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千文小説 その953:線対称

 こんにちは、上村元です。よろしくお願いします。

 …ええっと。

 これ、シート、剝がしてないよね?

 乗っけただけだよね?

 なんで、こんなに、ぴったり、くっついちゃってるの?

 触っても、取れないよ?

 ふんふん。

 すんすん。

 あぎあぎ。

 こらこら。

 炬燵の上の電子機器集団、カメラレオンのメンバーが、徐々に、定まりつつあり。

 最後の砦、iPhone12 miniを、駄目もとで、再設定し。

 データは、個別に、手動で、ダウンロードし、OSのアップデートも済ませて、やれやれ。

 それにしても、背面、白いな…。

 …そういえば、この間、iPhone14 Proが、ステッカーを替えて、元のものが、その辺に、置いたままになっていた。

 どこだっけ。

 おお、あった。

 乗せてみるか。

 そっ。

 ぴとん。

 きゅー。

 …ん?

 妙に、吸い付くような感触とともに、あっという間に、ステッカーは、miniの一部に。

 透かし彫りのようなデザインで、透明なプラシートに、黒線で、おどろおどろしい化け物たちと、立ち向かうヒーロー、シングル曲のタイトルがプリントされた、スペシャルエディション。

 とにかく、かっこいい。

 が。

 …ええっと。

 これ、シート、剝がしてないよね?

 乗っけただけだよね?

 となって、冒頭に戻る。

 むんふー。

 よしよし。

 ふわっ。

 むふっ。

 にーごろ。

 なでなで。

 執拗に、手元を嗅ぎまくる愛猫を、西武ライオンズのバスタオルで、頭から、おくるみし。

 大きなおしりを撫でさすりつつ、あまりの変貌ぶりに、呆然とします。

 なんだかわからないけれど、iPhone12 mini、これにて、完成。

 ケースもカバーもステッカーも、それはもう、いくつもゴミにして。

 永久むき出しか、とあきらめた果ての、この変身。

 SIMカード入ってるうちに、やってくれよ…。

 こんなかっこいいなら、今代として、使いたかったよ…。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 爆速で、爆睡に入った愛猫を抱き直して、イヤホンを繫いだり、画質をチェックしたり、電子書籍を読んでみたり。

 あれこれと、試すうち、納得しました。

 やっぱり、miniだと、持ちづらい。

 画面のサイズや、シルバーの縁や、インカメラ周りの凹んだベゼルも、現役当時よりは、気にならない。

 ネックは、ひとえに、薄過ぎること。

 わずか二代で廃版になったのも、おそらく、それが原因。

 さらに一回り小さなiPodの方が、かえって、扱いやすいという、中途半端な仕様こそ、iPhone miniの特質にして、弱点。

 いずれにせよ、長くメインで使うのは、難しかっただろう。

 早めに見切って、リセットし、こうして、サブ機として再誕する以外、打つ手はなかった。

 でもさ…。

 まさか、こんなかっこいいおまけが付くとは。

 実物をお見せできないのが残念ですが、極めてシックな、モノトーン。

 今はなき、縦並びの二眼レンズも、端正で、クラシカルな上品さがある。

 …だからこそ、なんだろうな。

 僕の持ち味と、ちっとも合わないもの。

 お読みになって、おわかりのように、僕の文体は、かなり雑駁。

 改行も句読点も多過ぎるし、知識は皆無、ひたすらに、同じことばかり言っているような、逆に、とりとめがないような。

 そのわりに、骨太で、ちょっとやそっとじゃ倒れない、妙な安定感を醸し出す。

 まさに、Pro。

 iPhoneとMacBook、二台のProシリーズで書いているから、というだけでなく、そもそもが、文体が、Apple製品のProに合う。

 意外にも、Proの方が、ゆるいのです。

 本体が、地味なので、どんな色のアクセサリーでも乗せられる。

 バッテリーに、余力があって、なんでも来い、と構えているから、縛られた反動で、むちゃをする必要がない。

 本体が、ホワイトだったら、飾りは、ブラックだよね。

 薄型だったら、むき出しだよね。

 そんなふうに、見た目や使用法に制限しかないminiシリーズでは、どうしても、書き続けられなかったのも、むべなるかな。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 クローゼットに眠る、無印の第五世代のiPadと、Intel搭載のMacBook Airは、もう二度と、再設定はしない。

 というわけで、カメラレオン、無事に、全員集合と相成りました。

 M1チップのMacBook Pro、スペースグレイ、256GB。

 無印の第九世代のiPad、スペースグレイ、64GB。

 第六世代のiPod touch、ピンク、32GB。

 iPhone7、ゴールド、32GB。

 iPhone12 mini、ホワイト、128GB。

 iPhone14 Pro、ディープパープル、256GB。

 …線対称ですね。

 このバランスを、今後とも、できる限り、踏襲します。それでは、また。

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