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(創作詩)共鳴するモノたち

彼女は幻想的に舞い、
彼は創造的に笛を奏でる。

この二人の、一対の作品に対して、
私は気持ちが揺り動くのを抑えられない。

彼女は時に艶やかな蝶のように
時に恋する乙女のように舞い、

彼は時に野鳥の歌声のように
時に悲愴な叫び声のように笛を奏でる。

この素晴らしい作品に対して、
純粋無垢に感動する私がいる。

彼女は彼を信用し、
彼は彼女を必要としている。


この芸術を権力のため、政治のため、
そして、私利私欲のために利用してはならない。

そう思った同志たちがただ「好きだ」という感情のままに集まって、
二人を囲い、守り、養い、そして芸術を楽しんだ。

私は、この輪のなかのひとつの欠片として
存在していることにとても満足していた。

この時がずっと続けばいいと思っていた。
でも永遠はやはり訪れないし、
終わりは突如としてやってくる。頼んでもいないのに。

大きな大きなカラスが一羽、羽ばたいて、
彼の笛のマネをする。
彼女は、彼の笛かと勘違いし、妖艶に舞い踊る。
なぜ気づかなかった。彼の笛には似ても似つかなかったではないか。

舞いに集中する彼女は後ろから少しずつ忍び寄る脅威に気づかない。

それは一瞬だった。

その大きくて真っ黒なカラスは、彼女の両肩を掴むと高く高く空へと飛び立ってしまった。


美しく舞ってくれる彼女がいなくなり、
彼はただ、ただ、途方にくれた。

探せども探せども彼女はいないし、
彼女のような踊り手は現れなかった。

彼は、やがて笛を折ってしまい、
二度とあの陶酔させる音色を聴くことはできなくなった。


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私は、数十年前に体験したあの素晴らしい芸術を時折思い出しては、空虚な心の中で涙をこぼすのである。

(終わり)

頭の中に浮かんだストーリーを何も考えずに吐き出してみました。
何かを伝えたい!ではなく、何かを吐き出したい気持ちで書きました。

彼女は誰に捉えられた?
なんのために連れ去られた?
彼はなぜ途中で彼女を探すのを諦め、笛を折った?