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千文小説 その977:深淵

 こんにちは、上村元です。よろしくお願いします。

 無印の第九世代のiPadは、キーボード付きカバーとフリップケースとともに、クローゼットに。

 フルバージョンのアクセサリーを備えた一眼タイプの代表として、永遠に、おやすみください。

 二眼タイプとミニサイズは、iPhone12 miniによって、永久封印されているので、iPad ProとiPad miniは、買えない。

 また、iPad Airは、Intel搭載のMacBook Airによって、永続禁止されているので、やはり、買えない。

 ということは、今後、iPadを購入するとしたら。

 無印シリーズ、むき出し、32GB/256GB。

 …32GBは、もう、ないな。

 無印の256GBを、単品で、お願いします。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ただし、新規購入は、あくまでも、今代と、うまく付き合えたらの話。

 無印の第五世代、ゴールド、32GB。

 使用開始後、八年目を迎えており、OSのアップグレードも、既に終了している。

 今代が、最後になるのか、無印の新世代の256GBに、バトンタッチするのか。

 時間をかけて、慎重に、見極めないと。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 膝の上、大の字で爆睡の愛猫に、西武ライオンズのバスタオルを、掛け直して差し上げつつ。

 炬燵の上、五台の電子機器集団、カメラレオンを見やって、真剣に、考えます。

 八年で、九台のApple製品と付き合ってみて、わかったことが、二つ。

 その一、性能は、価格に比例する。

 …身も蓋もないが、やはり、真実。

 少なくとも、Apple製品においては、市場が正常に機能しているということで、ありがたいことではあります。

 お金を出せば、その分のリターンは、確実に、ある。

 しかし。

 その二、安物だからと言って、あなどってはいけない。

 百均ショップの品にも当てはまりますが、がらくたすれすれの大量生産の中から(失礼)、時折、とんでもない怪物が、飛び出すことがある。

 下手な鉄砲も、どころではなく、鶴と亀も真っ青な、いつからいたの?

 いつまでいるの?

 丈夫で長持ち、を実体化した、あり得ないほどの長寿に加えて、日々、それがないと生きていけないレベルで役に立つ、至高の逸品。

 もちろん、安いので、見た目は、地味です。

 なにげなく、使っていくうちに、…おかしいな。

 これ、百円だったよね?

 どうして、よく似た数千円のより、はるかに、使いやすいんだ?

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 今代のiPad、無印の第五世代は、当時の最低価格の、四万円弱。

 新品で、定価で、買いました。

 八年目に入った現在も、多少、手ずれ跡はありますが、ボディーは、つやつや。

 インターネットで動画を観る時だけ、かなり、温まりますが、バッテリーも、いきいき。

 …おかしいな。

 なんで、つい数ヶ月前、現行の最低価格の、五万円弱で買った、無印の第九世代より、電池の減りが、遅いんだ?

 八年で、最低価格のレベルが下がった、という説もありますが、ともかく。

 第五世代、恐ろしい子。

 これは、もう、うかつには、手放せない。

 長寿な百円と同じく、大事に、最後まで、面倒を見るしかない。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 どうしても、新しい機体が欲しい、かつ、絶対に失敗したくないなら、iPad Proを。

 そうでなければ、このまま、iPad5を。

 上述の、Apple製品についてわかった二つのことを足し合わせると、結論は、そうなる。

 たとえ、今、無印の新品を買ったところで、玉石混淆の、玉、に当たる保証はない。

 第九世代の購入時、それを狙っていたふしもあったのだが、見事に、外した。

 なんで?

 同じように、八年とか、使ってみないと、判断できないのでは?

 違うのです。

 本物は、初めから、本物。

 あくまでも、使っているうちに、玉であると気づいた、のであって、使っているうちに、石が玉になった、のではない。

 残念ながら、僕のところに来てくれた第九世代は、価格相応。

 お子さんとか、学生さんとか、職場専用とか、iPadビギナー向けの、カジュアル路線。

 とても、iPhone ProとMacBook Proに、並び立つことはできない。

 じゃあ、無印の第五世代なら、並び立てるの?

 …立てるんですね。

 恐ろしいゆえんは、まさに、そこ。

 MacBookとiPhoneの最高峰に囲まれて、堂々と、平然と、あらゆる作業ができる。

 なんてこった…。

 これまで、MacBook Proを、カメラレオンの、真の黒幕だと思っていたのに。

 モンスターは、君だったのか、iPad5。

 買い替えるなら、もう、Proしかない。

 つまり、買い替えられない。

 …日常にひそむ深淵に、くれぐれも、お気をつけください。それでは、また。

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