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千文小説 その956:only, lonely, finally

 こんにちは、上村元です。よろしくお願いします。

 無印の第五世代は、やはり、もう古い。

 さりとて、現行最新版のモデルは、いずれも、心が動かない。

 …となると、iPadは、今代の、無印の第九世代で、続投するしかない。

 でも、続かない。

 春の初めに購入して、そろそろ、三ヶ月。

 何度も、リセット&再設定を繰り返し、いい加減、疲れてきた。

 昨日も、どうにもならずに、炬燵から下ろして、リセットし、箱にしまい。

 それでも、性懲りもなく、また出して、再設定し、薄紫のフリップカバーを付けて。

 目の前に、静かに横たわる機体は、さあ、どれだけ保つか。

 なんでかな…。

 どうして、iPadには、魂が、入らないのか。

 にちにちにちにち。にちにちにちにち。

 膝の上、一心に、おやつのするめをかじる愛猫の、大きなおしりを、抱き直し。

 正面の壁、ドーベルマンの肖像を眺めて、ため息をつきます。

 iPodも、iPhone12 miniも。

 リセットして、寝かせて、再設定したら、格段に、良くなった。

 もう二度と、彼らをリセットすることはない。

 未だかつてリセットされたことのない、iPhone7、iPhone14 Pro、MacBook Proと同様、寿命まで、どうぞ、そのままの君たちで。

 …iPadには、まだ、そうは言えないな。

 これから、言えるようになるのだろうか。

 それとも、駄目なものは、最初から最後まで、駄目なのだろうか。

 あるいは、ものすごく、時間がかかるのかもしれない。

 それこそ、何年も寝かせました、くらいの中断を挟まないと、うまくいかないのか。

 …OSのアップグレードに期限がなかったら、そうしていたかもしれないけれど。

 食べ物と同じで、賞味期限を過ぎたものは、なるべく、使わないようにしたい。

 過ぎる前に、ぜひ、これだ、という手ごたえを。

 にちにちにちにち。にちにちにちにち。

 本当は、わかっているのです。

 人間と機械にも、相性、向き不向きがあるのだと。

 iPad、すなわち、タブレット端末という形態のデバイスと、僕は、いまひとつ、かみ合わない。

 どうしても、すり合わせたいのなら、Proシリーズの、インチの小さい方、黒色系、256GB以上の機体を、導入するしかない。

 ただ、それは、あくまでも、最終手段。

 仕事上、やむを得ず、iPadを使う必要が生じ、しかも、長期にわたることが決定しているとか、収入を左右するくらいのニーズに迫られた時にだけ、許される奮発であり。

 ミュージック・ビデオを観たいな。

 電子書籍を読みたいな。

 なんとも可愛らしい、普段の欲求を満たすためであれば、それこそ、iPadでなくても。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 満腹で、寝落ちした愛猫を、西武ライオンズのバスタオルにくるんで、抱き直し。

 食べ残しのするめを口に、天井を仰ぎます。

 ProやAirは、買わない。

 miniだと、遊びになり過ぎる。

 …無印しか、ないのです。

 今後、iPadを買い継ぎたいのなら、無印シリーズ、最小容量、色やアクセサリーは、お好みで。

 過去を尊重し、現在も変えなくていい、最も自然な未来は、それだけ。

 それで、良くない?

 何を、悩んでいるの?

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 繰り返しますが、僕とiPadは、そもそもが、あまり折り合わない。

 Proであれば、まだしも、他のシリーズだと、必ずや、もめる。

 先代の、無印の第五世代とも、最後まで、小競り合いだったし、今代の、無印の第九世代は、リセット、何度目かな…。

 しかし、やはり、もめるものは、もめた方がいい。

 嘘をついて、無理をしてまで、うまくいかせる必要はない。

 もめましょう。

 使っていると、違和感のオンパレードだし、使わないと、無駄にしている罪悪感でいっぱいの、無印シリーズと、これからも、がんがんに。

 …厳しいな。

 やめたいな。

 じゃあ、Proを買う?

 …できないな。

 それをしたら、書けなくなってしまう。

 もめごとも、時には、原動力になります。

 iPadについて悩み抜くことで、引きこもりの僕は、他者というものの存在の、酸いも甘いも噛み分ける。

 人間ともめることは、ほとんどありません。

 唯一うまくいかなかった父は、既に他界しており、何につけてもクールな母とは、そもそも、ぶつかる要素がない。

 恋人や友達はいないし、仕事仲間とはドライな付き合いだし、愛猫と愛深海生物は、もめるほどの興味を僕に対して持っていない。

 せめて、iPadとやり合うことで、この世のどうにもならなさを、とことん味わい尽くしなさい。

 言葉の神が、そうおっしゃる以上、腹をくくって、もめざるを得ない。

 決めました。

 僕のiPadは、永劫、無印です。それでは、また。

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