後遺症が残った過失10の交通事故に遭った話⑪ 訴訟のための準備

こんばんは。お久しぶりです。
訴訟の話の前にと当時の資料を読み返していたら随分間が空いてしまいました。
しかも思い出して再ダメージを受けました。
みなさまは事故に逢いませんようにと切に願っております。

ちなみに、ダメージを緩和しようと昔好きだったロード・オブ・ザ・リングやホビットを見直していました。
ホビットの2・3作目はアマゾンプライムの無料版に日本語字幕が見つからず英語字幕で頑張っていたら、解読するのを含めて、3時間の映画に6時間もかかりました。
しかも覚えた単語は「要塞」とか「家宅侵入泥棒」とかの普段使わなそうなものばかり、
覚えた文章も「9つは死する定めを課せられた定(短)命の人間のために」とか、中二病感あふれるものです。
ガラドリエル様風にドヤ顔で使ってみたいけど使いどころが謎です。

とはいえ、
素晴らしい映画と映像ですっかり心も癒えたので、
今回は訴訟の準備について、大事な部分も含めて書いていきたいと思います。


まず、訴訟にあたって、前回も書きましたが、
 〇診断書、カルテ類、検査記録
 〇後遺障害の認定書類
 ・警察での調書
 ◎物損のレシート、請求書類
 ◎事故に遭わなければ使わなかったであろう金額のレシート、請求書類
 ・後遺障害によって将来にわたって発生するであろう損害分の算定根拠書類
が大まかに必要になります。

弁護士費用は、あくまで私の代理として私が個人的に雇っている方のため、訴訟対象には含まれません。
ただし、自分のかけている保険の中に弁護士費用特約があるものがあれば、実際に弁護士さんに支払った分はその保険から補填してもらえる場合があります。

○の2つはすでに前回の時点で集めて弁護士さんへ渡してあります。

・の2つは弁護士さんが委任状を持って収集に当たってくれますし、
特に下の・については正直弁護士さんに頼まないとまともに保険会社と闘えるほどの仕上がりにならないと思います。
お金はかかりますが、後遺障害が発生するほどの事故にあった訴訟であれば、絶対に”交通事故案件を多くこなしている”弁護士さんに頼んだ方が良いです。
(交通事故に詳しくない弁護士さんだと自力で頑張るのと同じレベルになり、弁護士費用がもったいないだけになる可能性もあります。)

そして、◎が地味に面倒でした。

物損の場合だと↓このような感じです。
〈壊れた自転車〉
①完全に壊れているのを自転車店で確認してもらって、修理不能の書類を書いてもらう。
②購入当時のレシートか請求書を探し出す、もしくは現在の定価がわかる資料を集める。

〈事故時に破損したセイコーの腕時計〉
①血まみれだったので自分で一回洗ってからクリーニングに出し、クリーニング代は自腹で払っておいて領収書を確保する。
②破損部分の交換にかかる費用を確認するためにセイコーの修理受付に出し、廃盤品で部品がないと言われたのでその旨を書いた書類(証拠として提出する必要があります)とともに返品してもらう。
③購入当時の価格がわかる資料を探し出す。
※①②は一緒にセイコーに頼んでもいいと思いましたが、セイコーには事故のための書類を集めている旨伝えなくてはならず、ブツが「血まみれの時計」だと判明して断られたら困るので、綺麗にしてから修理に出したかったのです。自力では思ったより取れなかったのでクリーニングに出しました。


意外とやり取りが多く、しかも廃盤ものは何年も前の購入当時の資料をどうにか探し出すのに苦戦します。
家に領収書がなさそうならネットで当時の価格を検索したり、販売会社に問い合わせたり。

とはいえ、案外こういう販売店の方は優しくて親切な方が多く、
私はこのやり取りで随分癒されました。

例えば、自転車店の方は壊れた自転車を見てたいそう心配してくれましたし、親身になって書類をそろえてくれました。
正直この壊れた自転車を自転車店までもっていくのにへとへとになっていて、一人で引きずりながら横断歩道を渡りつつ、
『くそう、事故さえなければこんなこと!なんでただでさえ手首が痛いのにこんな変形して持ちにくいチャリを・・・!』
と病みかけていたのですが、
自転車店前に到着した時に慌てて飛び出してきた店員さんに
「お客さん!どうやってそれをここまで・・・自力ですか?どこから?!
とりあえずもうそこに置いておいてください!こんな状態のもの、よく抱えて持ってきましたね。というか自転車がこんな状態になるなんてどうしたんですか、大丈夫ですか!?」
と言われたのでスッと落ち着きました。
不思議になんだかやり遂げた感がありました。
私は徒歩で来ましたが例の「チャリで来た。」のプリクラを思い出しニヤつき、親身な店員さんに癒されました。


