見出し画像

神の数式 ~この世は何からできているのか~『オッペンハイマー』を観る前に読んでおこう

2013年12月、ヒッグス博士の提唱していた「ヒッグス粒子」が、実験で確認できたという事実により、彼は、ノーベル賞を受賞しました。

その流れで、年末のNHKスペシャルで四夜に渡って「神の数式」という番組が放映されました(オンディマンドでもやっています)。

これは、物理学者が、「あらゆる自然現象は数式であらわせるはず」であるということで、アインシュタインの「相対性理論」からの歴史をおったものです。

いろんな国籍の物理学の天才達が、理論をどんどん発展させ、あらゆるものを解明していく人類の科学の姿や進歩は驚異的です。そして、その過程は、全く違う発想法が、ブレーク・スルーになっていて、それには、多様性が一つのキーになっているのだなと思いました。また、こういうスピードで、いろんなことが解明されているのであれば、後50年もすれば、どんな世界になっているのだろうとも思ってしまいました。


以下、ちょっと難解ですが、付き合ってください。今回は,「物理学」の話です。

1879年(明治11年)生まれのドイツ系ユダヤ人のアインシュタインは、1905年(26歳)に特殊相対性理論を(日露戦争の頃です)、1915年(36歳)に一般相対性理論を発表(1914年、第一次世界大戦勃発)。1921年(42歳)にノーベル物理学賞を受賞しました。翌年、1922年に日本にも一か月滞在しています。私の故郷の福岡にも訪問しました。そういえば、高校の中庭にその時の記念碑がありましたね。

さて、物質を構成する素粒子については4種類あり、電子、ニュートリノ、アップクォークとダウンクォークだそうです。(このクオーク(中間子)の存在を1935年(28歳)に理論的に予言したのが、ノーベル賞受賞者の湯川秀樹です)と数式(上図の式, NHKオンディマンドより)の歴史を振り返ります。これが「標準理論」と呼ばれるものです。

素粒子の数式の1行目(基本素粒子)は「ディラック方程式」と言われ、1926年(39歳)にオーストリアの物理学者エルヴィン・シュレーディンガーが量子力学の一形式である波動力学の基礎方程式として提案しました。彼の持論は、「物理法則は数学的に美しくなければならない。」という見る人の視点が変わっても性質が変わらない、物理学でいう「数式に対称性ある」ことが必要だということです。なんだかスティーブ・ジョブズのような話です。

2行目の原子どうしを結びつけている力の電磁気力の数式に挑んだのが東欧系ユダヤ人のオッペンハイマーです。電磁気力に対して成り立つ新たな対称性(ゲージ対称性)を求めることに成功しました。しかし、その理論には重大な欠陥がありました。「電子のエネルギーが無限大になる」ということです。無限大のエネルギーを認めてしまうとこの世界に物質は存在してはならないことになってしまということです。そして時代は、第二次世界大戦へ向かいます。彼は、原子爆弾開発を目指すマンハッタン計画に巻き込まれ、初代所長になり、原爆の開発を担当することになりました。こうして彼は「原爆の父」と呼ばれるようになったわけです。

彼は、原爆を威嚇としてでなく、実際に通常兵器のように使用された事に大変失望したそうです。そして、研究から距離を置いていた時、彼の元に被爆国日本の朝永振一郎という物理学者から手紙が届き、電子の無限大のエネルギーという矛盾を解決する複雑な計算方法(繰り込み理論)を発見したと言ってきました。それをオッペンハーマーの協力のもと、米国の物理学誌にその論文を1947年、41歳の時発表しました。(彼は、学生時代は女浄瑠璃や寄席に入り浸って、かなりの趣味人だったと伝えられています。)同時に他の物理学者も発表したので、1965年にノーベル物理学賞を三人で共同受賞しました。これで二行目の完成です。

3,4行目の数式は、中国人物理学者のヤンにより1954年(32歳)に解明されました。この数式はゲージ対称性の発展形であり「非可換ゲージ対称性」というものでしたが、この数式によれば力を伝える粒子の重さがゼロになってしまうという現実と相いれない矛盾をうむものでした。

