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よく、聞かれるのは「老後に必要なもの」はなにか? ということ。

これだけは! というものは……

日常生活が困難になっていくときを想像したことがありますか? 私は30代で母親の介護に直面しました。そのときが、「老い」に実感をともなっていく最初だったと思います。その後、沢山の方の高齢期や最晩年の物語を見聞きする機会を得ました。

実際に、私たちが手がけているような高齢者住宅を選択するとなると、家族の関係やご事情を事細かに伺うことになり、それはいずれもドラマチックで、同じということはないのです。ただ、そうしたお話によく耳を澄まし、ご相談者の心の奥にある思いを伺うと、ひとつの言葉に行き当たりました。

キーワードは「価値感」です。



人間、ぽっくり死にたいと望んでも、そうなる人とそうならない人がいますよね。そして、大抵の人たちは長短はあるものの、やがて誰かの支えが必要となります。体も心もね。

これを支え、尊厳を持った暮らし方を維持することについては、みなさん想像をすることができますし、世の中的にもそうあってしかるべきと考えられるようになってきました。

わが家は土間のある玄関。そこに床材をおいてグリーンを楽しみます。

しかるべきに一番大事なことは、価値感だと思います。
具体的なケアだけではなく、人間は死んでも自分の価値感に近い人が周辺にいることが重要なんだということ、なのです。たとえ、寝たきりになっても、意思を伝えることができなくなったときでも、価値感のあった人、近い人が自分の周辺にいること。自分の意思を伝えることができる環境づくり。それがとても重要なんです。

ホントのところの相手の価値感


考えてみると当たり前ですが、究極、自分の思いを共有できていない人が近くにいたら、支えにはなりません。心身が不自由になったときには、かえって障害になることだってあります。元気なら「放っておいて」と言えるけれど、そうもいかない。

これは、一朝一夕ではできないことですね。気が合うといったところから始まって、関係性を築いた人たちだからこそ価値感を共有できる。「気が合う」という人は友人、知人のなかにもけっこういるかもしれません。なんとなく好ましい感じ、というのはとても大事ですけれど、そこだけでは関係は長続きせず、深くもなりません。

それを、「わかりあえる関係」といえるところまで築きあげるのは、なんらか活動や仕事を通して、お互いに率直になれるようでないと成立しません。

思ったことを言える関係ですね。これ、いまの社会ではとても難しいことのようですね。若い世代の人たちの話を聞くと驚きます。親しくなればなるほど、もめたくない、負担や心配をかけたくない、と問題を先送りしたり、なかったことにする。それで、孤独だという。
腹を割って話すといった言葉が死語になっています。
でも、それでは、ホントのところ相手の価値感なんてわかりません。

これだけは譲れない。これは絶対嫌。これが好き。こんなことが心地よい。
そういったことも、思いを交換しあい続けて「へえ〜、そんな感じ方、考え方もあるのか」と知り合っていくのです。

小物が大好き。物に執着はないけれど、かわいい!と思うと買っている。

私の仲間と言える人たちとは長〜くつきあっていても、「へえ! そうだったんだ。そんな好みがあったのか」と新たな発見が度々あります。そして、「なぜ、あんなことが好きなんだ? わけがわからない」と思うこともあります。近しくしていても、やっぱり思い込みはあるんです。自分の良いように他者を想像してしまうのです。

そういう関係が作れればよいのはわかるけれど、難しすぎる? そうですね、そういうことを自分だけでなんとかしようとしても難しいかもしれません。性格もあるし、それぞれの抱えた人生や条件がちがいますから。でも、だからといって、いつも自分を閉じ込めていてばかり、人に頼りきった日々に我慢することもない。

誰かがある程度の環境を用意することができたら、その環境のなかで他人と関係を作っていくレッスンができますよ。夫婦や親子、家族以外の人たちと、活動を通して自然と無理なく自分を開いていくことができる。さまざまな活動のステージで自然と、率直に自分を出していく修練を積んでいくのです。

この様々なステージをみんなで用意していくのが、「100年コミュニティ」、「那須まちづくり広場」なんです。人には得手不得手も、好き嫌いもある、物にも人にも環境にも。「これがやりたい」「これが好き」を寄せ集め合って、どうしたらそれが実現できるかを考えます。

「那須まちづくり広場」には、完成型はありません。私は勝手にガウディ!と呼んでいます(笑)。そこに人が集まり創りつづける。100人100様の思いをその人なりのペースで創造し続けるのが理想。

そういう意味では、まだまだスタート地点の「那須まちづくり広場」です。紹介が遅れておりましたが、こちらホームページで概要がわかります。仲間作りのきっかけや、お試し体験が、無理なく自然とできる仕組みを次々に仕掛けていますよ。

もちろん、一人が好き、みんなでは苦手、という人の居場所もあります。

長年関係を築いてきた仲間たちと「那須まちづくり広場」の活動の背景を描くシリーズ本もあります。どうぞご一読を。
那須まちづくり株式会社・代表 近山恵子
(20220916−3)


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