もう一つの◎の、事故に遭わなければ必要なかったであろう金額は、
入院のために準備したパジャマのレシート、祖母が見舞いに来た時の見舞いにかかった費用(祖母の記名と印鑑付きの定型の交通費の内訳書)、入院時に買ったあれこれ、余分にかかった学費や家賃、
等です。
私はレシートを張り付けた家計簿を作っていたので、偶然にもこのレシート類が家にあって助かりました。
今なら電子家計簿化しているので捨てていると思います。


弁護士さんに頼んだ場合、自分で準備するのは○と◎のため、訴訟開始前に一式を弁護士さんへ渡せば、ほぼ私の作業は終わりです。
あとは弁護士さんが色々と算出し、闘ってくれます。

特に金額が大きくなるのは、
遺失利益という、後遺障害のために将来にわたって損失するであろう額です。
後遺障害のために仕事が制限されることで、今まではできていたのに事故後にできなくなる職種について、どれくらい給料が減る可能性があるのか、ということを算出します。
また、事故に遭わなければばもっといい給料の会社で働けていたのではないかという可能性や、怪我の醜痕を人に見られることによって将来にわたって受けるであろう精神的な苦痛の慰謝料、もあります。

私の場合は、複視や目の障害による痛みによって例えば目を酷使する仕事や視野を広く保たなければならない仕事ができなくなることによって仕事能力が何パーセント落ちるのか、を算出してもらい、それに相当する金額を提示しました。
あとは、顔に傷があるので、そのことによる精神的な苦痛を今後65歳まで味わうとした時の慰謝料、ですね。
なぜかわかりませんが、法曹界ではこういうことは基本的には「65歳まで」で計算するようです。

遺失利益は私の場合は訴訟開始時は会社入りたてで基本給が安いために大きな金額にはならなかったのですが、
例えばこれが35歳で年収1000万の人だったら、例えばその30%の能力が低下するとして、65歳まで働くと仮定すると、単純な仮計算で
(65歳-35歳)×(1000万×0.3)=9000万
という大きな額になります。
実際はもっといろいろと絡む複雑な計算のようでしたが。

あと、見た目に関する精神的苦痛の額については今までの判決とか基準とかがあるらしく、どのくらいの醜状だとどれくらい、という表があるようです。


最後に弁護士さんが準備してくれる・の根拠書類は、
過去の判例、「法律ジャーナル」的な専門書に記載されている参考事例などでした。

私の場合は、大きな争点になりそうなのが、
1.被害者は歩行者扱いか、自転車扱いか(私は自転車をこがずに足でつきながら進んでいたので)
2.複視は治っていないのか、痛みは残存しているのか
3.顔面の醜状は本当に客観的に目につくのか
でした。

なので、弁護士さんは、
1については過去の判例や事例をもとに、より私の過失割合が軽くなる「歩行者」とみなせるであろう根拠を集め、
2については、カルテ等と私の現状(検査結果や写真等)を根拠に、
3については、主治医の診断書と、実際に後遺障害認定が出たことを根拠に、
書類を集めて訴訟を開始しました。

というか、弁護士さんと契約して保険会社とやりとりを始めて1年くらいは示談に向けて色々していたのですが、
あまりにも保険会社が1~3について私が圧倒的不利になるような条件で出してくるので嫌になりました。

相手は、
私が飛び出したのに「周囲を見ながら渡っていた」などと嘘をついている、複視は治ってるはずなのに治っていないと主張しているし顔面の醜状も目立たないのに「気になる」と主張している、
と言ってきていました。

何度も会っている弁護士さんが「確かに目の左右差が横顔でわかりますね。しかも周囲を見た時に左右で黒目の位置がズレてますよね。」と言ってくれるレベルなのに、
一度も会ったことのない保険会社に私の顔面や複視の何がわかるのだろうか、と思ってしまいました。

