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千文小説 その972:勇留

 こんにちは、上村元です。よろしくお願いします。

 空き時間は、MacBookと過ごし、三台の廃版たちは、なるべく使わない。

 そう決めて、その通りに、実行したところ。

 iPhone14 Proは、通常稼働。

 iPhone7も、iPodも、充電チェック兼メンテナンスで、やはり、通常稼働。

 MacBook Proに、過負荷が掛かった気配はなく、どこまでも、通常稼働。

 変わらなくない?

 決意と覚悟の、意義はあったの?

 ありました。

 無印の第五世代のiPadが、完全に、出て来なくなった。

 電源も入れない。

 アプリの点検もしない。

 もちろん、操作もしない。

 しーんと、炬燵に伏しているだけで、なんとも言えない、廃墟感。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 …そうか。

 iPad5は、とっくに、終わっていたんだな。

 どの時点で?

 綿密に、脳内をさかのぼった結果、なんと。

 iPhone7が来た時点、という結論に達しました。

 …マジですか。

 それって、もう、五年も前。

 そこから、今までは、何だったの?

 無理矢理、頑張っていたんだろうな…。

 終わったことに、気づかなかった。

 もしくは、気づいてはいたけれど、認めたくなくて、むしろ、稼働を増やす方向に走った。

 …どっちも、という感じがする。

 iPhone7こそ、炬燵の上の電子機器集団、カメラレオンにおける、長老です。

 一連の騒動で、その位置付けが、くっきりと、明確になった。

 iPhone7を、寿命が尽きるまで、大事にすること。

 尽きた後も、天板から下ろさず、日々、眺めては、しみじみと、後生を弔うこと。

 それさえ守るなら、あとは、どんな機体が、どのように出入りしても、自由。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 残念ながら、無印の第五世代のiPadは、その域に、達せなかった。

 ただ古いだけ、になってしまい、これ以上、何を、どうすることもできない。

 後継機も、迎えてはみたものの、三ヶ月で、クローゼット入り。

 ほな、どないせぇちゅうねん。

 どないもこないもない。

 ただ、置いておくこと。

 それが、無印の第五世代のiPadに対する、最適解。

 iPodは、買い替えたくても、買うことができない。

 iPhoneは、Proシリーズ、スタンダードサイズ、256GBを、OSのアップグレード終了に合わせて、反復継続する。

 MacBookは、Proシリーズのうち、手に入る価格のものを選んで、壊れるまで、使う。

 iPadは?

 買い替えられるけれど、買い替えない。

 クローゼットに眠る、無印の第九世代を起こさないのはもちろん、第五世代も、リセットも、再設定もしない。

 過ぎ去った時間の形見として、時々、無理のない範囲で、動かす。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 床の上、古びた洗面器に詰まって爆睡の愛猫に、何度掛け直してもはだけてしまう、西武ライオンズのバスタオルを、性懲りもなく、掛け直して差し上げつつ。

 炬燵の上、静かに横たわる、ゴールドのタブレットを見やります。

 使用開始後、八年目に入ったにしては、iPad5、驚異のバッテリー保ち。

 数日、放置しても、数%しか、減っていない。

 …これね、多分、あんまり使っていないからです。

 前述したように、iPhone7の登場により、二年足らずで、蜜月は終わっている。

 その後は、インターネットの動画再生に、かなり費やしたけれど、それも、毎日八時間、とかではなく、通常のゲーマーの方の、半分以下。

 それにも疲れて、いったん、リセットして、クローゼットで休んでいたので、おそらく、がんがんにフル稼働させた場合の、二〜三年くらいの消耗率。

 さすがに、もはや、ネット動画の長時間再生は難しいのではないか、と危惧されるくらいには、使用中、バッテリーがほんのり温まる現象が発生しており、新品とはいかない。

 それでも、オフラインでのミュージック・ビデオの鑑賞、電子書籍の読書等には充分なくらい、機体としては、現役。

 …丈夫で長持ち、目指そうか。

 毎日は使わない、かつ、オンラインでの作業は、最低限にとどめる。

 制限を設けて、その中で回すなら、無印の第五世代のiPadは、同年代に製造されたiPodやiPhone7を、はるかに上回る馬力を発揮し得る。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 iPhone Proは、ごく普通に、使えばいい。

 MacBook Proには、もう少し、踏み込んだ使用を要求してもいい。

 iPadは、ひたすら、行き過ぎない。

 買い替えたいな、と思っても、踏みとどまる。

 もっと使いたいな、と思っても、持ちこたえる。

 留まる勇気、というものを、iPad5を通して、初めて知りました。

 まだまだ長そうな機械生を、つつがなく、全うしていただけるよう、尽力いたします。それでは、また。

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