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千文小説 その1021:光影

 こんにちは、上村元です。よろしくお願いします。

 無印の第九世代のiPadに、ケースを買ってきました。

 背面が、ガラス、蓋が、黒。

 縁取りが、ゴムで、完全に、機体を覆う。

 …思ったより、背面の映り込みが、きついな。

 何か、挟まないと、気になって仕方ない。

 ごそごそ。

 がさがさ。

 ふんふん。

 すんすん。

 こらこら。

 ぬんぎー。

 ほどよい飾りを探す手元を、いたずらな愛猫が、しきりに、嗅いできます。

 たしなめると、ブチ切れるので、仕方ない。

 ふわっ。

 むふっ。

 にーごろ。

 よしよし。

 秘技、バスタオル掛け、を繰り出して、撫でてあやしつつ。

 これぞ、の一枚を見つけて、ケースと本体の間に、配置します。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 …素晴らしい。

 爆速で寝落ちした愛猫を、西武ライオンズのバスタオルでくるんで、抱き直し。

 新生相成った、無印の第九世代に、感嘆のうなりを上げます。

 贔屓のバンドのアルバムに付いてきた、特装版の歌詞カード。

 海の泡をモチーフにした曲で、全体に、濃いブルーが、グラデーションで、黒くなっていく。

 底の方に、クジラが二頭、仲良くたわむれていて、彼らの吐く泡が、歌詞となり、白文字で、立ちのぼるようなデザイン。

 黒枠のケースに、スペースグレイの本体が、水底感を強調して、まるで、絵画。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 …しかし、本題は、ここから。

 ここまで見事に、これ以上はないほど、仕上がっていても。

 さあ、使うぞ。

 これからは、君の時代だ。

 とは、全くならないのは、どうしたことか。

 それどころか、第九世代、iPad double、愛称は、iPad deux。

 だったはずが、いつの間にか、iPad ombre。

 影としてのiPad、になっている。

 …まあ、どう見ても、影、だよね。

 無印の第五世代、ゴールド、に寄り添う、黒い金属塊。

 第五世代は、ホワイトベゼル、第九世代は、ブラックベゼル。

 いずれも、ホームボタンとイヤホンジャック搭載。

 同じメーカーの、同じ型の蓋付きケースを装着し、歌詞カードのクジラたちと同様、仲良く並んでいる。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 iPhoneは、三台あります。

 iPhone7と、iPhone12 miniが、無印シリーズ同士で、永遠の廃版。

 彼らをまとめる後継機として、iPhone14 Proが、やはり、永遠の現役として、君臨している。

 この構図を、忠実に繰り返すなら。

 無印の第五世代と、無印の第九世代に加えて、iPad Proを、追加しなければならない。

 …iPadのProシリーズ、どうしても、買う気がしないんだよな。

 MacBook Proがいるのに。

 タッチペンを使わないのに。

 既に七台ものデバイスと暮らしているのに。

 世界最高峰のタブレット端末を、あえて、導入する意味が、まるでない。

 かと言って、じゃあ、この二台をもって、iPadは、おしまい。

 iPod touchと同じく、廃版固定で、ガラパゴス決定ね。

 割り切ってしまうのも、なんだか、おかしい。

 iPadたちは、生きている。

 光も、影も、それぞれに、静かに、輝いて。

 どちらかを取ることは、できない。

 ならば。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 iPodは、永久一台。

 MacBookは、動くものは、一台。

 iPhoneは、SIMカード入りは、一台。

 iPadだけ、常に、二台。

 それぞれに、壊れ果てるまで使って、それぞれに、後継機に引き継ぐ。

 ぱっと華やかな、色付きと。

 沈み込むような、黒色系と。

 光と影の系統が、両方、続いていくように。

 ただし、三台以上は、置かない。

 文字通り、うんともすんとも言わなくなるまで、現役で。

 シリーズは?

 容量は?

 …できれば、無印の最小が、いいんだけれど。

 現行の無印に、黒色系はないが、今すぐ買うわけではないので、世代が下るうち、黒っぽいものも、出てくるかもしれない。

 決めよう。

 シリーズは、無印。

 容量は、最小。

 明るいのと暗いのが、同時に二台、稼働していること。

 OSの新旧は、問わない。

 使用に耐えなくなるまで、粘る。

 これが、炬燵の上の電子機器集団、カメラレオンにおける、iPadの条件。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 MacBook、iPad、iPodは、バッテリーの寿命まで使い尽くす。

 iPhoneは、OSのアップグレード終了に合わせて、Proシリーズを買い継ぎ、SIMカードを抜いた機体たちは、リセットせず、永久続投。

 どうでしょう、みなさん。

 それで、よろしいか?

 電子機器は、人間の言語では、答えを返しません。

 それでも、全台、静かに、うなずいている感じ。

 しばらく、様子を見たいです。それでは、また。

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