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千文小説 その967:仕分け

 こんにちは、上村元です。よろしくお願いします。

 後味が悪い、というのは、なかなか、厳しい。

 その時は、苦くても、すっと消えてしまえば、重くはない。

 飲食店のPR雑誌社に勤めていた関係で、様々な、美味しい食事をいただきましたが。

 後味がよろしくないものも、もちろんあって、常にそうである店は、確実に、つぶれました。

 お客が、二度と行かなくなるからです。

 後味が駄目な料理よりは、激マズ飯の方がまだましというくらい、後味は、重要。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 雑誌社が倒産して、五年になり、すっかり外食から遠ざかっていたというのに、久しぶりに、その感覚を思い出したのは。

 二台のiPadと、代わる代わる、がっつり過ごしたからです。

 iPhoneとMacBookは、僕にとって、基本の食事。

 白飯と味噌汁のようなもので、毎日毎食摂取できるし、食べ過ぎないよう、コントロールも可能。

 iPadは、どうも、そうではない。

 たまの外食、しかも、あまり、相性が良くない範疇。

 使用後に、目や肩が疲れるのは、デジタルデバイスとの付き合いにおける筆頭副作用なので、仕方ないとしても。

 …夢見が、悪いのです。

 なんとも言えない、薄暗い場所で、さほど親しくない知り合いと、仲の良いふりをしなくてはならない、みたいな、命には関わらない危機のシーンが、繰り返し、再生される。

 すぐに何が、というわけではないが、放置すれば、おそらく、書く物の質を落とす。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 論点は、ただ一つ。

 電子書籍です。

 書くことは、iPhoneとMacBookで、行なうようにしていたのですが、読むことは、どの機体でも、そう変わらないさ。

 たかをくくって、新旧二台のiPadで、時間も分量も、好きなだけ、許していたのが、まずかった。

 物書きにとって、読むと書くは、セット。

 片方は、かっちり、片方は、ゆるゆる、では、今後の仕事に差し障る。

 締めましょう。

 電子書籍も、iPhoneとMacBookで。

 と言っても、MacBookは一台だが、iPhoneは、複数台。

 どれでもいいの?

 …いや、良くない。

 とっくにOSのサポートが終わっている、iPodは、ブックアプリが、最新のバージョンに対応しておらず、大変、読みづらいため、ほぼ使用していない。

 同様に、サポートは続いているが、アップグレードが停止している、iPhone7も、読めなくはないものの、今すぐ読む、の同期ができず、やはり、ほぼ不使用。

 iPhoneは、iPhoneでも、ブックを読むには、SIMカードと現役のOSを搭載した、今代に限る。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 …と、いうことは。

 僕にとって、必要不可欠なのは、MacBookと、SIM入りiPhoneの、二台のみ。

 両者さえ、メンテナンスを怠らず、OSのアップグレード終了を目安に、次代に引き継ぐなら、それで、結構。

 iPad、買い替えた意味、ある?

 …ないじゃん。

 無駄じゃん。

 というのは、ありがたいことに、かつて、深刻に悩まされていた、YouTube中毒は、年を取って、かなり、抜けた。

 贔屓のバンドにもめぐり会えて、新作のミュージック・ビデオが公開されたとか、ライブ映像が解禁になったとか以外では、めっきり、はまり込むこともなくなった。

 執筆もしない、読書もしない、動画も観ない。

 では、iPadで、何を?

 すること、なくない?

 …しいて言えば、ミュージックアプリで、ビデオを再生するくらいか。

 使用開始後八年目、そろそろガタが来始めている、初代iPad、無印の第五世代にとっては、それくらいの軽さで、ちょうどいいかもしれないが。

 廃版決定とは言え、まだまだOSが現役の、無印の第九世代には、それでは、ちょっと、申し訳ない。

 ということで、現在、リセットして、箱に収めて、クローゼットでおやすみいただいているが。

 このままじゃ、あんまりだよな…。

 そもそも、なんで、iPadでは、電子書籍、読めないな、と思ったの?

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 iPhoneは、手に持って、負担はなく、MacBookは、置いて、使うもの。

 iPadは、中間くらいの重量で、置くに軽く、持つに重い。

 僕は、読むのが遅くて、長時間、持っていなくてはならず、かなり、苦しい。

 おまけに、なぜだか、今すぐ読む、の同期が、不安定。

 新旧どちらでも、できたりできなかったりなので、OSのせいではない。

 …これは、もう、iPadというデバイスそのものと、合わないということなんだろうな。

 膝の上、大爆睡の愛猫を抱えて、天井を仰ぎ。

 ため息をついて、しばし、瞑目。

 どうやら、本気の仕分けが、必要なようです。それでは、また。

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