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千文小説 その1032:泥沼

 こんにちは、上村元です。よろしくお願いします。

 スペースグレイとシルバー以外の、二眼か、一眼。

 炬燵の上の電子機器集団、カメラレオンにおける、iPadの新規参入条件は、今のところ、それだけ。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 …ほぼ無限、と言っていいくらい、選択肢がある。

 今代の、無印の第五世代、ゴールド、も合格だし、現行最新モデルたちも、ほとんどは、視野に入る。

 今代のOSのアップグレードが終了して、そろそろ一年。

 ちょうどいい、替え時ではある。

 のに。

 選べないよ…。

 どれでもいいんじゃない、となってしまって、これぞ、という機体がない。

 もしくは、僕の中に、iPadとは、こういうものである、というビジョンがない。

 どういうものなの?

 君にとって、iPadとは、何?

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 膝の上、爆睡の愛猫を、西武ライオンズのバスタオルでくるんで、抱き直し。

 正面の壁、ドーベルマンの肖像と、相談するように向き合います。

 MacBookは、スペースグレイ。

 iPhoneは、三眼か、一眼。

 iPadは、…どうなんだろう。

 〜ではない、という否定形で、存在を定義することは、果たして、妥当なのか。

 かと言って、やはり、iPadの本義は、どっちつかず。

 パソコンでもあるし、スマホにも近い。

 タブレット端末は、変幻自在が売りなので、変に固定して、魅力を削いではいけない。

 さりとて、僕も、人間。

 どうしても、使いやすい形態とか用途とか、偏りが生じてしまって、完全ニュートラルには、とても及ばない。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 無印の第五世代は、電器店で購入した専用ケースを装着して、横向きで、スタンドを立てて、操作している。

 電子書籍の閲覧と、ミュージック・ビデオの鑑賞という、オフライン作業がメイン。

 執筆には、使わない。

 以上が、おそらく、次代にも踏襲されるであろう、基本形態。

 ブックアプリの、今すぐ読む、を、複数のデバイス間で同期したい場合、画面のサイズが、スタンダードであることが、必須とわかりました。

 iPadでしか、電子書籍は読まない、とかであれば、miniシリーズでも構わないのですが。

 僕のメイン機器は、iPhone14 Pro。

 あらゆる作業を一手に引き受ける、カメラレオンの心臓部。

 14 Proの画面サイズと、ほぼ同等か、等倍の機体でないと、適切な同期は、難しい。

 じゃあ、iPadの参入条件に、miniシリーズ以外、も付け加えないとね。

 また、否定形?

 …なんだか、iPadが、気の毒に。

 これぞ、iPad。

 断定できる特徴とは、いったい、どこに?

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 はっきり言って、iPadのアウトカメラは、まるで使いません。

 唯一、新しい機体を設定する際の、クイックスタートで、出て来るくらい。

 そうしょっちゅう、新規設定をしていては、身がもたない。

 なので、iPadのカメラは使わない、と言い切ってしまって、支障はない。

 使わないなら、一眼で、いいのでは?

 わざわざ、お高い二眼モデルをあつらえる必要は、あるの?

 …ですよね。

 やり過ぎ、という単語が、脳内をめぐります。

 しかも、二眼、すなわち、Proシリーズを選んだ場合、色は、スペースブラック一択。

 真っ黒ボディーに、きらりと、ダブルレンズ。

 世界最高峰と謳われるタブレット端末で、することと言ったら。

 …読書かよ。

 せめて、絵、描こうよ。

 無理無理。

 一本の線も、引けません。

 なぜなら、Apple Pencilを導入するつもりは、さらさらないから。

 どこからどう見ても、へなちょこ物書きは、iPadのProシリーズのユーザーに、全くふさわしくない。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 タッチペンを使わないのであれば、iPadの高性能チップ搭載モデルは、身の丈を超えている。

 だったら、無印だね。

 シルバー以外だと、三色。

 ブルー、レッド、イエロー。

 だいぶ、しぼられたじゃない。

 どれにする?

 今のところ、Appleのオンラインストアに、在庫はあるみたいよ。

 ちなみに、我が愛猫は、大の黄色好き。

 目の覚めるような、原色イエローをお見せした途端。

 むふっ。

 ぬっきゃー。

 すりすり。

 ぐりぐり。

 俺のものだ、と主張してはばからず、最悪、僕は、使わせていただけない恐れがある。

 ちなみに、我がiPodは、エレクトリックピンク。

 あえて、似た赤をぶつけるか、まるで違う青にするか。

 …なんだか、どちらも、ケンカになりそう。

 駄目じゃん。

 色付き、入れられないじゃん。

 自然と、視線が、クローゼットへ向かいます。

 無印の第九世代、スペースグレイ&ブラックケース。

 …泥沼の匂いが、漂ってきました。それでは、また。

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