千文小説 その952:重厚
こんにちは、上村元です。よろしくお願いします。
炬燵の上、五台の現役愛機たちは、皆、元気。
クローゼットの中、二台の引退愛機たちは、いずれも、平穏。
ぴーぷす、ぴーぷす。
ぽわ。ぽわ。
膝の上、爆睡の愛猫と、胸の奥、深海の底、超然の愛深海生物も、それぞれに、快調。
もちろん、おかげさまで、僕も、安定。
さあ、残るは、あと一台。
iPhone12 mini。
…電子機器を購入する際、これ以上に失敗した機体は、他にない。
色も、容量も、サイズも、買値も、買った店すら、間違えた。
カバー、ケース、画面保護シート、ステッカー、アクセサリー類も、死屍累々。
購入後、二年保たずに、リセットし、しかし、あきらめきれずに、再設定し、やはり、駄目で。
しばらく、箱に入って、クローゼットで、眠っていました。
ぴーぷす、ぴーぷす。
ぽわ。ぽわ。
もう二度と、使わない。
折を見て、リサイクル、もしくは、回線会社の実店舗に持ち込もう。
決めてはいたのですが、現役五台が、あまりにも、ぴたっと決まったことにより。
…もしかして、miniも、いける?
SIMカードは、決して移さない、その条件さえ守れば、もう一度、カメラレオンに加わることは、可能なのでは?
疑念がぬぐえず、こうして、白い背面と、改めて、相まみえることになりました。
デジタルデバイスの基本のキ、まずは、充電。
減りが早いぶん、満タンになるのも高速な、まだまだ余力あるバッテリーの状態を確認し、いったん、電源オフ。
いざ、再設定の前に、どの方向で、復元するか。
真剣に、熟考です。
ぴーぷす、ぴーぷす。
ぽわ。ぽわ。
12 miniは、今代の14 Proと、同じOSが使える。
完全に、Proの設定とデータを引き継いで、予備機として再誕するのが、最も穏当。
…というのは、既に、試したんだよな。
何の意味もなかった。
むなしさが、募って終わった。
iPhone Proからのクイックスタート、というところまでは、踏襲するとして。
設定やデータの移行をストップし、完全に、まっさらな機体として、リスタートする。
LINEもなし、メールも開かず、電話もできない。
そんなiPhoneを、果たして、iPhoneと呼べる?
ぴーぷす、ぴーぷす。
ぽわ。ぽわ。
iPhoneの、iPhoneたるゆえんは、SIMカードです。
世界に唯一の電話番号を搭載した、個人証明という観点においてマックスの権能を発揮する薄型チップの存在こそ、iPhoneの心臓部。
初めから、SIMなし設定って、そもそも、できるの?
できなくはない。
新品を初めて設定する、以外なら、意外と、スムーズ。
12 miniは、れっきとした、中古品。
その点は、大丈夫。
大丈夫だけれど、それで?
電話もメールもLINEもなくて、iPhoneで、何をしようと言うの?
…そこです。
miniシリーズは、12と13をもって、廃版になってしまった。
iPodと同じく、後継モデルは、買いたくても、買えない。
その意味で、12 miniは、iPodのデータを引き継いで、iPodと似た用途で、活躍する線が濃厚。
だが、iPodとiPhoneは、違う。
何をどうごまかそうとも、12 miniは、iPhone。
しかも、肝心のSIMカードを入れずに再設定されようとしている、いわば、月の裏側。
King Gnuに対するmillennium parade/MILLENNIUM PARADEのような、力強い鬼に、なれるのか?
…なるしかない。
ならば、そのためには、どのように、再設定したらいい?
iPhone7は、名誉職。
12 miniと14 Proの、一騎打ちになる。
両者、まごうかたなきiPhoneである、という前提のもと。
Proにあって、miniにないものとは、何か?
運命の分岐点、梃子の原理の心棒は、どこ?
ぴーぷす、ぴーぷす。
ぽわ。ぽわ。
ミレパとKing Gnuの違いは、井口さんが、いるかいないか。
歌において、井口さんは、天才です。
天才を、人智によって、使い回すわけにはいかない。
常田さんは、その重みを、誰よりもよく知り抜いていて、だからこそ、井口さんがいなくなっても、音楽家として生きていけるように、ミレパを作った。
僕のiPhoneにおける井口さんとは、何か。
12 miniと14 Pro、裏と表を明確に分けたもの、それは。
ぴーぷす、ぴーぷす。
ぽわ。ぽわ。
モンスターマシーン。
ジョジョで言うところの、スタンドに当たる、特殊技能。
小さくては、軽くては、僕には、駄目なのです。
背負うべき重みのないところで、いかに勝負できるか。
miniとともに、チャレンジです。それでは、また。
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