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母への後悔。「ギブアンドギブ」の基本は分けない、情報を共有すること。広場や交流拠点で実感を。

そうとう迷った挙げ句の失敗


小西綾という近山の人生の師匠の名は度々、このブログにも登場します。私が初めてこの師に出会ったのは20代後半、小西さんは70歳を過ぎていた(ご興味あるかたは前回のブログをお読みいただけますと幸い)。

https://editor.note.com/notes/n23feaa194e72/edit/

そして、この小西綾のパートナーでもある駒尺喜美さんに導かれるように、私は30代後半で高橋英與氏と出会います。この高橋氏とはその後、高齢者住宅やコミュニティ創成の仕事を共にしてきます。この高橋氏について書くと、これまた1冊の分量になるので、いまは省略。

そして、40歳になる直前に母との暮らしが始まります。介護が必要になった母と自分たちが創成したシニアハウスに入居をすることになったのです。
この母との日々は、これも書いていくと1冊になってしまうので割愛。

この母にしてこの近山あり、といった母ではありましたが、その母がいよいよ弱りきり、心身ともに危ういなと思っていたころのこと。母がごく親しくしていた人が、亡くなったのです。それで、私はそのことを母に伝えようかどうしようかとかなり迷ったのです。弱っている母にショックを与えることになると。相当に迷った挙げ句、私は伝えないことを選びました。

前列向かって左が小西綾さん、その隣が駒尺喜美さん。近山は後列右だよ!

でも、その後、師匠・小西綾が終末期を迎え、自力での暮らしが難しくなったとき、私はそのことを後悔することになりました。小西さんは認知障害も出て、仲間たちと言葉を交わすことも困難になっていきます。それでも、パートナーであった駒尺喜美さんは、小西さんに関わることや、相談事は、関係者とともに小西さんを囲んでするのでした。

最後まで場と情報を共有するルール

仲間として家族として最期までみんなで情報を共有すること。こちらの思い込みで、その仲間から外すことを駒尺さんは許しませんでした。たとえ周囲の人たちが、理解していない、できないように見えたとしても、本人の意思が伝わらなくても、共に場を共有する。それがルールでした。

そこに在る人格として、存在を皆が感じることが大切。人格を重んじるというのは、他者が自分の都合や思いで人を分けないということです。

現状では、年齢を重ねたり、人生のはじめから、もしくは途中で、「障がい」者になれば、誰かに支援をされるだけの側の人となり、一人の人間として尊ばれることがなくなりがちです。一方的に施しを「受ける側の人」になるのです。高齢社会になればなるほど、より多くの人がそうした立場になりますが、そんなとき周囲のとるべき態度の原則を師匠二人に教えられたのでした。

出産時の医療過誤で重度重複障害の人となった山口天音さんも19年の生涯を
常に家族のなかで生きた。後方左は母・ヒロミさん

ギブアンドギブに抵抗を感じるのは、なぜだろう?


ここのところのブログで続けて書いてきたように「ギブアンドテイク」で考えると、私たちはやがてテイクのない人になる。テイクしようにもできない人になる。多くの人が。私もあなたも。
誰にも等しくそのときが来ることを考えたとき、そこで人として尊ばれることがないとしたら、人生とはなんだろうと思ってしまう。

ギブアンドギブに抵抗を感じるのは、なぜだろう?
ギブアンドテイクをフェアに思うのは、どうして?

個人の努力や忍耐を超えたところで、老いも若きも
性別も超えて、生きがたさ、息苦しさ、生きる手応えを感じられなくなっている今。なにをしても、不安と不満を感じてしまう人が多い社会で、どうしたものかと迷い佇んでしまいそうになる。そういう悩みを聞きます。

思わず、本当にあなたが求めているものはなに? と問いたくなるし、自分にも問いかけてみたりする。すると、私はやっぱり「ギブアンドギブ」というフレーズが浮かびます。そこに希望を見つけたい。

那須まちづくり広場で打ち合わせ。電話は日に何度かかってくるだろう。

自分の持てるものを必要としている人に手渡し続けることを、みんなが実践しはじめたら、奪われた、利用されたと思わずに、もしくはそう思う前に、「ギブアンドギブ」が広がったら、世の中の立て付けが変わるように思うのでした。

みんなが憧れるような仕事に就くとか、誰もがうらやむような暮らしをするとか、そんな他人のお眼鏡にかなう到達点ではなく、わが心の底からよし! と思える時を重ねたら、人を信じて自分を信じて生きる心地よい人生が手に入る。そう実感もしています。

小西綾さん、駒尺喜美さんら諸先輩方に与えていただいたすべてを、いま若い世代にお返しをして生きたいのだが、近山のこの話、重すぎるだろうか。
そして「ギブアンドギブ」は、どんな状態になろうとも家族や仲間がお互いに持てるものを分け与え続けるという実践を通して、その心地良さを実感していただくしかないと考えています。

那須まちづくり広場で、多摩や豊島の交流拠点で、その環境や機能を利用していただければ、幸福度がアップすると信じてやまない近山なのでした。


(20230525−26)


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