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千文小説 その958:非潔

 こんにちは、上村元です。よろしくお願いします。

 真実は、むごいものだと、常々思っているけれど。

 このたび、改めて、しみじみと、身に沁みました。

 僕は、そもそも、iPadを、必要としていなかった。

 愛も興味も、さほどなく、みんなが便利って言ってるから、きっと、便利なんだろう。

 それくらいの感じで、初代の、無印の第五世代を、購入し。

 あんまりなじめないまま、八年が過ぎ、そろそろ、買い替えるか。

 …要るかな。

 要らないかも。

 とりあえず、一番安いの、買っとくか。

 無印の第九世代、シルバーとスペースグレイを購入し、やっぱり、あんまり、ぴんと来ない。

 シルバーは、知人にお譲りし、スペースグレイは、クローゼットに。

 結局、第五世代、ゴールドの32GBを、しいて言えば、これだよね。

 さんざん、リセット&再設定を繰り返した挙句、とりあえず、置いてある。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 床の上、古びた洗面器に詰まって爆睡の愛猫に、時折、西武ライオンズのバスタオルを、掛け直して差し上げつつ。

 炬燵の上、五台の電子機器を眺めて、ため息をつきます。

 真実は、変更不能。

 僕は、iPadを、愛していない。

 しかし、だからと言って、捨ててしまっても、構わないのか?

 これまでのすったもんだを、なかったことにして、ああ、せいせいした。

 第五世代も、第九世代も、クローゼットに押し込めて、iPhoneやMacBookやiPodと、愉快に、爽快に、暮らしていけばいいのか?

 …違うでしょう。

 それでは、単なる、わがままなピーターパン。

 四十歳を超えたのだもの、もっと立派な、大人でありたい。

 真実に、忠実に、かつ、二台のiPadに敬意を表した解決に導くには、いったい、どうすれば?

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 まず、新世代のiPadは、買わない。

 これ以上、iPadにも、自分にも、無駄な負担をかけてはいけない。

 そして、手持ちの二台も、手放さない。

 お金に換えるなんて、もってのほか、リサイクルにも、決して出さない。

 そのうえで、それぞれに、個別に対応を。

 無印シリーズ、第五世代、ゴールド、32GB。

 僕にとって、初めてのApple製品。

 …これは、もう、覚悟を決めて、生涯、大事にせざるを得ない。

 炬燵の上の電子機器集団、カメラレオンの成立条件は、第一に、MacBookが、Proシリーズであること。

 これに加えて、第二に、無印の第五世代が、並んでいること。

 電源が入ろうと入るまいと、頻繁に使用していようと全くの無使用だろうと。

 MacBook Proと、iPad5が、常に、同時に、内裏雛のごとく、鎮座している。

 カメラレオンの中軸は、それだ。

 iPadは、永劫不変、MacBookは、Proで遷移。

 二つを守れるなら、あとは、どんなデバイスが、何台いても、自由。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 現在、天板の上には、MacBookとiPad以外に、三台。

 第六世代のiPod touch、iPhone7、iPhone14 Pro。

 彼らは、数々の試練を乗り越えて、寿命までの続投が、決定している。

 残るは、クローゼットの、三台。

 Intel搭載のMacBook Air、無印の第九世代のiPad、iPhone12 mini。

 MacBookは、Pro以外にないので、MacBook Airの再設定は、不可。

 Windowsのデスクトップとともに、クローゼットの支配者として、ミイラの眠りに。

 リベンジのチャンスがあるとしたら、iPad9と、iPhone12 miniだけ。

 無印シリーズ、第九世代、スペースグレイ、64GB。

 無印シリーズ、ミニサイズ、ホワイト、128GB。

 MacBook ProとiPad5の統治する王国に、果たして、再参入は、できるのか?

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 …無印の第九世代は、さすがに、もう、いいかな。

 壊れ果てようがなんだろうが、第五世代が、ずっといるのに、わざわざ、そっくりな見た目の別物を、併台する必要はない。

 クローゼットの中、MacBook Airに重なって、風化を待つのが、最適解。

 そうか…。

 iPad問題、ついに、片付いたんだな。

 おつかれさまでした。

 ありがとう。

 iPad9よ、どうぞ、安らかに。

 …結局は、iPhone12 miniに、論点の全てが、集約されてしまった。

 32GBでも、256GBでもない。

 金色でも、黒色系でもない。

 スタンダードサイズでもない、カバーもケースも画面保護シートもない。

 まさに、異端。

 排除します?

 受け入れる?

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 …とりあえず、再設定するか。

 ちっとも潔くない人生を、どこまでも、粘ります。それでは、また。

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