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千文小説 その1025:消えた、の?

 こんにちは、上村元です。よろしくお願いします。

 …わかった。

 炬燵の上の電子機器集団、カメラレオンにおける、MacBookの条件。

 これまでは、Proシリーズであることが、命綱、と思い込んでいましたが。

 そうではない。

 MacBookの肝は、グレーであること。

 MacBook Pro、愛称は、MacBook Gris。

 フランス語で、黒幕、と言う時に、灰色の枢機卿、と表現するらしい。

 …なんて、ぴったりな。

 カメラレオンの黒幕、なんでもできる、最高峰デバイスにして、いまひとつ、曖昧。

 ブックアプリにバグがあったり。

 変なところで強情だったり。

 妙に暗がりを好んだり。

 メインなのかサブなのか、ProなのかAirなのか、模糊としたまま、MacBook Grisはゆく。

 グレーであれば、バッテリーの寿命まで、現役が、確定。

 その他の機能は、問わない。

 いや、ありがたいな…。

 Proを継続するには、価格の面で、ずっと負担だった。

 それが、見事に、外れた。

 MacBookは、とにかく、灰色。

 了解です。

 よろしくお願いします。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 膝の上、大爆睡の愛猫に、西武ライオンズのバスタオルを掛け直して差し上げつつ。

 天板の上、静かに横たわるノートパソコンに、深々と、頭を下げます。

 MacBookが決まったことで、自動的に、iPhoneも決まった。

 iPhone14 Pro、改め、iPhone Trois。

 今後とも、iPhoneは、三眼を貫く。

 こちらも、無印かProかSEか、ではなく、あくまでも、カメラレンズが三つであることが、条件。

 灰色のMacBookと、三眼のiPhone。

 彼らこそ、カメラレオンの本体。

 愛しい初代たち、iPhone7と、無印の第五世代のiPadを加えて、正規メンバー、これにて、確定。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 物事には、必ず、例外があります。

 逆に言うと、はみ出した部分がないと、存続できない。

 カメラレオンの偉大な例外は、第六世代のiPod touch。

 愛称は、iPod touch、唯一の、英語のミドルネーム。

 最も古い種類のデバイスにして、ぴかぴかの新参者。

 バッテリーの状態は良好なのに、OSが期限切れ。

 まともには、使えないけれど、れっきとしたカメラレオンの一員であることは、永劫、変わらない。

 五台で、いきましょう。

 廃版の三台は、買い替えなし。

 現役の二台は、同じ愛称で、全てを引き継ぐ。

 改めまして、どうぞ、よろしく。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 寝暴れる愛猫を、落っことさないように苦労しつつ。

 再度、愛機たちに、より深く、頭を下げて。

 いよいよ、本題に、取りかかります。

 iPhone12 miniと、無印の第九世代のiPad。

 …これは、もう、ともに、リセットするしかない。

 クローゼットに眠る、Intel搭載のMacBook Airと合わせて、Apple三兄弟。

 選べなかった方の人生を、見事に象徴する三台として、ごゆっくり、おやすみいただくのが、最適解。

 でも、ここから、本題なんでしょう?

 何に、引っ掛かっているの?

 …理屈と感情は、相容れません。

 リセットすべき、とわかっていても、やはり、どうしても、もったいない。

 未練が捨てきれず、ぐずぐずしてしまう。

 使わなくても、置いておけば?

 両方とも、OSは、アップグレード可能なのだから。

 いざという時、役に立つかもよ。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 役に立たないからこそ、正規メンバーではないのです。

 それだけは、この数ヶ月のもめごとで、痛いほど、身に沁みた。

 合わないデバイスを置き続けることは、長い目で見て、心身を害する。

 もしくは、完全に無駄な、エネルギーの浪費になる。

 iPhone12 miniにも、無印の第九世代のiPadにも、ケースを買って。

 前者は、すぐ処分。

 後者は、まだ残ってはいるけれど、まもなく、同じ道。

 子供の無駄遣いは、可愛いが、大人の散財は、ただの阿呆。

 知っていて、繰り返すのが、最悪の愚か者。

 そして、いつでも、自分は、お馬鹿さん。

 こいつ、マジで、どうしようもないな…。

 仕方ない。

 こういう奴なのだから。

 自分から動くまで、放っておくより、他にない。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 …とりあえず、位置、変えてみるか。

 ずるずる。

 かとん。

 ううむ…。

 きれいだなあ。

 「なごり雪」と「Pretender」が、ごっちゃになったみじめさの中、別の曲が、耳の底、立ちのぼってきます。

 その名も、「泡」。

 ぱちんとはじけて、あぶくのように消えた。

 いつしか、夢中で追いかけていたのは、影。

 …消えた、のかな。

 リセットの前に、とりあえず、充電に入ります。それでは、また。

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