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千文小説 その945:足搔

 こんにちは、上村元です。よろしくお願いします。

 じゃあ、無印の第九世代のiPad、使う気は、ないんだね?

 …そうだね。

 カバーを付けても、キーボードをはめても、むき出しでも、収まらない。

 残念だけれど、合わなかったらしい。

 申し訳ございませんでした。

 これにて、使用は、停止させていただきます。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 膝の上、大爆睡の愛猫越しに、炬燵の上、静かに横たわる、スペースグレイのタブレットに、深々と、頭を下げて。

 姿勢を正して、いざ、次の段階を、考えます。

 リセットは、するの?

 …できれば、したくないな。

 でも、使わないことがわかってなお、現役で、設定済みで、というのも、矛盾してるよね?

 それとも、とりあえず、使わない、であって、電源を切って、休ませておくつもりなの?

 …それも、煮え切らないよな。

 別れないまま、引きずろうとする、駄目男の典型。

 使わない=リセット&処分。

 基本ラインは、守らないと。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 …できる気がしない。

 リセットして、またすぐ、再設定しそう。

 見えるようだよ。

 自分との付き合い、長いもの。

 ここは、使わない、で、止めておくこと。

 触らない、と言い換えてもいい。

 使わない、と言いながら、リセットするとなると、どうしても、操作してしまう。

 それは、もう、使っているのと、同じこと。

 使わないなら、触らない。

 要するに、放置。

 炬燵から下ろして、ぼんやり、眺めていよう。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 しょっちゅう寝返りを打っては、僕の身体のあちこちに、パンチやキックを繰り出してくる、アグレッシブな愛猫を抱えて、しばし、観想。

 床の上、箱に乗せたiPadを見つめて、物思いにふけります。

 どう見ても、第九世代の方が、iPhoneやMacBookに、似合うのです。

 色合いも、そっくりだし、OSも、共通。

 新生Apple三兄弟として、いつでも、出発OK。

 …のはず、なのだが。

 どう見ても、無印の第五世代、ゴールドの方が、スペースグレイのMacBook Proに、しっくりなじむ。

 第九世代は、スペースグレイとは言え、ほぼブラックと呼んでいい、濃灰。

 対して、MacBookは、薄灰で、アンティーク調の金茶と、親和性が高い。

 …ような気がする。

 あまりにも、あれこれ、試しすぎて、もはや、事実として、そうなのか、自分が思い込んでいるだけなのか、境目が、溶けつつある。

 第五世代を贔屓しているうちは、素敵に見えるが、第九世代に乗り替えようと意気込んでいる時は、途端にみすぼらしくなるのを、何度も、経験済み。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 …どっちでも、いいってことなんだろうな。

 iPadが、ゴールドだろうが、スペースグレイだろうが、大勢に、影響はない。

 となると、色は、あくまでも、口実。

 これまで、色が合わなくて、リセットしたと思っていた、ホワイトのiPhone12 miniや、無印の第九世代のシルバーも。

 根本的な決裂は、他に、原因がある。

 iPhone miniは、画面のインチとデザイン。

 無印の第九世代は、…なんだろう。

 シルバーでも、スペースグレイでも、行き詰まる、不適合感の大元は。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 重みだ。

 第九世代は、第五世代に比べて、ほんのわずか、重量が増えた。

 そのぶん、インチも上がり、より広い画面で、ロングライフバッテリーを楽しめるようになったのだが。

 第五世代と、まるっきり同じに使おうとすると、…ん?

 なんか、重いな。

 むき出しで、両手で持って、操作するうち、その、ほんのわずかな重量の違いが、こたえてくる。

 炬燵に置いて、触りたいね。

 しかし、天板に直置きでは、首が厳しい。

 スタンドが、欲しくなり、百均ショップで、それなりのものをあつらえたが、どうにも、はまらず。

 仕方なく、フリップカバーを装着し、折り畳んで、スタンド代わりにするも、やはり、角度が合わない。

 最終手段として、キーボード付きカバーを装着し、立てたり、持ったりして、調整するも、さらに、重過ぎる。

 その過程で、生来の面倒くさがりが発動し、もういい、となって、使わない、に至る。

 なるほどな…。

 そりゃ、めんどくさいよ。

 ごめんね。

 合わない型を、二台も、買ったりして。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 iPhoneのProシリーズも、かなり、重いです。

 しかし、全くもめることなく、毎日、手に吸い付いている。

 気の毒な、無印の第九世代。

 重くても、小さければ、良かったのにね。

 極力、持ち上げずに、使う方法はないか。

 まだまだ、あがき続けます。それでは、また。

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