とはいえ彼らはこの訴訟で負けてしまうと、次に同様の案件があれば同様の金額を払わなくてはいけなくなります。
あまりに会社からの支払額が大きくなれば保険の契約料も増え、契約者(顧客)にも負担を強いることになります。
つまり一般の顧客のために私を犠牲にしているともいえますし、みんなのことを考えるなら私は負けた方がタメになるかもしれません。
世の中は複雑で難しいものです。

そういえば、見た目についてはお見舞いに来た2年ぶりくらいに会った友達に
「なんか、鼻曲がったし、目もちょっと変わったね」
と言われるくらいでした。

鼻、そう、鼻も曲がってるんですよ、実は。もう怪我が多すぎて複視もどうなるかわからないし、当時は色々面倒で言わなかったのですけど。
鼻が少し曲がって左の鼻の穴が狭くなり、インフルエンザとかの検査時に鼻に突っ込まれる綿棒が左の鼻の穴だと通らないんです。
いっつも左に突っ込まれては「あれ、奥まで行かないな…。ちょっと右の穴に変えていい?」と言われるます。
『こいつ鼻でかいのに何で入らないんだ?』と訝しく思われてそうで地味にダメージが蓄積されます。

しかも怪我で涙腺が過度に繋がったのかおかしくなっていて、鼻をすごい勢いでかむと左だけ目から涙が出てくるんです。
今『それ、涙じゃなくて鼻水じゃないの?』と思った方!私は断固として「涙」を主張します!
・・・というか目から出てきているのは「目の中身」だったりしたら怖いな、と不安過ぎて、
お陰で私はかわいらしい鼻のかみ方しかできなくなってしまいました。全然すっきりできません。

すみません、またどうでもいい感じに私の鼻の話で脱線しました。

話を戻すと、あまりに保険会社の言い方や対応が悪いため、弁護士さんと「もう訴訟しましょう」という話になり、
事故から1年半後くらいに、私がちょうど働き始めたくらいに訴訟が始まりました。

きりもいいのでここで終わりたいと思います。
次は訴訟が終わるまで、のシリーズ最後の回になる予定です。
今年は休みが中途半端とはいえ、しばらくはゴールデンなウィークなのでまた次回まで間が空くかもです。


事故から2度目の退院までは思い出すに面白い事件が色々あったのですが、訴訟の間はただただキツいだけでしたね。
弁護士さんにほぼ全てお願いしていてもそうだったので、自力で保険会社と闘うのは私には無理だと感じました。

とにかく訴訟になると相手の保険会社は私を貶めて支払額を減らそうとする発言しかしません。
訴訟を考えている方は、保険会社の(真実とは異なる)主張が裁判官に認められることによる精神的なダメージや、しばしば相手から不愉快で腹立たしい言いがかりを受ける、ということを覚悟しておいていただくと、
ちょっとは落ち着いて対処できるのではと思います。
あとは、保険会社の担当者が不条理な話をしてくる時を除いて、彼らは「この件はなるべく支払わないでいきましょう」と上司に言われたりして仕方なく仕事で悪役をやっているだけなので、担当者へ悪意を向けるべきではないと感じました。

私はこの訴訟をきっかけに、
映画『チェンジリング』の不遇なアンジェリーナ・ジョリーや冤罪事件の報道などをみて、若干のフラッシュバックをするようになりました。
彼らは私よりよっぽど不運だと思うのでおこがましいものの、とんでもなく共感します。
しかも今回見直したロード・オブ・ザ・リングのゴラムにも部分的に共感しました。ほんの一部ですが。
私がゴラムに共感する日が来るとは・・・。衝撃です。人生って何があるかわかりませんね。

とにかく、訴訟に限らず、今非難を受けたりしつつもやり遂げなければならない大変なことを頑張っている方、
好きな本や映画、スポーツを見たり、友達とごはんを食べに行くとかでも何でもいいので、できるだけ自分で自分を甘やかしてあげてください。
これが終わったらあれもこれもするぞ!と楽しいことを思いながら頑張ってください。
でも頑張りすぎずに。体調や精神を壊してきて、もうだめだと思ったらポイっとしてもいいと思います。

それでは、また。
よい夜をお過ごしください。