クォークの重さの謎を解決したのは、32歳で渡米した南部陽一郎でした。彼が2008年にノーベル物理学賞を受賞したのは1961年(40歳)の「自発的対称性の破れ」という理論でクォークの重さの謎を解明したことによるものでした。彼は、異質の天才と言われ、素粒子以外の物理学全般に精通しており、過去のやり方に固執せず、自由な発想を得意としたそうです。「未来の事は南部に聞け」と当時言われていたそうです。

電子とニュートリノの「重さの謎」については、アメリカの物理学者ワインバーグは1964年に予言されたヒッグス粒子というこの世には存在しない都合のよい粒子を素粒子の数式に導入して電子とニュートリノが重さをもつことの説明に成功しました。

それで、ヒッグス粒子は予言から40年後の2012年に発見されました。これが素粒子の数式の5行目の完成で、この発見により、英国人のヒッグスは、今回ノーベル賞を受賞しました。

これで「この世は何からできているのか」が数式によって解明された事になります。

さて、次は、「宇宙はどこから来たのか」です。

宇宙理論と言うと、「車椅子の物理学者」として有名なイギリスのホーキンスですよね。1965年(23歳)「特異点(ブラックホールの中心)定理」発表しました。宇宙誕生の謎は、その答がある場所は光さえも出てこれない巨大な重力の源のブラックホールであると言っています。子供の頃、このブラックホールに非常に興味をもちましたが、全て吸い込んでしまうのなら、宇宙には何ものこらないのではないのかとか思っていました。

宇宙の存在は、標準理論だけでは、解き明かせないそうです。なぜなら、「重力の数式」が含まれていないからだそうです。素粒子理論と一般相対性理論を組み合わせても宇宙の謎は解明されません。それは、この世界には時間と空間の4次元だけでなく「異次元」が存在するからだそうです。

ブラックホールの中心では重力は無限大になり「特異点」と呼ばれていますが、そうすると宇宙の始まりが解らなくなってしまうわけです。

そして、1974年にシャークとシュワルツ(米国人)という2人の物理学者が「非ハドロン粒子の双対モデル」という「超弦(ひも)理論」の論文を発表しました。無限大の問題は素粒子を「点」と扱うためにおきていて、素粒子を輪ゴムのような形の弦だと仮定すると、この問題が解決されるというものです。

超弦理論によれば宇宙はまず10次元世界として生まれたことになります。これが、物理学の専門家にはうけいれられないものでした。そして、シュワルツとグリーン(英国人)は超弦理論の数式に一般相対性理論と素粒子の数式が含まれているか検証を始め、長い計算の果てに彼らは最後の計算にたどり着きました(496という数字が次々とあらわれてくるそうです)。これで、超弦理論は物理学の最前線に踊り出ました。

その後、ホーキンスが再登場して、学会に「ホーキンス放射」という挑戦をします。それは、質量がないはすのブラックホールが熱を帯びている謎です。

これに挑戦したのが、超弦理論を研究しているポルチンスキーでした。彼は超弦理論を進化させて、「弦」はまとまって「膜」のようになるとして解決しました。この問題を提起したホーキングは2004年に敗北を認めました。ブラックホールの底の謎は解明されたわけです。

さて、人類は宇宙誕生の謎を解くことができるのでしょうか?次のターゲットは「異次元の検出」だそうです。

私には、すごく難解な話でしたが、人類が100年かけてここまで、解明できたことに感銘を受けますし、今後の100年で、またどのくらいの事が解明されるのだろうかと思うと本当に人類が神の領域まで行けるのではないかような感覚を受けました。そして、天才たちは、比較的、若い時に大発見をしていることに驚きますし、そして、その中に少なからず日本人物理学者もいることも誇らしくも思います。

物質の最小の形は、素粒子という球状の物と思っていましたが、それは輪ゴムのような「ひも」だそうです。そして、世界は、我々が認知できる4次元の世界でなく、我々には、見えない11次元の世界だそうです。

私の理解力を超える話ばかりですが、時々、こういうことを考えるのもアリだなと思いました。

3,459


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?