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近山たちは「那須まちづくり広場」をどんな場所にしたいのか?

高齢期の暮らしは、個人の問題ではなく社会問題

先に「那須まちづくり広場」の「サ高住」に取り入れた「終身にわたる家賃の全部前払いシステム」についてお伝えしました。
とくに、女にとって「家」は命の要ということも。これは、子どものころから身に染みていることで、屋根と鍵のある自分の城は必須です。

そもそも、私たちはこうした高齢期の暮らしは、個人の問題ではなく社会問題だと思っているんです。
社会問題に自分一人で、もしくは家族で抗しようというのは土台無理です。個人で解決できる問題ではないことを、みんな自己責任といった感じで頑張ろうと呪いをかけられているみたい。もっと、怒ったり開き直っていいのになあと思います。

近山は「なんでもやる」とは言ったけれどね、なにをやらせる気? と思った撮影も経験。

これは、けっこう皆さん、自分自身の思い込みに囚われているんです。
そんなことは、もうやめようよ。考え方や価値感を変えて、自分たちの幸福を追求しようというのが、私の「まちづくりプロジェクト」の基本にあります。
人間はひとりでは生きられない生き物で、また一人ではどんなに金や健康をもてあましていても、幸福とは思えないでしょ。

自分たちだけが生き抜ければいいわけじゃない。やはり周囲みんなが笑顔でないとダメ。

孫子が将来苦労することを望まないですよね。私には血縁の孫子はいませんが、子どもが傷めつけられるのは心身に応えます。そういうものですよね。

「住宅作り」ではなく「まちづくり」

ですから、「まちづくりプロジェクト」は、必ず孫子の代まで継続できるっていう考え方になるんです。
ま、それをわかりやすく「100年コミュニティ構想」と呼んでます。

那須は田舎町です。例にもれず人口が減っていくという問題を抱えています。「100年コミュニティ構想」は、「那須まちづくり広場」の中だけで実現しても意味はありません。
だから、私は「住宅作り」ではなく「まちづくり」としました。

「那須まちづくり広場」を核として、那須町や周辺に多世代の人たちが移り住める。仕事があり、子育てがしやすく、老いても自分に役割があり、やりがいや生きがいのある地域になれば、自ずと人口は増えますよね。

「笑え」と言われたら笑う素直な近山で〜す。

それには、経済活動が必要です。移住のハードルが高いのは経済が成り立たないというところにありました。
那須であれば農業や牧畜など一次産業から、六次産業を拡充していくこと。経済がまわらないところで、人は暮らすことはできません。ただ、一人勝ちをしたり、大きな利益は必要がない。
地域経済がまわり、町で暮らす人たちが「幸せ」を感じながら人生を終えることができればいいわけです。

「那須まちづくり広場」の試みは小さいものですが、この発想やシステムが町のなかに広がり、それが様々な地域で実践されれば、誰もがたとえお一人様でも、最期まで自分らしく暮らせるのではないかと考えているのです。

「行政の困りごと」

このプロジェクトは、「ヒト・モノ・カネ・情報」という4つの観点から捉えて、その全てを解決できるプランを持ちながら進みます。
その際に、那須という地域にすでにあるものは作る必要がないですね。

いずれの地域もそうですが、行政が「まちづくり」を担うわけですが、
これには限界があって、行政ではどうしても、なかなかできにくいことがあります。そうなると、住民も困るわけですが、行政だって助けがほしい。

これを私たちはシンプルに「行政の困りごと」と言っています。そういう行政の手が入りにくいこと、解決には時間がかかってしまいそうなことを支援する体制が必要だと考えています。
民間の企業や組織が行政を支援をして、困りごとを一緒に解決していきましょう、という考え方です。

「怒れ」と言われれば怒る。素直を通り越しヘンなおば(あ)さんであることを自覚した日。

例えば、那須には里山がたくさんあります。その里山のひとつに高齢者住宅と六次産業を展開するという絵を、16年前に描きました。
それで、その隣に多世代型の住宅や環境共生型の住宅を作ろうと考えました。

でも、そこに2011年3月11日、東日本大震災が起こりました。
東京電力福島第一原発事故は大変深刻な原発事故となり、思い描いた構想の実践がなかなか難しい状態になってしまった。当時は、特に子どもたちを含めた多世代型の企画を進めるわけにはいきませんでした。

少子高齢社会の新しいまちづくりのモデルに

環境というものがなにより大事という大前提があって、次にはやはり住宅ありきなのです。なので、当初の計画とは少し変わってしまったけれど、「100年コミュニティ構想」は頓挫することなく、今日まで続いてきました。

東京電力福島第一原発事故から11年経ち、少子高齢社会はさらに進み、どうすれば……ということですが、高齢者が「人材」として活躍すればいいと思います。若い人が少ないことを嘆いていないで、高齢者たちが生き生きと役割をもち、楽しく暮らせばいい。

高齢者だけの施設に入って、悠々自適といった暮らしは、そもそもどこか歪です。年を重ねることで、社会と切り離されてしまうことが不自然。ですから、「那須まちづくり広場」はそこに住む人たち全員がなんらか役割がもつような少子高齢社会の新しいまちづくりのモデルになろうとしています。
(20221002−5)


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