなく、不快から快へいくため、わざと不快を好む、マゾヒストである(多かれ少なかれ皆その傾向はあるから、悪いとは思わないが。

いずれの人も、命がけの趣味だ。

確かに世の中には、スカイダイビングやマリンスポーツなど、命の危険を伴う趣味がある。
しかしなるべく危機に遭わないよう対策を取って行われる。
炎天下に無策なのは、方法として誤っている。暑さを楽しむ際も、しっかり対策を取るべきである。

4. 日焼けして健康的に見せたいから

確かに、青白い顔をしているよりは、日焼けしている方が健康に見えるだろう。
しかし、炎天下の直射日光は、明らかに健康に悪い。
健康という言葉を口にするのであれば、日傘を差す方が理に適っている。

「日焼けして健康そうに見える」=見た目の話と、「日傘を差して涼しい」=実際に健康に良いのとを比べたとき、健康を気にする人が選ぶべき選択肢は論ずるまでもない。

健康的に見せるために命を危険にさらすなんて「本末転倒」の事例としてぴったりだと思う。

5. 軟弱だと思われたくないから

軟弱だと思われたくなければ、暑さに苦しむ様子を見せてはいけない。それは暑さに負けている証拠だから。うちわや扇子で仰ぐのも、エアコンを使用するのも同じ。まして、木陰なんて求めてはならない。暑いけどそれが何? という態度を示さなくてはならない。
そして、そうした態度を示せたとしても、世間の人は、体温を超える気温が不快であると知っているから、結局は「やせ我慢」だと思われる、その覚悟も必要。

そもそも、対策を取ることが軟弱だろうか?
日傘は防具である。相手の強さを認め、継戦能力を維持するための、防具。
戦うための姿勢を見せ続けることが、果たして軟弱だろうか?
相手のパンチを避けるボクサーは、軟弱だろうか?

何より、周りからの視線に左右されるその心こそ、軟弱なのではないか。

おわりに


40度近くまで上がる昨今の炎天下では、男女問わず日傘を差した方がいいと思っている。
もちろん、日傘を差す差さないは個人の自由である。
でも「差す理由」「差さない理由」はそれぞれしっかり考えた方がいい。
そこには、無自覚の男女差別があるかもしれないから。
何より、無自覚なまま、健康を損ねるような事態はない方がいいと思うから。

考えた上で、多くの人が日傘を差しますように。

名角こま

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