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人間の幸せの変化を生物の成長曲線から考える

ひとことで言うと

人類は成長曲線の変曲点。「無限の経済成長に向けた合理化」から「有限の中での持続可能な幸福のための共存と共生」へ

この本を読んでのメモ。


成長曲線とは

ある生物の個体群の増殖を、横軸に時間、縦軸に個体数をとってグラフにするとS字カーブの曲線になる。これを成長曲線と言う。 (下図の赤のライン。図はWIKIBOOKS高等学校生物より)

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最初に増殖をするための準備を整え、その後一気に個体数を対数的に増やす。ただ同じ環境では栄養などの資源は限られているために、だんだんと増殖速度は収まり定常状態に入る。

人類の生命曲線

人類も同じように生命曲線に当てはめて考えてみることができる。その時の人類の生命曲線はこんな感じ(本書より)。

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増加がなだらかだった原始時代から始まり、文明ができて人口がだんだんと増え始めた。そして近代ではそれが爆発的に増える時代であった。現在は図の④の変曲点にあるのではないか。またそれによって世の中の価値観が変化していっているのではないか。

爆発的な成長期としての近代

近代社会は人類の爆発期だった。種として増えることであり、物質的な豊かさを追求することに主眼が置かれた。そのために重要なのは経済成長のための合理化である。合理に行動することによって世の中の価値は増え、経済的にどんどんと成長する時代であった。

マックス・ウェーバーは近代社会の基本的な特質を、生のあらゆる領域における〈合理化〉の貫徹であるととらえ、これを〈魔術からの解放〉、脱魔術化と呼んだ。

価値観の変化

経済的な豊かさは格段に増した。それと同時にこの成長が無限ではないことが認識されるようになってきた。先進国の若者を中心に価値観の変化が見られ始めている。

四〇年間の青年たちの精神の変化を追跡してきた調査が見出した三つの大きな分野における変化。 ①「近代家族」のシステム解体と、関連して婚姻主義的な性のモラルの解体、②「生活満足感」の増大と、「保守化」、③〈魔術的なるもの〉の再生、は、一見たがいに無関係のもののように見えるが、この節で見てきたように、経済成長課題の完了、これによる 合理化圧力の解除、 あるいは減圧、ということによって、一貫した理論スキームの中で、明晰に全体統合的に把握することができる。
共通して大きく増大している価値が「寛容と他者の尊重」であった。
「寛容と他者の尊重」ということは、「成長と開発」に代わって「共存と共生」が基調となる第Ⅲ局面の基本的な価値であると考えられる。

これは曲線が変曲点にあり、有限である物質面の満足度ではなく、経済に依存しない幸福の拡大を図っていると見ることができる。

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