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千文小説 その892:再計測

 こんにちは、上村元です。よろしくお願いします。

 iPadは、僕に、違和感をもたらします。

 それは、確かです。

 問題は、その違和感が、何に由来するものなのか、未だに、つかめないこと。

 かなり長い間、考えてはいる。

 おおよそ、この辺りであろう、というポイントも、いくつかある。

 それでも。

 …なんなんだろう、この、どうにも、落ち着かない感じ。

 言語で説明ができない状況は、物書きにとって、大変、ストレスフル。

 いっそ、iPad、やめてみるか。

 …から始まって、しまい込んでみたり、買い替えてみたり、リセットしたり、ケースやカバーやスタンドを付けたり。

 ありとあらゆる手段を試して、それでも、解消されない。

 にちにちにちにち。にちにちにちにち。

 膝の上、一心に、おやつのするめをかじる愛猫の、大きなおしりを抱き直し。

 姿勢を正して、正面の壁、ドーベルマンの肖像と、向き合います。

 おそらく、いい線までは、行っている。

 そこから先の、詰めが甘い。

 そこって、どこ?

 例えば、iPadの使用を停止する、と決めたとします。

 徹底するなら、リセットし、箱にしまい、売却等、処分までして、完了です。

 それを、箱にしまう、で、止めてしまう。

 筐体が残っているので、いずれ、もやもやが、再発し、再設定に至る。

 逆に、iPadを使い続ける、と決めたなら。

 キーボードを添えて、Apple Pencilを買って、がっつりフル装備で、立ち向かう。

 それを、キーボードだけで収めてしまうから、もやもやまで、継続され、いつまで経っても、何も変わらない。

 にちにちにちにち。にちにちにちにち。

 今代のiPadは、無印シリーズ、第九世代、スペースグレイ。

 ブラックの、Smart Keyboardを付けて、大変、シックな仕上がり。

 残念ながら、廃版です。

 しかし、本体を、同色のAirかProにして、トラックパッドのない、Smart Keyboard Folioを添えれば、限りなく、見た目は近づけられる。

 つまり、買い継ぎは、充分に、可能。

 盤石じゃない。

 何が、問題なの?

 …ですよね。

 iPadに、罪はない。

 この違和感は、ひとえに、僕のせい。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 満腹で、寝落ちした愛猫を、ひよこの毛布でくるんで。

 食べ残しのするめを口に、天井を仰ぎます。

 iPadが、こんなにも、活躍するとは思わなかった。

 …大きな声では言えませんが、それが、本音。

 無印の、最もリーズナブルなモデルに決めた時。

 どのみち、デッドエンドなのだから、そこそこ、使えればいいか。

 半ばあきらめの境地で、設定し、なんとなく、触っていて。

 …いけるじゃん。

 すごいじゃん。

 日に日に、使い心地の良さに、驚くばかり。

 もちろん、あれこれ、無印ならではの粗さ、のようなものは感じられる。

 が、僕にとっては、大変、満足。

 書けるなら、それでいい。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 他に趣味もない物書きとしては、執筆に使える道具であれば、なんでも大歓迎。

 今代のiPad、見事に、条件をクリアしました。

 書けます。

 大丈夫。

 …と、いうことは。

 MacBook Proにこだわったのは、何だったの?

 最もお手頃シリーズの、簡易型ノートパソコンで書けるなら、わざわざ、大枚をはたいて、最高峰モデルを手に入れる意味、なくない?

 …ここです。

 おそらく、もやもやの原因は、MacBookのProシリーズへの思い入れが、肩透かしを食らったこと。

 今代のMacBookは、いちおう、Proではあるが、13インチ。

 実質、Airの変形版で、お値段も、そんなには。

 それが、廃版になり、次代を、どうしよう。

 同じスペックの、Airに戻すか、張り込んで、Proを続けるか。

 そう、元々、僕のMacBookは、Airだった。

 Intel搭載、アメリカンキーボード、電池保ちが短過ぎる、の三拍子で、早々にお蔵入りとなってしまったものの。

 noteへの初投稿を行なった、記念すべき機体。

 ばりばりに、書きましたとも。

 じゃあ、Airで、いいんじゃない?

 無印のiPadで書けるなら、MacBook Pro、無理矢理買うこと、ないのでは?

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 …執筆に、機械の性能は、関係ない。

 ハイスペックデバイスを奮発したところで、僕の文章が上達するなんてこと、あり得ない。

 凡才は、何を使っても、凡才。

 ならば、自分の収入に見合ったレベルで、せめて、好きな色と形のものを、選んで。

 選ばせていただいて、ありがたく、大事に使う。

 今一度、己の背丈を測り直す必要があるようです。それでは、また。

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