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コレクティブ エクササイズを適用したプレハビリテーション2

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4 目的はケースバイケース

クライアントがその後に予定しているそれぞれの医療処置に対して最良な結果を確実にするためには、それぞれの目的があるといってよいでしょう。

たとえば、全人工膝関節置換術を受けるまでに大腿四頭筋の筋力を維持することで、術後の回復が早まる可能性が高く、可動域の改善が容易になります。回復とQOLの改善を目的とした例では、がん治療に向けての心肺機能の強化や筋力の維持があります。

クライアントが予定している医療処置だけでなく、手術後の急性リハビリテーションのプロセスも非常に重要です。時間をかけて理解しましょう。このような情報はプレハビリテーションを目的とするクライアントに向けたプログラムを作成し、優先順位を考慮する上でとても重要です。

5 コレクティブ エクササイズ コンティニューアムの活用

プレハビリテーションを求めるクライアントの多くには、姿勢の機能障害や代償動作があります。「better in, better out」の概念を考えると、姿勢の機能障害と代償動作を伴うクライアントが手術後に改善している可能性が高いと考えるのが妥当です。
 
また、クライアントが杖、松葉杖、歩行器、その他の移動補助器具などのツールに依存することもよくあります。これらのツールの使用がオーバーユーズに繋がる可能性もありますので、その対処法も考えておくとよいでしょう。

コレクティブ エクササイズにおけるNASMのアプローチは、問題を特定し、解決法を見つけ、そしてそれを実践する、という体系的なプロセスです。

① 問題を特定する
CESは、静止、移行、動的、それぞれの姿勢や、問題を特定する上で役立つ関節の可動性など、多くのアセスメントを行います。

オーバーヘッドスクワットのような移行する動きのアセスメントを利用することで、どの筋肉が過剰に働いているか、またその筋肉を抑制、または伸長させる必要があるか、そしてどの筋肉を強化する必要があるか、などの洞察が得られます。

一部のクライアントは、スクワットが禁忌事項であったり、補助器具の使用によって実行できなかったりする場合があるため、関節の可動域をアセスメントする際は状況に応じて柔軟に対応しましょう。これらの情報と担当医が設定した目標と組み合わせ、プログラムを計画します。

② 問題の解決法
解決法は、コレクティブ エクササイズの作成プロセスと関連しています。コレクティブ エクササイズ プログラムには、コレクティブ エクササイズ コンティニューアムという4つのフェーズがあります。

1)抑制
2)伸長
3)活性
4)統合

1)抑制フェーズ には、過活動組織の緊張や活動を軽減するための筋膜テクニックが含まれます。

2)伸長フェーズに は、組織の拡張、伸長、および可動域を広げるために必要なストレッチテクニックが含まれます。

3)活性フェーズ は、活動が低下している組織の改善、または活性化の向上を目的としたフェーズです。クライアントのアセスメントの結果から、どの筋肉を抑制または伸長、そして活性化すべきかを導きます。

4)最終段階である統合フェーズには、機能的に進行する動きによって、筋肉組織全体について包括的に相乗作用機能を再訓練するためのテクニックが含まれています。例えば全人工膝関節置換術のプレハビリテーションでは、目的である大腿四頭筋の筋力や下肢の安定性ということから、この統合フェーズでのエクササイズの選択を導くことができます。

動きや可動性を定期的に再アセスメントすることは、筋力やスタビリティの改善を調べるために優れた方法です。エクササイズの強度や進捗など、プログラム変数を詳細に見ることも、クライアントの状態を把握するためにとても重要です。

③ 解決法の実践
コレクティブ エクササイズプロセスの最後のフェーズは、2番目のフェーズで明らかとなった解決法の実践です。実践には、選択したテクニックの指導、キューイング、および計画した解決法の管理が含まれます。

プレハビリテーションのための解決法の実践は、クライアントの医療処置の前に最大6週間行う場合があります。

まとめ

近年、プレハビリテーションは手術後の回復の改善、リハビリ期間の短縮が期待され、可能であれば医療処置前に行うべきものとして認識され、広く普及し始めています。

CESは、手術やその他の医学的介入を予定しているクライアントの動きの質、筋力、スタビリティ、バランス、そして可動性を高めるサポートをすることで、重要な役割を果たすことができます。 CESは、コレクティブ エクササイズ プロセスを活用することで、神経筋骨格機能障害を体系的に特定し、行動計画を作成し、統合されたコレクティブ エクササイズを実践することができます。

同じ医療処置であっても、個々のクライアントのニーズは異なり、誰にでも適応できる万能なプレハビリテーションプログラムなどはありません。コレクティブエクササイズスペシャリストが担う責任は、あくまでもクライアントの包括的なケアの一部であり、クライアントの担当医の指示に従うことが重要です。

 
著者

アンドリュー ミルズ


ANDREW MILLS アンドリュー ミルズ
NASMマスタートレーナー、全米スポーツ医学アカデミーCNC、CES、PES、FNS、およびBCS認定取得。マッサージセラピスト。

NASMブログ記事より
https://blog.nasm.org/prehabilitation-guide
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CES(コレクティブ エクササイズ スペシャリスト)についてはこちら
https://trainer.j-wi.co.jp/specializations/ces/

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