妄想 その1

実はさっき死んだかも と思うことがよくある。

実はさっき死んでいて、その瞬間には世界が二つに分岐して今の私は生きている方の私で、死んでしまった私も並行世界にいるのかもしれない、と思うことがよくある。

実はさっき死んでいて、今生きていると思っている私は都合の良いようにさまざまな感覚を補完している私の脳のはたらきの帰結でしかないのかもしれない、と思うことがよくある。

実はさっき死んでいて、と思ったりしたけれど、こんなふうに考えている私も、今見えているこの世界全体もまた、誰かが作り出した創作の世界と同じように、「私」と思っている何かが作り上げた妄想でしかないのかもしれない、と思ったりもする。

しかし自分の想像もしないことが起こると、自分の妄想ではないのかもしれない、と根拠なく少しだけ安心する。本当と呼べるものは私の頭の中に少しだけあれば十分だ。

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